とうとう16ギガ満杯になりました。
最後はどのCDを入れようか悩んだんですが、
トム・ウェイツを3枚選択したんです。
イーグルスが『オン・ザ・ボーダー』でカバーしている
「懐かしの55年」は、まるでシューベルツの曲のように
C-Em-F-G7の爽やか路線でしたが、
いつのまにやらトムは頽廃の世界に浸りきってしまいましたね。
『ミュール・バリエーション』のリリースが10年前。
その年、バークレーの大学を訪問したんです。
ある有名な女性考古学者を尋ねたところ、彼女は
修士課程の学生二人を夕食に連れてきた。
一人は日本人の女性でした。とても綺麗な方で、
すでに結婚されていたんですが、
医学を専攻するアメリカ人の旦那様は東海岸の
大学にいて、遠距離の真っ最中。
女性准教授は、ディナーのあと、その大学院生に
命じたのです。
「わたしは採点があるから、あなた、どこかにお連れして」
ひどく、緊張しました。
「ブルースのライブをやっているバーがあるので、行きませんか」
と誘われ、二人でライブを聴きました。
「あのリード(ギター)、どう思います?」と問われたんですが、
時差ぼけでものすごく眠かったこともあって、中途半端に
「まぁ、いいんじゃないですか」と答えると、彼女は
「そうかしら?」と不満を隠さない。
帰りの車のなかで、好きな音楽を訊かれました。
「ジャズと・・・、ニール・ヤングですかね」
と答えると、彼女は顔をほころばせた。
「CSN&Yは?」
「えぇ、大好きでしたよ」
「最近、復活したんですよ。テレビでみたばかりなの」
そして、付け加えた。
「わたし、トム・ウェイツが好きなんです」
そのとき推奨された新作が『ミュール・バリエーション』。
帰国後、さっそく取り寄せて聴いてみたが、
こんなパンクを好む女は abnormal にちがいない、
という偏見を抱きたくなるほどの頽廃ぶり。
しかし、徐々にわたしもその毒に犯されていった。
2ヶ月ほどすぎた年末、クリスマス・プレゼントが届いた。
あらっぽい梱包を解くと、十数年ぶりに復活した
CSN&Yのテレビライブを録画したVHSビデオテープ
があらわれた。
何度もダビングをくりかえした不鮮明きわまりない
映像だったが、嬉しくないはずはない。
以来、音信不通。
- 2009/09/30(水) 00:19:10|
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