百聞は一見に如かず 9月29日(火)。
25日に下見していただき、搬出した加藤家住宅の襖の修理状況を、布施のK表具店まで視察にでかけた。わたしたちが到着したとき、おもての駐車場で日本画の「洗い」作業がおこなわれていた。契約では「水洗い」までということになっていたのだが、この画の汚れはなかなか強烈で、わずかながら薬品処理することになったのだという。今回、経費の関係から、「書画の汚れと共存する」襖の修復を選択したのだが、その汚れのレベルもさまざまなようだ。
「水洗いしても墨が滲まないのはなぜですか?」
と先生が質問された。たしかに水で濡らせば、墨が滲んでせっかくの画が台無しになるかもしれないとも思えるが、そうはなっていない。表具屋さんによると、煤(すす)と膠(にかわ)を混ぜた本来の墨は、水に濡らしても滲むことはないという。つまり、膠が水溶性ではないということだろう。


湖山池の前にたつお店の外観はなかなかお洒落だ。内部も、2階の小屋組に古い梁材を転用しており、柱や束は古色塗りして天井を張らず、屏風・着物・骨董が展示してあった。1・2階を一通り見学させていただいた後、表装の張替えを実演していただいた。加藤家仏間の仏壇を隠す幅狭の襖がそのサンプルである。
1)まず、襖の縁(骨)を「ふちおこし」という工具と金槌をつかい、慣れた手つきで外していく。
おもしろいのは釘を緩めるために、まずは軽く打ち込むこと。それから縁を「ふちおこし」で
梃の原理で外していく。こうすると、襖が傷みにくい。
2)次に襖の裏張。下地に穴のあいたところを、余った切紙や新聞で埋めていく。
3)裏張のままだと、下地がデコボコしているので、大きな和紙で全体を覆う。
これで凸凹は消える。この作業を「うけ」という。「うけ」は紙を水でよく濡らしてから張る。
ここで糊は使わない。ただ水で接着面を濡らすだけ。糊は骨の側面に塗りつける。
水に濡れた面を張ってのばし、最後に骨の糊の部分を接着させる。
4)最後に、表装紙の張り付け。今回、表装紙はくすんだ黄色系の色を選択した。
いうまでもなく、「書画の汚れと共存する」ため。表装も「うけ」と同じく、基本的に
表面に糊はつかわないが、場合によっては薄い水糊で接着を強化することもある。
今回の実演では、薄い水糊を使うことになった。縁の貼り付けは「うけ」とおなじ。
表面にできる皺をのばすのは、縦方向・横方向のどちらかとする。斜めにのばすと
乾燥後、角に皺が残る。
以上の工程が半時間前後。

↑(左)ふちおこし (右)糊 *クリックすると大きくなります。

見事なまでのプロの技だ。
はたしてわたしたちがどこまで出来るのか。表層替えの実演が終わった後、先生が表具屋さんにぜひワークショップにお越しいただき、実演・指導してほしいと頼まれていました。そうなることを祈っています。なお、ワークショップで表装替えをする襖は7枚の予定で、ほかに障子の張り替えも数枚用意しており、来週のゼミでは加藤家住宅で学生が実験的に貼り替えに挑戦する予定です。
「風庵」へ 表装屋さんを後にし、今町のレトロショップ「風庵」に向かった。ただ、建具は今町の本店でなく、北園の「風庵ギャラリー」にまとめて収蔵してある。ギャラリーは毎月第1水曜日しか開けないとのこと。調べてみると、10月8日。ちょうど良いタイミングで納得していたのだが、店長さんは気をきかしてくださり、予約していただければいつでもあけます、とおっしゃった。きっと、表具店の方が事情を説明してくださったのだろう。
あっ、それとも先生が中古のギターを買った効果かもしれない。このギターについては、いずれ先生自ら語られるでしょう!
その後、ダウラ経由で大学に戻った。先生は「演習」にかこつけて会議を一つサボっちゃったみたいです(秘密にしてください!)。大学に戻ってから、3年生3名が1案ずつ考えてきたワークショップのチラシをチェック。
前作を受け継ぎながら、前作とは違う印象をあたえるものを、との注文に3年生も四苦八苦。来週のゼミまでには、チラシが完成することでしょう。〈黒猫〉
- 2009/10/02(金) 00:00:36|
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