第11章 投身自殺の誤解p.66-71:小山訳
1.ある日の昼下がり、賈宝玉は王夫人の部屋へ行くと、彼女が眠っているのがわかった
ので、女中の金釧(きんせん)と冗談を言い始めた。王夫人は、金釧の話すことが軽率
であると感じ、体をひるがえらせて起き上がり、彼女に一度びんたをくらわせた。
賈宝玉は自分が災いを招いたと思い、一目散に逃げた。
【セリフ】
王夫人:「下品な女中だこと! 若旦那さま(賈宝玉)が、
あなたにだめにされてしまうわ!」
2.王夫人は玉釧を呼びつけて言った。
「あなたの母を呼んで、あなたの姉(金釧)を連れて行かせなさい。」
金釧は、ひざまづきながら切々と頼み込んだが、やはり追い出されてしまった。
3.賈宝玉は大観園にやってきた。にわかにひとしきりの涼風が吹き、
つづいて大雨が降ってきた。賈宝玉に身にしみるほど冷たく降り注いだ。
4.賈宝玉は怡紅院に走って戻り、とても長い時間(門を開けるよう)叫んでいた。
やっと門を開けてくれる人があらわれた。彼は怒っていて、それが誰であるかも
気づかずに、脚を上げて襲人のあばらのあたりを蹴飛ばした。
【セリフ】
襲人:「あぁ!」
5.襲人が血を吐いたので、賈宝玉は医者を呼んできて治療してもらった。
次の日、賈宝玉は薛蟠に招かれ、酒を飲み、夜になってやっと戻ってきた。
6.晴雯(せいぶん)はちょうど怡紅院で横になっていて、いらついてきた。
賈宝玉は晴雯の心を開こうと思い、言った。
「あなたが好きなものを何でも言ってみてください。」
7.「私が好きなものは、扇子を引き裂く音を聴くことです。」
晴雯はその方法を言った。賈宝玉はすぐに自分の扇子を渡し、
彼女に引き裂かせた。
8.日が変わって、史湘雲がやって来た。賈宝玉は彼女に麒麟を
贈ろうと思ったのだが、探すものの見つからなかった。史湘雲に
拾われていたとは思いもよらず、受け取った。
【セリフ】
史湘雲:「ごらんなさい、これじゃないの?」
9.このとき、知らせが入った。
「賈雨村さまがいらっしゃっていて、旦那様は若旦那様(賈宝玉)をおよび
になっています。(すでに)お客さまに会いに行かれましたよ。」
賈宝玉は喜べなかったが、仕方なく(雨村に)会いに行った。
【セリフ】
賈宝玉:「付き合いきれないおじさんがいてね、毎回私に会いに来るんだ・・・」
10.襲人は賈宝玉を送り出すと、ちょうど薛宝釵に出くわした。
このとき、一人のおばあさんがやって来て言った。
「金釧という女の子が井戸に身を投げて死んだわよ。」
11.薛宝釵はこれを聞き、王夫人のお住まいに行くと、彼女はつよく自責の念に
駆られむせび泣いていた。薛宝釵は彼女をじっくり慰めた。
12.こちらでは賈政がちょうど客を送り出したところで、賈環が走りながら
大声で叫んでいて、
「井戸の中で溺れ死んだ者がいるぞ!」
賈政は賈環を呼びつけた。
【セリフ】
賈環:「身投げした女中がいるぞ!」
13.賈環は言った。
「おととい、宝玉にいさんが、女中の金釧を強姦しようとし、さらに殴ったので、
あの女中はやりきれなくなって井戸に飛び込んでしまったんだ。」
14.賈政は怒りのあまり顔色を蝋のように黄色くし、書斎に戻ってきてわめいて言った。
「宝玉を捕まえてこい!太い棍棒を持って来い!縄で縛れ!門を全て閉めて、
誰かに連絡をとり、ただちに殴り殺してしまえ!」
15.召使たちは、賈宝玉を腰掛の上に押さえつけて、十数回殴った。賈政は軽く殴るの
を嫌い、自分自身でも三、四十回殴った。
16.王夫人は知らせを聞きつけて急いで来て、賈宝玉を抱きかかえながら賈政に
殴らせなかった。このとき、賈母も駆けつけたので、賈政はやっと手を引いた。
17.賈宝玉は怡紅院に運ばれた。林黛玉がやってきて様子をじっと見守っていると、
賈宝玉の傷はひどいもので、両目とも泣きはらしてしまった。
【セリフ】
賈宝玉:「私はこんなけがをしてはいるが、あなたは気にするな。」
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オリエンテーション 『紅楼夢』翻訳
第1章 『紅楼夢』翻訳
第2章 『紅楼夢』翻訳
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- 2009/10/26(月) 00:05:06|
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