
この夏休み、わたしの爪の具合はこれまでにない良好な状態を持続していた。爪の先端で弦をつま弾くとなんとも良い音がする。そういうときに限って、練習会や演奏会は開かれない。10月初旬に六弦倶楽部の第11回練習会を兼ねた「
コハクチョウとギターの夕べ」開催が決まったとたん、親指の爪が縦に半分割れた。まだ半分残っていて、掌の方向を変えれば弾けなくもない。そうこうしているうちに、薬指の爪がとんだ。親指に残った半分の爪も付け根に亀裂が入っている。
現代ギター社を通して「リコネイル・ギターつけ爪セット」を取り寄せた。送料を含めて5000円近い額がした。リコネイルのつけ爪は両面テープでプラスチックの爪を接着させるもの。わたしは不器用なので、自分ひとりで爪をつける自信がなく、デザイン演習の休憩時間にバンドをやっている女子学生を呼んで指導を乞うことにした。しかし、その女子学生は「つけ爪をした経験がないから分かりません」と言う。ネイル・サロンに行ってプロに相談するしかない、というのが二人で話し合った結果である。
10月下旬の週末、わたしは高の原サティにあるつけ爪のお店に行って事情を説明した。スタッフは困ったような顔をしている。「男子禁制」なのだそうだ。えっ、なんだ、差別じゃないの・・・と思ったが、カーテンの向こうから店長らしき女性があらわれ、「こちらのお店では男性のお客さまも受け入れてくださいます」と言って、西大寺にあるライバル店のパンフレットを手渡された。
西大寺の店に行って事情を説明し、リコネイルのつけ爪セットをみせた。値段を訊かれ、答えると「えっ、そんなにするんですか」と驚いている。「これじゃ駄目ですね、すぐにはずれます。うちの店のやり方でよろしいですか」と言われて承諾した。
いや、驚いた。銀紙の枠を指の先端に嵌めて爪の上にジェルを塗っていく。あらかじめヤスリで爪の表面をこすり摩擦面をつくっておいて、ジェルが接着しやすいようにしてからジェルを塗る。爪の形をととのえ枠を外すと、2~3分で綺麗な爪が固形化していった。それをまた何種類かのヤスリで磨き、液体で光沢をつける。またたくまに親指と薬指に透明なつけ爪ができあがった。半時間ばかりの体験だったが、「男子禁制」のネイルサロンが多い理由は十分理解できた。
それにしても、つけ爪は見事なフィンガーピックだ。わたしは2本のつけ爪がとても気に入ったので、人差し指と中指もつけ爪にしてほしいと頼んだのだが、「使える爪は自然のままのほうがよいです。つけ爪は生爪を傷めますから」と言われて、プロの意見にしたがった。
ギターを弾いてみた。つけ爪のほうが良い音がする。自然の爪のほうがやや割れた音がするのである。やはり演奏に使う4本すべてをつけ爪にするべきだった。


1週間後の週末、またわたしは奈良に戻った。大阪で
PTA懇談会があるのと、母の見舞いが目的である。この週末に何があったか書き始めると50行ぐらい必要だろうからやめておくけれども、時間の消費スピードは加速度的に増加し、疲労はいえず体調は悪化の一途を辿っていった。飛び石連休あいまの11月2日だけとっても、いったいどれだけのことがあったか。奈良の家をでたのは深夜10時すぎ。ただちにコンビニでユンケルを2本買った。大学に戻ったのは3日の2時すぎ。院生2名が待ちかまえていた。かれらも苦闘していたのである。もうすぐわたしたちの苦闘が何のためであるのかが分かるでしょうが、今年もまたメディアを震撼させるような仕事を「急遽」抱え込んでしまいましてね。それに対応できるASALABのスタッフはたいしたものだ。ただ、肝心のわたしが歳をとっている。スロージョギングする時間すらとれないのだから・・・毎年、11月には吉事と凶事が併行して発生するので、今回はひょっとしたら自分が御陀仏ではないか、なんて洒落では済まないオチが待っているかもしれない・・・
3日は待ちにまった「コハクチョウとギターの夕べ」が午後4時から米子水鳥公園で開催される。会長からは2時集合の号令がかかっている。11時過ぎに目が覚めた。あれっ・・・
中指の爪が消えている。
就寝前、
VANのギターで軽く練習した。金属弦の圧力に耐えられなかったのだろうか。104に電話し鳥取市内にあるすべてのネイルサロンの電話番号を教えてもらった。なんとかかんとか、1軒だけ対応してくれる店を発見した。ただし予約がつまっていて、あいている時間は13:30~14:00のみ。悩んだが、その時間に行くことにした。「駅前の楽器屋さん」の近くだったので、早めに家を出てVANのギターを楽器屋さんにあずけて弦高の調節を依頼。修理のあいだ、ネイルサロンでつけ爪をしたのだ。
この店もまた「原則、男子禁制」。一人でお店をまかなっているネイル・アーティストのお嬢さんから、「この店でつけ爪したって口外しないでくださいね」と釘を刺された。今回は消えた中指だけでなく、人差し指にもつけ爪をしてもらった。これで演奏に使う右手の4本の指はすべてつけ爪となった。米子に向かう道すがら、爪の具合が気になったので、何度も左手で感触をたしかめた。奈良のほうが薄く、ピックとしてはふさわしい。その日鳥取でつけた爪はやや厚く、ピックとして機能するか、若干不安だった。でも、爪がないよりは良いに決まっている・・・
わたしはつけ爪がとても気に入っている。
おそらく、今後、生爪で演奏することはないんじゃないだろうか。
- 2009/11/06(金) 00:07:24|
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昨日初めてこのブログを見たのですが
山で最期を迎えたい ある夫婦の桃源郷
の映像は入手されましたでしょうか?一応手元にあります。
- 2009/11/06(金) 00:33:27 |
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