第11回六弦倶楽部練習会 2部「ギターの夕べ」 月太郎さんの伴奏中、舞台からホールを見下ろして驚いた。結構、お客様が多いのですよ。こういう六弦倶楽部以外の一般聴衆を前にしての演奏というのは、わたしにはほとんど経験ない。大丈夫かな、と不安になりながら最悪の伴奏に終始し、舞台の袖に戻って、ただちにブレイクが入った。なんと40分の休憩だそうで、控え室で珈琲を飲んだり、ギターの練習をしたりしていると、体調が少しばかりまともになってきた。体中に充満していた乳酸が半分ぐらいになったかもしれない。
ここで恒例のくじ引き。遅刻者をちゃんと待っていてくださるのですね・・・トホホ、「初めのほうにあたらないでよ」とくじを引いたら「2番」だって・・・会長から「演れますか?」と問われ、「演るしかないですね、みんな平等ですから」と答えた。自分の体調を考えると、2番という演奏順は決してよくないけれども、結果を述べてしまうなら、悪い順番では決してなかった。わたしが演奏するあたりまで、まだお客様はかなりいらっしゃったのです。日が暮れるにつれ、そのお客さまたちが三々五々帰っていかれまして、最後のほうはとても少なくなってしまいました。思うに、休憩をしないほうが良かったんじゃないでしょうか。あの失われた40分がなんとももったいなかった・・・

さて、2番目に登場したわたしの選曲は以下の通りです。
1.メドレー: 火の鳥~マイ・ファニー・ヴァレンタイン
2.イパネマの娘
3.ムーンタン
1.メドレー: 火の鳥~マイ・ファニー・ヴァレンタイン
Medley: Prelude to Phoenix ~ My Funny Valentine 「火の鳥」はもちろんストラヴィンスキーのそれではありません。6月6~7日に連載した「
火の鳥」です。要するに、わたしが高校2年生のときに書いたインストのオリジナル。八頭校に進学した同級生たちが文化祭で、手塚治虫の『火の鳥』ヤマト篇を舞台で上演するから主題曲を作曲・演奏してほしいという依頼をしてきたので、それに応えた作品です。キング・クリムゾンのアコギフレーズからのパクリを含みますが、自分ではヤマトタケルの世界と生と死の儚さをせいいっぱい表現したつもりです。
演奏には「駅前の楽器屋さん」で調整してもらったばかりのVANのギターを使いました。元値1000円に修理代500円で、いまのところ1500円のギターということですね。金属弦とつけ爪の相性はとてもよかった。不特定多数の観客を前にしていて、ややあがってしまったけれども、最近は、失敗しても絶対とまらないようにしています。なんとか切り抜けれられるものですね。
一方、「マイ・ファニー・ヴァレンタイン」は、ご存じのように、ジャズのスーパー・スタンダード。リチャード・ロジャース&ロレンツ・ハートが作詞作曲した映画音楽(1937)で、いったいどれだけのジャズ・ミュージシャンがとりあげてきたことか。わたしがもっとも愛聴したのは、ビル・エヴァンス3『ワルツ・フォー・デビー』の2曲めに入っている「マイ・ファニー・ヴァレンタイン」です。
さて、「火の鳥」でクリムゾンから引用した5フレットAm9ポジションのアルペジオは、4弦を7フレット(A)→6フレット(G#)→5フレット(G)→4フレット(F#)と下げていくクリシェです。普通、A→G#→G→F#の半音下げクリシェはベースラインに使うものですが、これを中間音としてテンションを変化させるところがなんともセンスがよろしい。ヤマハが出している
ジャズギター初級本中の「マイ・ファニー・ヴァレンタイン」でも同じコード進行で同じ中間音のクリシェを使っていることが判明。「火の鳥」と「マイ・ファニー・ヴァレンタイン」をメドレーで演奏しようと思い立った所以です。ヤマハ本「マイ・ファニー・ヴァレンタイン」の編曲者が分からないのですが、初級本ですから、もちろん難しいわけはありません。あとは自分がどれだけ味付けをするか、だけでしたね。アドリブ・フレーズを頑張ってみましたが、どう聴こえたでしょうか。

2.イパネマの娘 Garota de Ipanema ご存じ、アントニオ・カルロス・ジョビンの代表作(1962)にして、ボサノバの代表作です。うぅぅぅ~ん、ジョビンのコード進行は凄いですね。メロディを変えずにコードを少しずつずらしていく手法に驚かされます。天才だね、この人・・・
今回のコンサートは水鳥公園を舞台としているので、「水」や「鳥」など自然の風物をタイトルに含む選曲を求められていました。この曲だけそれがないんですが、じつはイパネマというのはリオデジャネイロにある海岸のことでして、わたしはこの曲を聴くと「波」をイメージしてしまいます。穏やかな波です。だから、そのイメージを感じ取っていただけるよう、ガットギター(ホセアントニオ)をやさしく爪弾いたつもりなんですが、正直なところ、ナイロン弦と新しいつけ爪の相性がもうひとつ。すこし爪が硬すぎますね。この曲に関しては、生爪での演奏のほうがソフトな音がして良かっただろうと思います。
なお、佐藤正美さんの『ボサノヴァギターのしらべ』はとても評判のよい楽譜集です。今回演奏した「イパネマの娘」は佐藤さんのアレンジをほぼ踏襲しています。難易度は★(星一つ)でして、簡単なようですが、これがそうでもないのですよ。まぁ、挑戦してみてください。
ともかく、人前でジョビンを初めて弾いた記念日になりました。感謝!
3.ムーンタン Moontan ちょうど薄暗くなってきたころ、「ムーンタン」の演奏に。わたしがこれまで演奏してきたヨークの作品は「サンデーモーニング・オーバーキャスト」「マーリーの亡霊」「イントロダクション~サンバースト」「ムーンタン」「レッティン・ゴー」の5曲ですが、いちばん拍手を頂戴したのが
カフェサースで弾いた「ムーンタン」でした。あれが昨年の六月下旬のことです。
すでに十分落ち着いていました。最初は調子よく弾いていたんですが、途中から調弦がおかしくなってきましてね。やはり、つけ爪がナイロン弦には硬すぎるんだと思います。とくに新しくつけた人差し指と中指が分厚くて、ハードピックのように硬く、ナイロン弦にはあわないようです。ムーンタンはライトハンド奏法、タッピング、打楽器奏法などを駆使した激しい曲で、演奏中にナイロン弦がのびてしまうのでしょうね。
調弦の不安定さに悩みながら、ときにペグを左手で調整しつつ演奏を続けました。ともかく、とまってはいけない。弾き続けるしかないのです。そして、なんとか弾き終えました。
つけ爪とナイロン弦の相性については、ずいぶん考えさせられましたが、しばらくはヤスリで磨いて爪を薄くし対応してみようと思っています。金属弦なら今の状態で十分ですが・・・

自分の演奏後は、客席で他の倶楽部メンバーの演奏を聴いていました。今回、代表がいつもとは違って緊張せず、堂々と演奏されていたのが印象に残りましたね。
時間がたつにつれ、一人、また一人と一般来場者が姿を消していきました。でも、最後の最後まで演奏を聴いてくださった女性がいらっしゃいましてね。わたしがストーブの横に立っていると、その方のほうから近づいて来られ、突然、「お上手ですね」と語りかけられました。
「えっ、みんな下手の横好きでしょ・・・」
とお答えしたら、黒い服を纏ったその女性は、わたしのほうをみてもういちど「お上手ですね」と言われる。どうやら個人に対する感想のようでした。この日は体調が悪く、前回に比べれば50%ぐらいの出来だと思っていたので、少々驚きだったんですが、その女性は訥々と小声でさらに語られる。米子市内から来られたのだそうです。水鳥公園の常連客かと問えば、そうでもないらしく・・・
「ギターが聴きたかったんです。やはり、いらっしゃいますね。
隠れた逸材がいろんなところにいるもんだって・・・
聴きにきて本当に良かったです・・・」
「・・・・・・」
午後7時半で「コハクチョウとギターの夕べ」は閉会。VANのギターは修理技師の吉田さんにお預けしました。どうか、思う存分リペアしてください。修復されたギターを使って、こんどは19歳のときに作ったセンチな唄を歌いますので。よろしくお願いしま~す。

↑打ち上げのガストで発見!
- 2009/11/08(日) 00:22:01|
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現在トップの矯正中です。
1ミリくらいお腹が出ていてブリッジが傾いていますので、引っ込めています。
現状ウクレレ様に横方向にブリッジ下とサウンドホールのブリッジ側に2本だけブレーシングがあり、その間が100ミリほどなので、ブリッジからサウンドホール側の強度が足りません。
鉄弦を張ると張力に耐えられずその間が最大1~2ミリほど沈みます。
対処としてはツッパリ的な力木を一本乃至2本入れると沈まなくなるかなぁと思っています。
- 2009/11/08(日) 19:08:59 |
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