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鳥取環境大学 環境情報学部 建築・環境デザイン学科 浅川研究室の記録です。

纒向遺跡建物A・B・Cと塀・門の復元(Ⅰ)

遺構平面図20091124



 纒向でみつかった4棟の大型建物群うち、まだ説明をしていない建物ABCと塀・門について2回に分けて簡単に報告しておきます。上の図に示すように、纒向遺跡の大型建物群は、東西方向に軸線を揃えて(正確には西に5度ふれる)4棟が配列されています。遺構番号は西から「建物A」「建物B」「建物C」「建物D」。これまで「超大型建物」と呼んできたのが「建物D」です。建物B・C・Dの3棟が凸型の塀に囲まれた敷地にあり、建物Aはその西側に孤立しています。

1.建物Cの復元

遺構解釈と平面の復元: 建物Cは建物D(超大型建物)の背面にあたる西側で検出された遺構である。トレンチ掘りのため、柱穴が部分的にしか確認されていないので、全体平面は不明だが、近接棟持柱をもつ梁間2間の建物である点は確定している。中軸線に対して対称であると仮定すると、桁行3間(7.8m)×梁行2間(5.3m)に復元できる。現状では中央部が発掘調査されていないので、床束の存否は明らかでない。よって高床か土間が判断しかねるが、今回は建物Dとほぼ同じ床高の高床建物と仮定して復元を進めた。中央間が2.4mと狭く、脇間が2.7mと広いので、中央間に窓を配置し、入口は建物Dとの往来を重視し、建物の左右妻側に設けた。
上部構造の復元 モデルとした家形埴輪は大阪府玉手山古墳(4世紀後期)、大阪府美園1号古墳(4世紀末)など。とくに玉手山古墳の埴輪は切妻造妻入であり、ケラバの出や妻飾をおおいに参照した。軸組・小屋組の復元方法は建物Dと同じなので割愛する。青谷上寺地材からは新たに連子窓を採用。連子窓の外側に突上戸(板蔀)を併設。突上戸(板蔀)は出雲市の三田谷Ⅰ遺跡のディテールを参照。奈良時代の材でやや進化しているが、同じ軸受材は青谷上寺地でも出土している。
考察 遺構図を観察する限り、建物Cは他の3棟とわずかに方位がずれている。これは他の3棟と建物Cに時期差がある可能性を示唆するデータである。共存関係か前後関係かを今後は再検討していく必要があるだろう。
 建物Cと建物Dが共存すると仮定した場合、建物Cの面積(41.34㎡)と建物Dの中央2間×2間の面積(59.52㎡)が比較的近い点には注意する必要があるだろう。一つの仮説して、建物Cは日常生活をおくる居住専用棟であるのに対し、建物Dの中央2間×2間(室=塗籠?)は日常的には御神宝などを納める収納スペースだが、儀式の際には首長の居住スペースとなった可能性があるかもしれない。日常時と非日常時で建物Cと建物Dの住み替えをおこなっていた可能性である。建物Cは間口は3間と奇数間だが、階段は両側2方向として建物Dに近い性格を備えているので、破風は女千木型で、千木の数を偶数にしている。(Mr.エアポート)

C_150cm.jpg




2.建物Bの復元

遺構解釈と平面の復元 建物Bは塀の凸部分の先端にあたる特異な場所に立地する。遺構は全面発掘調査されており、平面は3間(南北・5m)×2間(東西・4.8m)で近接棟持柱を備える。桁行方向(南北)の柱間寸法は中央を約1.8m、両脇はそれぞれ約1.6m。梁行方向は、棟持柱を中心にそれぞれ約2.4mとなる。桁行3間の中央を入口とし、その両側に建物Cと同形式の窓(内側連子窓、外側突上戸)を設ける。梁行2間は壁とした。立地の特異性からみて「楼観」に復元すべき建物のように思えてならなかったが、床束が存在せず、高床構造に復元できない。平屋の切妻造とみなした。
上部構造の復元 大阪府岡山南遺跡(5世紀前半)、奈良県杉山古墳(5世紀後期)などの家形埴輪をモデルにした。軸組・小屋組は建物Cとほぼ同様だが、「守衛室」とみて壁の材を横板壁でなく、網代編にした。また、破風は男千木型、千木の数は奇数(5本)とした。モデルとした家形埴輪にも見られる地面近く「へ」の字形の材は、建物Dでも触れているように、「水切り」「構造材の目隠し」「鼠返し」の役割を担う。平屋の建物だが、転ばし根太で床を張った。
考察 「居る処の宮室は楼観・城柵を厳かに設け」という倭人伝の記載を彷彿とさせる建物であり、柵に近接する「楼観」とみたいところだが、総柱式の平面ではないので高床構造にできない。「楼観」ではないが、門を守り、建物C・Dを守る「守衛棟」のイメージで設計した。(タクオ) 【続】

B_150cm.jpg


*このページに掲載されたCGを報道に利用したり、著作物に引用転載する場合、
 浅川研究室の許可が必要です。許可された場合、以下のクレジットを必ずつけてください。

    復元CG制作: 鳥取環境大学建築・環境デザイン学科浅川滋男研究室

 上の記載がない場合、不正使用とみなしますので、ご注意ください。




  1. 2009/11/27(金) 00:11:34|
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