第12章 詩の会「海棠社」p.72-77:今城訳
1.金釧(王夫人の女中)が死んだので、王夫人の部屋では女中が一人減って
しまった。ある日、鳳姐(王熙鳳)は王夫人のところへ行って、この欠員を誰かで
埋めたらどうかとたずねた。折よく、薛おばさん母子と林黛玉がみなそこにいた。
王夫人は言った。
「代わりの人は必要ないわ。余ったお金は玉釧(金釧の妹で王夫人の女中)に
与えてね。」
2.この時、王夫人は鳳姐が女中の月々のお給金をピンはねしていると
よく噂で聞いたのを思い出したので、鳳姐にカマをかけてみた。
鳳姐は、はぐらかして去っていった。
【セリフ】
王夫人:「おととい、私は誰かから銭が一刺し足りないと言っているのを
聞いたような気がするわ。」
3.王夫人の部屋を出て、鳳姐はいちど冷笑し、歩きながら罵った。
「あなたたちに不平をこぼされるのなら、そのうち、いっそのこと
みんなのお給金を差し引くわよ。」
4.この日、探春は賈宝玉と姉妹に招待状を出し、詩社(詩の会)を
つくろうと提案した。みな、秋爽斎(探春の住居)に集まり、
詩の会の組織について話し合った。
5.林黛玉は言った。
「詩の会を起こすのであれば、私たちは詩翁(詩の達人)になるわけだから、
ペンネームを考えなければならないわ。」
みなが賛成して、各々りっぱなペンネームを考えた。
【セリフ】
林黛玉:「私たちはまず姉、妹、弟、兄嫁なんていう
呼び方を変えてこそ風流だわよね。」
6.李恕l(賈宝玉の亡兄の賈珠の未亡人)は詩の会の主宰になることを
買って出て、迎春、惜春は韻を決める役と進行役を分担した。
多くの人と相談して、毎月2回集まることに決めた。

7.探春は言った。
「詩の会を始めると私が言い出したのだから、
今日はまず私から一句始めましょう。」
そこでみな海棠(かいどう)花を題目として、
詩を作り出した。
即座に、探春、薛宝釵は書き上げた。
8.賈宝玉は焦って回廊上をそぞろ歩いていた。時間切れ直前に、
林黛玉はようやく筆を執り、一気に書き下ろした。
9.李恕lは、みなの詩を一通り批評した。探春は詩の会を「海棠社」と
名付けることを提案し、みなこれに同意した。
【セリフ】
探春:「私たちは海棠の詩で始まった。だから、海棠社と名付けましょうよ。」
10.詩の会が解散した後、賈宝玉は史湘雲を呼ぶのを忘れていたことを
思い出したので、即刻賈母のところへ駆けつけると、騒々しく使いの者を
行かせて史湘雲を連れて来させた。
11.次の日の昼、史湘雲はやって来た。彼女は笑いながら言った。
「私は遅れてきたので、明日、私が主宰になって詩の会を開きましょう!」
12.夕方、薛宝釵は史湘雲に傷「蕪院に来てもらい、主宰や詩の題目の件について
相談し、併せて賈母などの方々もお招きすることを決めた。
13.次の日、宴席が配置し終わり、賈母などの方々が藕香薯ン(探春の住居)に到着した。
鳳姐はあわただしく切り盛りし、その上、折につけ賈母の接待をした。
14.食事の後、賈母たちは帰っていった。史湘雲はまた食後の酒と果物を
テーブルに並べ、題目を柱の上に掛け、みなに題目を選ばせて詩を作らせた。
15.詩がみな書き終わり、李恕lは批評を述べた。
「林黛玉の詩は題目が斬新で、着想も巧みであり、今日の出来は黛玉が一番です。」
16.この時、鳳姐は平児(鳳姐の女中)を派遣して食べ物を取りに来させた。
李恕lは、別の人に食べ物を鳳姐へ届けに行かせ、残った平児と談笑した。
17.詩の会が解散して、襲人(賈宝玉の女中)は平児に、どうして月のお給金が
支給されないのか尋ねた。平児は彼女に、鳳姐がピンはねして高利貸しを
していることを教えた。
【セリフ】
襲人:「まさか、彼女が使うお金が足りないわけでもあるまいし。
満足というものを知らないのね。」
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- 2009/12/02(水) 00:29:36|
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