第14章 大観園の道化p.82-87:今城訳
1.賈母は史湘雲の宴席でご馳走になり、また劉ばあさんを連れて大観園を
ぶらぶらしたいと思ったので、王夫人や賈宝玉や多くの姉妹たちを
部屋に呼んで、史湘雲へのお返しの宴席について相談した。
2.賈宝玉は言った。
「私は一つ考えがありますが、どうせ外からのお客はい来ないので、
いっそのことみなの好きな食べ物の中からいくつかを選び出し、
それぞれの人の近くのテーブルに並べて自分で食べれば
よいのではないでしょうか。」
賈母はこれを聞き、賈宝玉の言う通りに料理をつくるよう厨房に命じた。
3.翌日の早朝、李恕lはまさに使用人がテーブルを運ぶのを
見ているところだった。劉ばあさんと板児は早々に大観園にやってきた。
【セリフ】
李恕l:「気をつけて、ぶつかって壊してはだめよ。」
4.このとき、賈母がやってきた。李恕lは出迎えて言った。
「おばあさまは嬉しくて、早くいらしたのでしょうが、
私はちょうど菊の花を届けようとしていたところだったんですよ。」
5.このとき、菊の花を持ってくる人があり、賈母は大きく赤いのを選んで
髪の上に挿し、劉ばあさんに対して言った。
「こちらへ来て花を挿しなさいよ。」
6.鳳姐(王熙鳳)は劉ばあさんを引き寄せて、笑いながら言った。
「私にあなたのヘアメイクをさせてよ。」
そう言い終らないうちに、大皿に並べてあった菊の花を彼女の髪に挿した。
7.談笑をしている間、みなはすでに沁芳亭まで到着していた。
賈母は柱にもたれて腰を下ろし、劉ばあさんも傍らに座らせて、問うた。
「この庭はどう? 良いでしょう?」
劉ばあさんは庭中の景色に対し、絶賛してやまなかった。
【セリフ】
賈母:「この庭は良いでしょう?」
劉ばあさん:「絵画よりもこの庭のほうが十倍優れていますね。」
8.賈母は惜春を指さしながら言った。
「私のこの孫娘は絵を描くのが上手ですので、彼女に庭の絵を描かせて
あなたに1枚差し上げましょうか?」
9.劉ばあさんはこれを聞き、惜春を引き寄せながら言った。
「あなたは容姿端麗で、おまけにこのような才能があるなんて、
神仙の生まれ変わりなの?」
10.みながこれを聞き、大笑いがやまなかった。賈母は劉ばあさんを連れて
あちこち歩き、一通り観賞しながら、秋爽斎にやってきて宴席に加わった。
11.食事の前に、鴛鴦(賈母の侍女)は劉ばあさんを呼び、ひそひそと
彼女にあるフレーズを伝えた。さらに、これを言うのが賈府の規則だと言った。
【セリフ】
鴛鴦:「これは私たちの決まりで、間違えば笑いものとなりますよ。」
12.食事が始まった途端、劉ばあさんはすぐに立ち上がって言った。
「劉ばあ、劉ばあ、食べる量は牛の如し。
年老いた雌豚の肉でもかぶりついて、顔も上げない。」
13.みなはこれを聞き、あははっと大笑いをした。史湘雲は笑ってご飯を噴き出し、
林黛玉は笑って呼吸が苦しくなり、賈宝玉はひっくり返るほど笑って
賈母の膝に頭を落とした。
【セリフ】
賈母:「可愛い子だわねぇ。」
14.少したって、賈母はみなにご飯を食べようと呼びかけた。劉ばあさんは
たびたびおどけた話をして、みなが彼女のおかげで楽しい気分になった。
15.食事が終わり、賈母はみなを連れて庭を一回りした。
綴錦閣(てっきんかく)では酒令(宴席に興を添えるための遊び)をして
酒を飲み、鴛鴦が令官(酒令の進行役)を担当した。劉ばあさんのした
酒令は俗っぽくて面白く、みなしきりに笑っていた。
16.このとき、対岸の藕香薯ンからかすかに音楽が聞こえてきて、
劉ばあさんは酒をたくさん飲んでいたので、音楽を聞いて喜んで踊りだすのを
禁じえなかった。
17.林黛玉はそれを見て、劉ばあさんをからかって言った。
「昔、聖楽が奏でられたとき、百獣が一斉に舞い踊ったけど、
いまはただ一頭の牛がいるだけね。」
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オリエンテーション 『紅楼夢』翻訳
第1章 『紅楼夢』翻訳
第2章 『紅楼夢』翻訳
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- 2010/01/04(月) 00:00:49|
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