鳥取古民家修復プロジェクト委員会が展開している「セルフビルド&ゼロエミションによる民家の持続的修復」事業については、11月24日付けの中間報告書を文化庁に提出しましたが、「
NPOによる文化財建造物活用モデル事業」(文化庁)第2回委員会における「委員から意見」について連絡がありました。3月に開催される報告会でまとめてほしい内容等についてのコメントは以下のとおりです。
○
各班共通事項 1)文化財の通常時の利用状況や建造物と団体との関係を知りたい。
2)活動のPRではなく、事業趣旨(文化財建造物の管理の支援、活用の促進)に即した発表を期待する。
3)イベントをしたことによる効果の分析と今後の展望。
○
「セルフビルド&ゼロエミションによる民家の修復」事業についてのコメント 4)
修理を一般人が携われる部分と専門家がやる部分に分けて行うことに非常に可能性を感じる。 5)民家の修復についての情報を楽しみながらやる部分と技術的な部分に分けて発信してほしい。後者の例としては民家は地震に弱いと思っている人は多いが、こういう補強方法もあるといったようなことが発信できないか。
6)実際にローコストになりうるのかその検証を行ってほしい。
5)については、いままさに補強工事が始まっています。まもなく黒猫がレポートすることになっていますので、お楽しみに。6)はもう言うまでもありませんよね。今年のこの予算でこれだけの仕事をやっているのですから、圧倒的なローコストなんですが、個人情報については公開できませんのでご了解いただきたいですね。
なお、
事業報告会の日程は平成22年3月17日(水)午後からと決定しました。発表者と同行1名の計2名が東京にいくことになります。関東在住のOB諸君、同窓会をやりましょうか?
*「NPOによる文化財建造物活用モデル事業」による
第1回公開ワークショップについては、
こちら 第2回公開ワークショップについては、
こちらをご参照ください。また、平成21年度採択の21事業については、文化庁の
こちらのサイト に一覧が示されています。
平成21年度 NPOによる文化財建造物活用モデル事業中間報告〔事業名〕セルフビルド&ゼロエミションによる民家の持続的修復
〔委嘱団体〕鳥取古民家修復プロジェクト委員会
(1)これまでに行った事業活動(平成21年11月15日までの活動)
1.石造カマドの復原: 2006年度修復工事の際、解体され庭に放置されていた
カマド・パーツを土器の貼り合わせのようにして復原し原位置に戻した。
2.小舞壁の荒壁仕上げ: 塗り残されていた妻壁内側など数ヶ所の左官工程を実施。
8月27日に第1回公開ワークショップ(左官工程)を開催。参加者41名。
7月下旬から塗土の準備を進めた。2006年修理時の古い土壁を剥がして保管
しており、その旧壁土に新しい土・砂・藁を混ぜて養生・発酵させた。
ワークショップでは左官職人の指導の下、一般市民・学生が土練りと荒壁塗りを体験。
妻壁の左官工程を完了させた。
3.建具の再設置: 2006年に柱をジャッキアップし、根継・土台の差し替え・柱の
傾斜矯正などをおこなった結果、敷居-鴨居の内法寸法が伸び縮みし、建具寸法と
あわなくなった。このため、建具の框に打物をしたり、框を削ったりして敷居-鴨居内
に納まるよう修正した。
10月18日には「建具の修復と納まり」をテーマに第2回公開ワークショップを開催した。
参加者47名。建具の打物や削りは大工職人と建具職人が担当し、一般来場者はその技を見学。
また、一般来場者は表具師の指導の下、古い襖の表装張替え、障子の張替えをおこなった。
このワークショップでは文化庁の西山調査官と文建協の安田主任技師も参加され、
修理修復に関する意見交換をした。とくに加藤家住宅の場合、建物全体は半時計まわりに
回転する「癖」がみとめられ、これを防ぐため、裏側の納戸に構造用合板を用いて箱状の
構造体を設けるべきだとの指導をうけた。12月中にこの補強工事を実践する予定である。
第2回ワークショップでは、復原したカマドで芋煮鍋をつくり、昼食は晴天の庭で芋煮
を食べた。とても楽しい民家活用のひとときだった。
(2)上記(1)で記した各活動の効果や課題
建具の打物や削りについては、一般市民・学生は無理と判断し、プロの職人に依頼した。納戸の構造補強についてもプロに依頼する予定である。その他の修復、すなわち左官仕事、襖の表装替えなどは一般市民でも十分対応可能であり、予想以上のスピードで作業は進んでいった。また、市民参加型の修復によってコストを抑えることも可能になった。プロジェクトは順調に進んでいる。
(3)事業の目的の達成に向けての「手応え」ならびに今後の課題
手応えは十分感じている。セルフビルド&ゼロエミションをモットーに掲げ持続してきた修復の方法に大きな過ちはなかったと自負している。作業は順調だが、年度末にむけての最重要課題は報告書の編集・刊行である。2006年度以降の締めくくりとなる報告書を作成し、ローコスト修復の方法やプロセスを完結にまとめた「ポケット・ハンディマニュアル」に成就させたい。
(4)今後に予定する事業活動
1.軸部の構造補強: 上に述べた納戸における箱状構造物の設置によって、建物全体の
回転癖を補正する。この工事は12月中に終える。
2.竹雨樋の設置: 母屋とツノヤが接する入隅部分に竹製の樋を設置したいと考えている。
すでに材料はそろえているが、施主側が雨落ち溝を掘削したいと言い出したので、工事を
保留中。排水溝が施工の後、樋をとりつけたい。
3.発掘調査に基づく裏木戸の復原: 加藤家住宅の裏木戸(裏門)は現存しないが、
2007年度の石垣修復時に発掘調査と復原(基本設計)に取り組んだ。今年度は近隣の類例を
調査し、精度の高い実施設計を進めている。現在は継手仕口の試作段階で、まもなく
本格的な部材加工に移行し、1月末には竣工させたい。材料は2回のワークショップの
ために購入した木材の余材を利用する。また、裏門には、施主の希望により
「登録有形文化財」プレートを扁額状に掲げる予定。
4.報告書の編集: 今年度の活動を報告し、4年間の活動を総括する報告書を刊行する。
- 2009/12/25(金) 00:56:39|
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