コアの完成にむけて12月25日(構造補強3日目)
24日に引き続き、納戸の構造補強をおこなった。押入風コアの格子を取り付け、この部分は合板を取り付けるだけとなった。この日、新たに取り掛かったのは南側(厠側)の間口一間の障子部分だ。ここは、構造用合板で障子の半分を塞いで耐震壁に変える。合板によって片側の塞がれた障子は不格好なので、廊下側から見れば引き違い障子が2枚納まっているよう見えるように工夫した。廊下の先には厠がある。人が頻繁にとおる廊下なので、廊下側から合板が見えないように、敷居と鴨居を廊下側に出して合板を隠すことにしたのだ。廊下の幅が敷居分だけ狭くなるが、歩行を邪魔するほどではない。

敷居・鴨居の取り付けにかかるため柱間寸法を測っていると、柱の傾斜があきらかになり、部材加工に苦労することになった。障子自体はほぼ長方形なのだが、柱間は楕円形に変形している。敷居・鴨居のために両脇にも縦に柱状の材を取り付け枠を制作するのだが、その枠は障子にあわせることにした。柱と角度が違うので若干違和感があるかもしれないが、障子に加工を施すより新たに取り付ける枠を障子にあわせるのが良いと判断した。障子や柱などの古材に極力触らないようにすることが、保存修復のあり方として相応しいからである。
敷居・鴨居を制作していたとき、廊下の下の大引きが外れていることが問題になった。大引が外れているため、廊下の水平が保たれておらず、枠が設置しづらい。そこで、廊下の板を一枚めくり、外れている大引と土台を元に戻すことにした。土台はひどく腐蝕していたが、土台を持ち上げ西側の正常な状態の土台に繋ぎあらせることで問題は解決した。土台の差し替えも考えたが、それをするためには大規模な修復工事が必要となってしまうので、今回は元に戻すまでとする。
土台を元に戻したことで、納戸と奥座敷をつなぐ廊下が問題なく通れるようになった。ただ、板の強度がやや不安な箇所もあるので、体重を気にしている方は注意が必要かも??
障子の枠や半柱を作っていると、あっという間に陽が落ちてしまった。本日の作業はここまでだが、明日、鴨居・敷居の取り付けをおこない、合板を貼り付ければ完了となる。
妻壁の中塗り この日は、構造補強以外にも妻壁の中塗りもおこなう。そのため、私一人では作業補助が出来ないので、ナオキさんが中塗りのサポートにまわっていただいた。

12月26日(構造補強4日目)。 中塗り用の土は11月には準備できていたが、売れっ子の左官職人さんには仕事が押し寄せているようで、真冬の作業となってしまった。冬は中塗りに適した季節ではないが、今年度の予算執行のために猶予はない(と先生は言われた)。中塗り用の土は、荒壁の土と比べると、やや黒っぽくなっている。荒壁土よりも水分量が少なく、その代わりに土や砂が多く含まれている。そのため、乾燥後も荒壁に比べてヒビ割れや縮む範囲が少ないことが特徴である。
前回と違うのは土だけではない。荒壁土では足踏みした土練を工業用のミキサーに変えた点である。土練をしていたナオキさんは「これはすばらしいよ~」と現代の利器に感動していた。
一方、構造補強の工程は、ようやく敷居・鴨居を取り付けた。障子を閉めてみると、合板が隠れているとはとても思えない。廊下に少しだけ飛び出している障子をみて、書院のような印象を受けた。あとは合板を張り付けていくだけだが、柱の傾斜にあわせながらカットしなくてはならないので、すんなりとはいかなかった。調整するためにカンナで削る作業に時間を喰う。それでも少しずつ着実に進めていく。そのスピードもやはり速い。

午後3時をまわるころには、中塗りと構造補強の両方が終盤にさしかかっていった。どちらの作業もデッどヒートとなって、さらにスピードが上がる。左官仕事のほうが早く終わり、Sさんは「サービスしといたから(笑)」のひと言。当初の予定よりも多くの綿製を塗っていただいたようだ。
乾燥後どのようになるか楽しみである。
構造補強は午後6時まで残業。すべての合板を張り終えると、そこには箱状の構造物、すなわちコアができあがった。これで座敷・納戸側の変形を抑制できるだろう。廊下から障子を開けると押入となり、中にはいろんなものを納めることができる。ナカノマ背面の4畳には、さまざまな建具類が放置されているので、加藤家には、それらをコアのなかに収納すれば、4畳もスッキリ整理されるだろう。
4日間かかった構造補強も終了した。あとは、卒業論文にまとめる作業が待っている。
頑張らねば…。(09年暮 黒猫)
- 2009/12/30(水) 12:49:59|
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