第17章 孔雀の外套p.102-107:小山訳
1.晴雯の母親の病状が重く、彼女は家に帰り、世話をするほかなかった。宝玉の日常
生活の世話は、女中の晴雯と麝月が責任を負っていた。この日の夜、麝月は宝玉に
湯冷ましの水を飲ませた後で外を見た。月が明るく綺麗だったにで、すぐに出て
行った。
2.晴雯は、ちょっとした羽織ものを着て出て行くと、麝月を脅かそうと思いついた。
宝玉は「用心しなさい。風邪をひくと冗談じゃ済みませんよ」と言った。
3.晴雯が、麝月を脅かそうと出て行ったときに、宝玉が部屋の中から
「麝月、晴雯が出て行ったよ」と叫ぶ声が聞こえた。
4.晴雯は身を翻し、部屋に入って来て、「何も彼女が死んでしまうほど脅かすわけ
じゃありませんよ。宝玉さまは、なんでもないことで大げさに騒ぎすぎですよ」
と言った。すると、麝月も部屋に入って来た。
5.翌日、晴雯は頭痛と鼻づまりになった。宝玉は、王夫人がこのことを知って彼女が追
い出され家に帰されてしまうことを恐れ、すぐに、こっそりと医者を呼び彼女の看病
をさせた。
6.宝玉は賈母のお供をして食事をした後、戻ってきて晴雯の看病をした。彼女が炕
(ベッド状のオンドル)の上に臥せっているのを見ると、顔が真っ赤で、部屋の中
には誰一人としていなかった。
7.「麝月はどこに行ったの?」と宝玉は尋ねた。晴雯は「女中の平児が彼女を探しに
出て行きましたよ。私のことを追い出そうかとでも話しているんでしょうよ」と
答えた
8.宝玉はこれを聴いて、すぐに窓の傍へ行って、平児と麝月が会話しているのを盗み
聞きした。彼女たちは、平児がなくした腕輪のことについて話していたのだ。
9.平児は、「私のあの腕輪は、あなたたちの部屋の女中の墜児が盗んでいたようです。
あなたはくれぐれも言いふらさないように、宝玉さまのメンツをつぶさないように
ね」と言っていた。
10.宝玉は、耳にしたことを晴雯に伝えた。晴雯はカッとなって目を見開いて怒り、直ち
に墜児を呼びつけようとしたので、宝玉は、思いとどまらせた。
11.翌日の朝早く、宝玉は賈母のご機嫌を伺いに行った。賈母は、天気が寒いのを見て、
かれに一着の孔雀の羽毛で拵えた外套を渡し、送った。
12.晴雯は薬を飲むものの、依然として病状が良くならないため、医者に当り散らして
いた。麝月は、傍にいて、彼女をなだめていると、墜児がゆっくりと歩み寄って来た。
13.晴雯は墜児をちょっと引っ張り、ぶっては罵った。
「このアマ、あちこちで盗んで、この手でなんてことをしてくれたんだ。」
【セリフ】
墜児:「えぇっ!」
14.この後、晴雯は人を呼びつけて、墜児を追い出そうとした。墜児の母親が来て大声
で口論し、ますます晴雯の顔は怒りのあまり赤くなってしまった。
15.夕方、宝玉が戻ってくると、すぐに脚を踏み鳴らして嘆いた。
「本当に運が悪い。おばあさまが外套をくださったというのに、洞穴で焼け焦が
してしまった」
16.晴雯はこれを聞きつけると。この外套を手に取り、じっくり見て、「孔雀の金糸で、
焼け焦げの周囲をかがってみましょう。なんとか誤魔化せるかもしれません」
と言った。
17.そこで、彼女はなんとかしようと必死にもがきながらも、この外套を繕った。
繕い終わるや否や、晴雯はすぐに倒れこんでしまった。
18.宝玉は医者を呼んで、晴雯の看病をさせた。薬を飲み、治療を続けた結果、晴雯は
だんだん良くなっていった。まもなく、(母親の葬儀のために帰郷していた)襲人も
園内に戻ってきた。
*
これで、今年度の絵本版『紅楼夢』翻訳シリーズは終了です。全31章の半分弱をなんとか1年で読んだことになりますね。いつかまた復活する日が来るかもしれません。ご愛読ありがとうございました。なお、これまでの翻訳については、以下のサイトでご覧いただけます。
『紅楼夢』翻訳
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第2章 『紅楼夢』翻訳
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- 2010/02/12(金) 00:00:18|
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