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鳥取環境大学 環境情報学部 建築・環境デザイン学科 浅川研究室の記録です。

わたしの世界遺産構想 -大山・隠岐・三徳山

 昨日お知らせしましたように、舌足らずに終わった「大山・隠岐・三徳山」に関わるわたしの世界遺産構想を箇条書きで要約しておきます。

「三徳山 -信仰の山と文化的景観-」の限界

1.鳥取県が世界遺産暫定リスト入りをめざした「三徳山 -信仰の山と文化的景観-」(2007)
  の申請に対する国内審査の結果は「カテゴリーⅡ」。「カテゴリーⅡ」とは、現在のイコモス
  や世界遺産委員会の審査傾向の下では「顕著な普遍的価値」を証明することが難しいため、
  主題の再整理や構成資産の組み換え、更なる比較研究が必要とされる資産とされる。
  「カテゴリーIa」が最も暫定リスト入りに近く、「カテゴリーⅠb」になると暫定リスト入り
  は事実上困難。「カテゴリーⅡ」の三徳山は、このまま申請を続けても、暫定リスト入りは
  絶望的と判断される。

2.とくに大きな問題点は以下の2点。
 (1)世界文化遺産「紀伊山地の霊場と参詣道」との差別化
 (2)複数の自治体を巻き込み適切な主題と資産構成についての検討
   cf.同じ山岳信仰を対象とする他の地域と比較すると、
     「紀伊山地」(世界遺産登録済)は奈良・三重・和歌山の3県29市町村の範囲
     「富士山」(暫定リスト入)は静岡・山梨の2県18市町村の範囲

複合遺産としての国立公園

3.ここで大山隠岐国立公園に視点を移すと、公園面積(陸域)は35,053haで、
  鳥取・島根・岡山の3県にまたがる。

4.「国立公園ノ選定ニ関スル方針」(昭和6年)によると、国立公園の必要条件は
  「わが国の風景を代表するに足る自然の大風景地」で、副次条件の一つに
  「神社仏閣・史跡・天然記念物など教化上の資料が豊富」を含む。ここにいう
  風景を文化的景観に近い概念と捉えるならば、国立公園は自然遺産というよりも
  文化遺産(神社仏閣・史跡)と文化的景観を包含する複合遺産とみなすことが
  できる。

初期仏教と山岳信仰の接触

5.山を「セン」と読む山は岡山が29で最多。次が鳥取の22。島根にも6ある。
  つまり山陰と岡山の境に連なる中国山脈に突出して多い。センは「山」という
  漢字の呉音であり、南朝の仏教が百済を経由して日本に到達した初期仏教の
  影響を読み取れる。その「セン」群の中核が大山にほかならない。

6.大山・隠岐国立公園の内部および周辺には、二重構造の縁起をもつ密教系仏寺が
  少なくなく、6~8世紀の開山伝承に対応する「奥の院」には岩窟・絶壁型の
  仏堂が残っている。

7.統一新羅8世紀中頃に造営された石窟庵(世界文化遺産)は、石窟寺院を掘削
  できない新羅の人々が石窟寺院に憧れて造った人口の石窟。石窟庵が所在する
  慶州の南山には岩窟型の仏堂も多数分布する。

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主題の設定と申請範囲

8.時間軸からみた「主題の設定と申請範囲」
  「紀伊山地の霊場」などでは神仏習合を一つの主題としている。神仏習合は
  平安・鎌倉時代以降の比較的新しい時代の歴史遺産である。これに対して、
  山陰の山岳仏教では二重構造の縁起のうち、時代の古い6~8世紀に照準を
  あわせるべきであり、それによって、日本古来の山岳信仰と最初期仏教の接触
  による「雑密の成立」あるいは「修験道の起源」の諸相を解明する。

9.空間軸からみた「主題の設定と申請範囲」

   A案:「重要文化的景観」として
    主題「大山・(隠岐)・三徳山の雑密的行場とその文化的景観」
    範囲「三徳山+大山隠岐国立公園(蒜山&三瓶山地区は除く)」
  
   B案:「連続性のある資産」として
    主題「最初期仏教との接触に係わる山陰の山岳信仰遺産と文化的景観」
    範囲「隠岐の真言系寺院+島根半島の鰐淵寺・清水寺+伯耆の大山寺・上淀廃寺
       +三徳山+因幡の摩尼寺・不動院岩屋堂・千手院+etc.」     

10.「山陰の山岳信仰」の場合、朝鮮半島から伝来した最初期の仏教が、先史以来の
  山岳信仰と接触して形成された「雑密」的行場と係わる文化遺産(文化的景観)
  に焦点を絞り、大陸との文化的交流の足跡を辿る。

    ①センと読む山の分布 (隋唐以前南朝の仏教の影響?)
    ②岩窟型仏堂と石窟寺院との系譜関係 (北朝・隋唐~新羅~山陰?)
    ③縁起の二重構造と霊山のゾーニング
    ④祭祀対象(蔵王権現・地蔵菩薩・仏舎利信仰など)

  以上の課題について「顕著な普遍的価値」を解明できるならば、
  世界文化遺産への途が開けないわけではない。

わたしの世界遺産構想 -20年計画のプロセス

 )三徳山を山岳信仰に係わる「重要文化的景観」エリアに選定。
 )大山・隠岐国立公園と三徳山「重要文化的景観」エリアを重点調査研究地区として、
   自然(地質・地形・生態・景観)と初期仏教・山岳信仰に係わる調査研究を
   10年計画で進める。
 )上と併行して、「連続性のある資産」群の調査研究も進める。
 )「顕著な普遍的価値」を証明するためには、初期「雑密系」山岳仏教の国際的
   位置づけが必要。南アジア・中国(南朝・北朝・隋唐)・朝鮮半島(百済・新羅)
   との系譜論的比較研究がとくに重要な位置を占める。
 )以上の調査研究を踏まえた上で、文化遺産/自然遺産の暫定リスト入りを申請。
   (たぶん10~15年後)
 )世界遺産登録まで20年間の持続的研究・活動を覚悟すべき。
 
 以上の構想に対して、奈文研の平澤室長からコメントを頂戴した。まず、)の「重要文化的景観」エリア選定については、三徳山は名勝に指定されているのであえて重複させる必要はないだろう。とくに重要なのは)と)の調査研究で、その成果によっては暫定リスト入りが可能になることもあるかもしれない。
 鳥取県の世界遺産構想について話をもちかけるとネガティブな反応しかなかった室長が、はじめてポジティヴなコメントをされたという点では画期的な成果をもたらしたシンポジウムと言えるかもしれない。

 鳥取県が主題と申請範囲を組み替えて、世界遺産への取り組みを持続されることを心から祈っております。

  1. 2010/03/05(金) 00:00:37|
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