16日、ヒアリングの直前に御所野縄文博物館の高田館長から電話が入った。訃報であった。林謙作先生が亡くなられたとのこと。葬儀の情報はFAXでお送りいただくことになり、わたしは東京のホテルで弔電を打った。高田さんは18日の葬儀に参列されるとのこと。
林謙作先生(72)は、元北海道大学の教授で、縄文考古学の第一人者。御所野遺跡の整備委員会委員長で、あの遺跡の整備をコントロールされた方である。だから、御所野での想い出ばかりが残っている。それも、夜の酒席での想い出が大半を占めるのだが・・・
破天荒な研究者であった。この点、故江口一久先生とよく似ている。話し出したらきりがないほど、酒にまつわる逸話が残されいるし、わたしはそれを目の当たりにもした。そんな酔っぱらいの姿とは対照的に、文章はいつも瑞々しかった。『季刊考古学』に連載されていた縄文考古学の連載を初めて読んだとき、名前も素性もよく知らなかったので、大学院生が書いた文章なのか、と思ったほどだ。すでにお歳を召されていたが、研究に対する純粋な気持ちをずっと失われていないことをその文章が訴えてくる。実際にお目にかかってみると、なかなか素っ頓狂なお顔をされていて、ちょっと面食らってしまったが、純粋な反骨精神の持ち主であるのは予想どおりであった。
このような研究者は減っていく一方だ。ほんの少し前まで、あちこちの大学にこういう名物教授がいたものだが、いまは、さて、だれがそうなのか。管理は個性を潰してしまったのか。
林先生には「反骨精神」という言葉がとてもよく似あう。世俗のことには無頓着で、地位や名誉にもこだわらない。管理職に就くのを嫌い、歳をとっても好きな研究に打ち込む。
そうありたい。そうでなければいけない。いつのまにか管理職に身をおいて、気づいたら会議だらけの日々が過ぎていく、そんな自分になりたくない・・・なってはいけない。他人の人事を管理し、人の一生を左右するようなタクトを振るう人生とはおさらばしなければ。
林先生の想い出に浸りながら、そんなことばかり考えている自分に、ふと気がついた。
謹んで、林謙作先生のご冥福をお祈りいたします。
- 2010/03/19(金) 00:00:51|
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