ジェイムズ・テイラーっていう人はとんでもない大男です。ジャイアント馬場みたいだった。ギターが上手な人には大男が多いんだって話、どこかで書いた記憶がありますけど、手のひらが大きいってのは、ほんと羨ましい。ジェイムズの手のひらを見たわけじゃありませんけど・・・でもね、ギター、上手いですよ。ジャズのコードを開放弦を使ってうまく弾いてます。上手い人はね、変則チューニングなんて使わないんだ。ベックもディアンスもエマニュエルも、原則スタンダードでしょ。いま書いた3人が現代ギターを代表する各分野の突出した弾き手ですが、シンガーソングライター部門ではジェイムズ・テイラーがそれに当たります。そもそもシンガーソングライターで「ギターが上手い」と絶賛される人なんて、ほんと少ないんだけどね。すぐに思い浮かぶのはブルース・コバーンぐらいかな? かれは変則調弦の名手で技巧的派ですが、J.T.が負けているということはありません。なかなか真似のできないコードワークとフィンガリングです。
もちろん作曲も素晴らしい。ジャズの要素がいっぱい詰まったフォーク調の曲が多くて、左隣でいちゃついていた社長さんは「フォークだからな・・・」と蔑んでましたが、そんなに単純じゃない。ご存じのように、パット・メセニーは「ジェイムズ」という曲をかれに捧げています。わたしはアンドリュー・ヨークの曲を弾くたびに、ジェイムズ・テイラーのコード進行とよく似ていると思っておりました。両者の共通は、たとえばDキーなら、D→C→B♭maj7→A7なんていう1音もしくは半音下がりの進行を多用するところです。普通はベース音だけ下げていくんだけど、二人ともコード全体を下げていく。この場合、CはA7、B♭maj7はDの代理コードと考えればよいのでしょうが、響きは全然ちがいます。格好いいですよね。初期のニール・ヤングもこういうコード進行をよく使っていました。D→C→G→A7とか、D→F(Am)→C→Gなんて進行は、日本人の頭のなかにはなかったから新鮮でした。「老人」なんて曲がその代表で、ニールの傑作ですよね。

一方のキャロル・キングはJ.T.以上のヒットメーカーです。よりポップだからヒットするわけです。「君の友だち」の出だしがGキーでFm7♭5→B7と入るのには驚いたけど、これはいわゆるⅦ→Ⅲ7のパターンで、ビートルズやバカラックが多用してますからヒット作の定石と言えないこともない。声はとんでもないハスキー・ボイスでキュートなんだけれども、あんまり高い音はでないみたいでした。声では断然ジェイムズが圧倒していましたね。武道館全体にジェイムズの声が響き渡り、その低くて太くて暖かい歌声に癒されました。
もうひとつの見所は、もちろんザ・セクションですが、期待していたダニー・クーチのギターはいただけませんでしたね。ジェイムズは上手いけど、クーチは下手だった・・・なにぶん前夜にベックを聴いてましたからね。彼我の差たるや、どないもこないもならんというか、極端な話をすると、ジェイムズ&キャロルのコンサートにクーチは必要なかったのではないかな?? ロビー・コンドールというキーボード奏者が加わっていたので、かれにソロをとらせたほうが音楽の質は高まったでしょう。クーチは同窓会の重要なメンバーではあったけれども、ミュージシャンとしては疑問符がついてしまった・・・スタジオ・ミュージシャンとしてリトナーやラリー系の若いギタリストが台頭してきた80~90年代にクーチの役割は終わってしまったのかもしれません。まっ、いいか!? 友情と記憶は音楽に優るんだな、リユニオンだもんな。(続)
- 2010/04/27(火) 13:14:36|
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