母の日なんだけど、奈良に戻らなかったので、カーネーションをもっていけない。でも、買いました。牛乳パックに水を浸して花束をさしこんで、養生中です。赤い花はカーネーションじゃありません。芍薬です。芍薬は母の好きな花だったように記憶している。赤いカーネーションより落ち着いてみえたので、こちらにした。早くても、移動は次の金曜深夜。特養にもっていけるのは土曜日になるから、まる1週間先のこと。牛乳パックの水を毎日換えればもつだろうか。

日曜日によく寝ました。自転車に乗って蕎麦を食べにでかけ、携帯を忘れていることに気づいた。いったん帰宅し、アマゾンで取り寄せていたVHSビデオの梱包を解いた。映画の題名は「青いパパイヤの香り」と「シクロ」。監督はいずれもベトナム系フランス人のトラン・アン・ユンです。たしか、いま「ノルウェイの森」を撮影しているはずなんだけれども、どうなっているのだろうか。村上春樹が映画化を許したということで話題になったのが2年前??
ことの発端は2月27日の「
大山・隠岐・三徳山」シンポジウムまで遡る。あの日、わたしはスピーチで大すべりしてしまった。大山・隠岐・三徳山よりも、ハロン湾の研究に熱中して時間を忘れてしまったのである。その後、ある教員から感想のメールが届いた。
ベトナムの家船生活者のお話のなかで出てきた海からそそり立つ
岩山と家船の写真を見て、前に、名画座で見たベトナム映画を
思い出しました。「夏至」というタイトルで、3人の姉妹のお話です。
カフェを営む長女の夫(大学教授)が家を空けて愛人と住む家が、
まさにその景色の中の家船でした。
あの映画は、ベトナムの風景や文化をふつうに語っていたのだと
言うことがよく理解できました。

3月2日に早くも「夏至」のDVDを注文し、その週末には例の
大型テレビでそのDVDをみている。一度目は、ただただ美しい印象派の絵画のように体内を映像と音楽がすり抜けていった。それは、ドラッグ混じりの清涼飲料水のようなものだったのかもしれない。ベトナムの日常をこれほどまで見事な映像で表現できる人物の能力にただただ恐れ入った。ただし、ストーリーが掴みにくい。だから、深夜になると字幕版にしてBGMのように毎晩流していた。ヴェルベット・アンダーグラウンド(ルー・リード&ジョン・ケイル)のカバー曲を聴いているだけで、ずいぶん癒される。3度ばかり映像をみて、ストーリーは十分理解できた(今でもよく分からないのは兄-妹の疑似恋愛関係?)。砕いて言えば、美人の3人姉妹をめぐるちょっとしたラブ・コメディではないか。美貌の姉妹が男たちに翻弄される。普通ありえないんだけどね。若くて美しい女にはだれもかなわない。ふりまわされるのはいつでも男どもであるはずなんだけれど、「夏至」の設定は真反対だった。
ハロン湾の筏住居は「大学教授」が「若い愛人」と暮らす家。小さな子どももいる。すでに4年間、二重生活を送ってきて、わたしは疲れた。耐えきれない、と言って、教授はハノイの妻に愛人のことを告白する。その妻も、夫の留守にサイゴンから出張してきているビジネスマンと浮気しているのだが、夫の告白に彼女は泣きわめいた。泣きわめいたあげく、夫の愛人の存在を受け入れ、「わたしはあなたの妻のままでいたい」と吐露するのだった・・・
「夏至」に感服したわたしは、トラン・アン・ユン監督の作品を探した。かれは映画を3本しか撮っていない。わずか3本の映画で、国際的名声を確固たるものにした希有の人物である。残る2本が「青いパパイヤの香り」と「シクロ」。DVDを探したが、中古品ばかりで、値段がえらく跳ね上がっている。幸いVHSの中古品もあり、こちらは安く入手できる(「青いパパイヤ」なら送料込¥ 401)。いまやVHSなんてものを視られるのは、世界ひろしといえども、わが鳥取の下宿だけじゃないか、という時代になってしまいましたね。少なくとも、奈良の大型地デジではVHSなんか視られない。貯まりにたまったW杯関係のビデオなど、みな廃棄物にされてしまいましたよ。
だから、鳥取にいるあいだに「青いパパイヤの香り」と「シクロ」を視るしかないんだ。どちらから視るか悩んだんだけれども、「シクロ」を手にとった。トニー・レオンを主役に据え、ベネチア映画祭で金獅子賞に輝いた第2作である。出演者は「夏至」と重なる。トニー・レオンの愛人で売春を強要される美女は、「夏至」の3人姉妹の末っこで、実生活ではトラン・アン・ユン監督のパートナーらしい。筋書きは、貧困にあえぐ「シクロ」という名の
シクロ漕ぎ少年がヤクザ世界にかかわって、何もかも破綻していくという、やや暗い内容。暗黒街の性と暴力に傾斜しすぎた感がある。じつはアマゾンでは金獅子賞の栄光と相反し、「シクロ」が3作のなかで最も評価が低いのだが、たしかに内容はきつかった。CDをかけなおす気分で何度も映像を視たくなる「夏至」に軍配をあげたい。
デビュー作「青いパパイヤの香り」の評価は「夏至」とほぼ同等なので、たぶんもう少し楽しめるだろう。
- 2010/05/10(月) 13:05:45|
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