芝棟の植栽 建築緑化の全体コンセプト 拠点施設の周りにめぐらせた「パーゴラ」及び敷地の随所に、多様な植物を植えることで、「建築の非建築化」及び「生物多様性の促進」を目指した(↑)。四季折々の花と果実をあしらうことで見た目にも楽しい植栽を計画する。植物は一部を除いてなるべく多年植物とし、植え替えの手間を省いた。パーゴラの植栽に加え、屋根頂部に茅葺き屋根をつくり棟に植物を植える「芝棟」(↓)をつくり、このブロッサム・ギャラリーの「顔」とする。
パーゴラには、その全体に常緑の蔓性植物をあしらい、四季を通してサス研施設を緑で包むこととする。建物西および建物南西の水路側は足場が斜面であるためパーゴラ内部を歩けないので、観賞用植物を基本とした。逆に中を歩くことのできる建物北および最も人の往来の多い建物東は、果実のなる植物を中心としたので、見て楽しむだけでなく「採って」「食べて」も楽しめる。また、ウッドデッキの前面・側面にあたる部分には、夏に日差しが直接室内に入るのを防ぐため、ゴーヤ・ひょうたんを植える。いずれも1年草であり、冬になると枯れて室内に日差しが取り込めるようになっている。

オニユリの芝棟。群馬県長野原町
(参考画像出典:亘理俊次 『芝棟-屋根の花園を訪ねて-』 八坂書房)
芝棟の植栽と無管理計画 芝棟(地方により草棟、クレグシ――クレ=土、グシ=棟――とも言う)はその名のとおり、茅葺き屋根の棟に芝土を乗せ、さらにそこにイチハツ、ノカンゾウ、ユリなどを植えるものである。こうして土と芝で棟をおさえ、植物の根によって土を固めることで、茅葺き屋根のなかで最も風雨に弱い部分である棟を守る。このため、芝棟に植えられる植物には根張りのよいアヤメ、ユリ類などが選ばれることが多い。とはいえ、
時間が経つとともに様々な植物が根をおろし、予期せぬ風景を生むのが芝棟の魅力であり、あえて管理せず「ほったらかし」にすることで、力強く美しい芝棟がつくられる。審査委員(事務局長)のコメントによると、「維持管理が不可能」だそうだが、これは大変な偏見であることをここで指摘しておく。
芝棟を拠点施設の屋根頂部に設ける。
「ブロッサム・ギャラリーⅤ」―芝棟の項で触れたように、屋根の上部にだけ茅葺き屋根をつくり、その茅葺きの内側にプランターを設ける。ここに植える植物については、「乾燥に強く、根茎がしっかりしていること」「鳥取らしさが感じられること」を考慮し、1つは「ラッキョウ」と決めた。ラッキョウは秋に赤紫色の花を咲かせるユリ科(ネギ科もいわれる)多年草植物で、ラッキョウづくりがさかんな鳥取東部ではひろく親しまれている植物である。他には、シロツメクサ(クローバーとも呼ばれるマメ科1年草、開花:春、花の色:白)、ノカンゾウ(芝棟に常用されるユリ科多年草、開花:夏、花の色:オレンジ)を植える。シロツメクサは1年草だが、大学構内・ビオトープの随所で毎年見られており、芝棟にも根付いていくことが期待できる。芝棟は、パーゴラの植栽とともに四季を感じさせてくれることは勿論、ブロッサム・ギャラリーの「顔」として親しまれていくことだろう。(きっかわ)
- 2010/06/17(木) 13:07:07|
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