
鳥取環境大学は開学10周年を迎え、6月19日(土)は記念式典と講演会が催されました。
記念講演会は、日本ジオパーク委員会委員長の尾池和夫さんが「変動帯に生きる」と題して、講演されました。地学・天文学から俳句までさまざまな要素を絡めた講演内容で、ときおり会場からは笑いが起こり、盛況のうちに無事講演会は終了しました。
ところで、この記念式典・記念講演会にあわせて、『鳥取環境大学紀要(第8号)』開学10周年記念号が刊行されました。10周年記念号とあって、これまで違う2部構成となっています。第一部は論文・報告、第二部は沿革・組織図や教育・研究活動の軌跡などが掲載されており、厚みのある一冊となっています。
ASALABからも以下の2論文が掲載されています。
1.岡垣・浅川「仏を超えた信長 -安土城見寺本堂の復元-」(p.31-51)
要旨: 織田信長が創建した安土城見寺は、16世紀後期の安土城築城の際、近隣より本堂を移築し、その2階に「盆山」を祀った寺院である。創建当初は真言宗の寺院であったが、17世紀中期に臨済宗に改宗した。19世紀中期には火災に遭い、三重塔と仁王門など一部の堂塔を残してほぼ全焼してしまう。本稿は、その火災で廃墟と化した見寺本堂を復元しようとする試みである。見寺本堂にかかわる文献・絵図史料はきわめて少なく、復元のための基礎的操作は遺構そのものの分析以外では、類例仏堂からの構造・細部の引用に頼らざるをえない。本稿では移築前をA期、創建当初をB期、改宗後をC期に時期区分し、各時期の意匠と構造を復元する。
【キーワード】安土城、見寺、本堂、織田信長、盆山、中世仏堂、復元
2.大給・今城・浅川「オホーツク文化の船形住居 -トコロチャシ跡遺跡オホーツク文化9号住宅跡の復元-」(p.69-86)
要旨: 道東オホーツク海沿岸の北見市常呂町には、国指定史跡常呂遺跡を中心に3千基以上の竪穴住居跡が地面に凹みを残した状態で確認されている。現在、史跡指定・整備の準備を進めている近世アイヌ期のトコロチャシ跡遺跡でも、下層にあたるオホーツク文化期の焼失竪穴住居が複数見つかっており、本研究は同遺跡のオホーツク文化9号住居(c期)を復元する試みである。まずはオホーツク文化の住居に関する研究史を整理した上で、9号住居の遺構を分析し、その形状の特徴から同期の住居跡を「船形住居」と命名する。上屋構造の復元にあたっては類例遺構に残る建築材料の痕跡を集成し、民族学的な知見を加えて模型制作と基本設計をおこなった。最後に、今回の復元案と従来の復元案を比較検討し、今後の課題を整理した。
【キーワード】オホーツク文化、トコロチャシ跡遺跡、船形住居、四脚構造

このほか、教授が「環境情報学研究科のあゆみ」(p.166-167)という大学院紹介の文章を書かれています。研究科長としてのお仕事だったようです。今日の式典・講演会の際に配布されたとのことですが、どこかで見かけたらぜひ手にとってみてください。(部長)
最後に図書の基礎データを掲載します。
書名: 『鳥取環境大学紀要(第8号)』開学10周年記念号
発行日: 2010年6月19日
発行者: 鳥取環境大学情報メディア・紀要専門委員会
印刷所: 勝美印刷株式会社
ISSN: 1347-9644
- 2010/06/23(水) 00:00:25|
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