
雨がしとしととふりそそぐ6月25日(金)、私たちは倉吉へと足を運んでいました。
本日の主な調査対象は、倉吉市の本町通商店街です。谷川ジローの『遥かな町へ』の舞台にもなった、看板建築の立ちならぶ本町商店街は、打吹玉川重要伝統的建造物群保存地区(重伝地区)の西側に位置しています。
大学を出発したのが16時、そこから車を走らせ倉吉に到着したのが17時で少し遅めのスタートとなりましたが、さすがは夏至が過ぎたばかりの初夏、まだまだ外は明るく、天候には恵まれなかったものの、静かで穏やかな小雨が打吹玉川の歴史あるまちなみによく似合って、なかなかいい雰囲気でした。
さて、商店街へ着いたら、まずはジェラート屋さんで休憩(先生は前夜のデンマーク戦でぐったり状態で、早く休みたかったようです)。美味しいジェラートをいただきながら、店主さんに最近の商店街の様子や、観光客が増えているかなどなど、先生がさっそくインタビューなさっていました。商店街について教えていただくなかで、特に気になったのは、「看板建築」という言葉に対しての住民の方がたの反応でした。どうやら、あまり評判が芳しくないようなのです……。「町屋の外観を隠している」という意味で看板建築はネガティブな意味合いで捉えられることがしばしばあり、そのことで住人の方が少々「怒っている」と店主さんは言われます。わたしたちは看板建築に昭和レトロの趣を見出しおり、決してそのようなネガティブな意味を表したくて使っているわけではないのですが、実際に住人の方が良い思いをしていないのであれば、なにか別の呼び方を考案することも必要かもしれません。

↑まちのジェラート屋さん
軽い休憩を終えたら、いよいよ本町商店街・元アーケード街の探索へ。
このアーケード(「続きを読む」に写真あり)は、昭和37年~38年に架けられていたものです。このころ、全国的に看板建築が流行するなかで、ここ本町通商店街でも看板建築のまちなみが誕生しました。商店街は現在、空き家、空き地など空洞化が進み、これからどのようにまちに人を呼び戻し活性化していくか、考えられている最中です。アーケードについても、老朽化および重伝地区選定への準備のため、平成19年に撤去する方針が決定され、現在ではその姿を見ることはできません。看板建築は「町屋の正面を看板など箱状のもので覆い、正面だけ近代的なコンクリート建築に見せる」建築のことです。

↑看板建築 ↑昭和を感じさせる看板

アーケードのあった風景
すでに撤去済みのアーケードですが、写真(↑)の通り、アーケードは昭和を感じさせ、いい雰囲気を醸し出していました。
わたしたちは、『遥かな町へ』で描かれた風景を軸に、撤去されたアーケードを部分的に復元し、その中に看板建築を復元したり、昭和の看板などのグッズを集めた「昭和レトロ街」をつくることで、伝統的な町屋および看板建築を保存しつつ観光の目玉とする構想をいまあたためています。浅川研究室はこれまで、倉吉・打吹玉川地区でさまざまな研究活動を重ねてきており、この「昭和レトロ街」構想も、もとは平成18年度のアーケード商店街の町並み分析と再生計画で示されたものでした。
今日、商店街でお見かけしたお店の方や、以前調査に協力していただいた顔見知りの店主さんに意見をうかがうなかで、「アーケードがあった方が趣があってよかった」という声も聞くことができました。昭和レトロ街創出までは、まだまだたくさん調査研究を重ねる必要があり、遠い道のりではありますが、とても励みになる言葉です。
さて、ひととおり本町商店街内や、周辺の町屋を見てまわった後は、たい焼き屋さんで今後の調査活動について、ミーティングです。以下に、これからの研究課題をまとめました。
これからの研究課題1.「昭和レトロ街:遥かな町へストリート」のベースとなる漫画『遥かな町へ』(谷川ジロー著)と実際のまちなみを比較し、商店街のどこが漫画に描かれているか把握する。また、漫画の中の風景と、平成18年度の「倉吉本町通商店街の町並み分析と再生計画」で記録された風景、そして現在の風景を比較する。
2.本町商店街および周辺で見つけられる「昭和」を感じさせる看板・置物の位置や数を調査し、データベース化する。
3.すでに倉吉市などが実施している「昭和レトロ博物館」など、現状での取り組みの内容や、実施されている施設を調べる。
4.いま空きスペースとなっている、商店街内の空き地や、空き家などを活用して、特殊な施設ををつくり商店街活性につなげられないか、計画する。
この先、ほかにも研究課題はどんどん見つかっていくことと思いますが、地道な調査研究を重ねていくことで、このまちなみの良さを最大限活かした「遥かな町」が創出できたらと思っております。(きっかわ)

現在の風景(上の写真と比較してください)
- 2010/06/27(日) 13:10:19|
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