前半のブラジルには舌をまいた。シュートのような速いパスを難なくトラップし、人とボールが猛烈なスピードで動いていく。こんなサッカーをされたら、アルゼンチンだろうが、ドイツだろうが、スペインだろうが、どんなチームも相手にならない。それほど驚異的なサッカーをブラジルはしていた。ブラジルがJ1のチームとすれば、オランダは高校生のチームに思えるほどの差が両者にはあった。
後半が始まって10分ばかりすると、カナイチヤのカウンターに坐っていたマニア2名が席をたった。
「もう、試合は決まりだわ・・・」
わたしも似たような気持ちでいたのだが、こんな凄い試合の観戦を途中で放棄する気が知れない。できれば90分と言わず、120分みたいものだ。そう思っていた矢先、ペロのオウンゴールで1-1に。あれはたしかにオウンゴールだが、事実上はスナイデルの技ありゴールというほかないだろう。
ブラジルはここで動揺する必要はまったくなかった。所詮、1-1ではないか。120分かけて勝ち抜けばよいだけのことである。ルシオやカカなど、大舞台になれているスターたちは冷静だったが、ロビーニョなど左右のサイドにはっている選手を中心に「我を失う」姿が目立ち始める。前半から西村主審の判定にくってかかるブラジル選手がいて、興奮を隠しきれない状態が1-1の時点からさらに増幅していった。その、獣のような表情を眺めながら「ドーピング」という言葉が頭をかすめた。
一方、オランダは、あの憎たらしいほどクールな監督をはじめ、選手全員が冷静に試合を進めていた。そして、コーナーキックからスナイデルが2点目をゲットする。ブラジルはここでも慌てる必要はなかった。時間はまだ20分以上残っていたのである。ブラジルの力をもってすれば同点にすることは十分可能であった。しかし、ブラジル選手の精神的動揺は、わたしたちの想像以上に大きくなっていた。その結果が、あのメロの赤紙である。ここで、試合は終わった。
冷静な方が勝つ。いくら実力があっても、怒って我を忘れたらすべてを失い、敗北するのだ。この歳になって、ようやくそんな当たり前のことに気付いた自分自身に呆れつつ、ブラジル代表という世界最強のチームの自滅に目を覆わざるをえなかった。
試合は終わったが、あまりに衝撃的な”凄い”試合の結末に呆然となって、カウンターを立てなかった。熱いコーヒーを1杯注文し、それを飲んだら少し落ち着いた。そして、わたしは車にのった。高速経由で奈良を目指したのである。深夜の3時すぎ、西宮名塩のパークで休憩すると、オランダvsブラジル戦の録画(BS2)を大型TVで放送していた。ちょうどスナイデルがヘッドで2点目をとるシーンだった。
それにしても、スナイデルである。まるで忍者のようなMFだ。メッシやカカやロナウドのような派手さはない。しかし、この3人よりもはるかに決定的な仕事を今W杯でスナイデルはしている。最終的にはスナイデルとエジルの戦いになるかもしれない・・・
奈良の家に戻ったら早朝4時半。ウルグアイ対ガーナ戦の後半が始まる直前だった。延長の前半途中まで目を凝らしていたが・・・気付いたらソファで目が覚めた。試合は終わって、国営放送の画面はニュースに変わっていた。スアレスの「歴史的なハンド」とギャンのPK失敗をみることができなかったのである。一眠りしてから、録画を見直したのだが、延長後半14分過ぎに放送局が総合からETVに変わってしまい、劇的な幕切れをまだみていない。まぁ、ユーチューブがあるからね・・・
さぁ、ドイツ対アルゼンチンです!
- 2010/07/03(土) 21:33:18|
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