チャックさん合流! 8月17日(火)。鳥取のお盆といえば、しゃんしゃん祭です。昨日はタクオさんときっかわさんが踊り子として参加しました。この祭りは雨乞いの踊りでして、おかげで昨晩、鳥取市内は一時の雨に潤い、現場の遺構は湿気を含んだベストコンディションです。今日は県市の文化財関係者(Nさん、Kさん、Tさん)が視察にこられ、現状と今後の作業ついて意見を頂戴しました。また、先週予告したように、17日午後から3日間、チャックさんが現場にこられます。ホカノさんに続くOBの訪問に、今日の発掘調査は大にぎわい!
この日の主な作業は、昨日うまくいかなかった実測用グリッドの再設置、A・B区の掃除、C・D区の表土はぎ、遺構検出です。実測用グリッドの設置については、測量士補の資格を持つ部長さんの協力を得て、昨晩、現場のGPS情報を平面直角座標(国土座標系)に変換し、X-Y座標を求め作図しました。午前中はそのデータをもとに、今後いつでもグリッドが引けるようトータルステーションの器械設置をおこない、グリッド上の2点を測距し測量鋲を打ちました。また、今週末には現場の写真撮影をすることが急遽決まったので、グリッド設置と平行してA・B区の掃除です。
作業を開始して1時間が過ぎようとしたころ、先生が県市の方々とともに現場にこられました。

まずは現場の現状について説明し、いくつか貴重な意見をいただきました。なかでも本日の大事件だったのが、礎石の根石と思われていた黒色土器が、じつは瓦器ではなく見事なほど黒光りする黒竹の根であることが判明したのです!! 一同仰天し、先生も目を白黒させます。しかし、これによって奥の院の中世創建説が崩れたわけではありません。表土をめくって出てきた五輪塔は中世のものであり、さらに南トレンチの基壇土(タタキ)の外側(黒灰土)でみつかった数点の平底土器は、薄い須恵器と思われるので、この遺跡で人の活動がおこなわれた始まりは古代にまで遡る可能性があるのです。これについては、一度専門家に鑑定してもらう必要があるでしょう。その後は、岩窟部のトレンチの縄張りについて指導していただき、今後の作業のアドバイスをいただきました。

県市の方々と立岩でお別れし、現場で昼食を取っていると、ついにチャックさんの登場です。相変わらずの笑顔に癒されます。先生と握手をされ、再開を懐かしんでおられました。午後からは、チャックさんをふくめて、まずは全員で五輪塔の供養。送り火です。今回は先生がネパールで購入された線香を焚きました。東大寺の和ろうそくに火を灯し、1人ずつ線香に火をつけ合掌。

その後は、A区・B区のL字トレンチとメイントレンチの間に設置していたベルトをはずし、表土をバチではいでいきます。また、C区の表土はぎも開始し、さっそくチャックさんもこれに参加します。初めての本格的な発掘調査にチャックさんも興味津々。「楽しい、楽しい」と連呼します。C区は露出した基壇の縁石が列を成しており、この現場の中で比較的残りがよい区画です。これに対応する礎石が出てくれば万々歳なのですが、表土をかいてもかいても、それらしいものは出てきません。しかも、ところどころからまた五輪塔が出てきては饅頭の行く手を阻みます。下手に叩いたりでもしたら何が起こることやら。慎重に掘り進めますが、表土の下はデコボコとしたまだら状のタタキがひろがってます。ところどころ礎石の抜き取り痕や土坑にもみえるのですが、現段階ではまだ判断できません。そんななか、五輪塔の近くを掘り下げていた先生が歓喜の声をあげます。なんと綺麗な平坦面を持つ礎石を掘りあてました。しかも中央に濃く正方形の柱根の圧痕がみられます。他の礎石とも対応しそうです。ただ、これまでタタキと判断していた土層よりもかなり低い位置から出てきたので、これは下層遺構のものかもしれません。と言うことは、この「奥の院」は何期かに分かれる可能性が浮上します。とりあえず今日はここまで。きりの悪いところで終えるのが発掘調査のコツなんだから。

今後、今回検出した礎石のレベルまで一部掘り下げて、対応する礎石を探してみる予定です。ナゾがナゾを呼ぶ発掘調査。常にさまざまな可能性を同時に推測せねばなりません。正直、難しいことがいっぱいです。しかしその反面、礎石を検出したときの喜びは一塩。さて、次は誰が礎石を掘り当てるのか!もちろん作業は慎重に・・・。(Mr.エアポート)
- 2010/08/19(木) 02:46:48|
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