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鳥取環境大学 環境情報学部 建築・環境デザイン学科 浅川研究室の記録です。

摩尼寺「奥の院」発掘調査日誌(ⅩⅡ)

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下層の凝灰岩基壇化粧を検出!!

 8月19日(木)。この日の作業は、週末の写真撮影に向けてトレンチ全域の上層遺構を検出するのが課題。写真を撮影する際は、三和土(タタキ)と黒灰土の境目がくっきりと写るように、黒灰土側を5センチほど掘り下げなくてはなりません。昨日に続き、チャックさんが現場の応援に。本当に助かります。

 さて午前中、先生がA区L字トレンチの遺構検出をおこなっていると、早くも礎石の抜き取り穴と思われる人頭大の楕円形状の窪みがあらわれました。同時に窪みの中から2枚の銭貨が出土。残念ながら両方とも劣化が激しく、表面に何が書いてあるかは読み取れません。しかし、窪みの中からでてきたので廃絶時に伴い埋められたのは明らかです。見た目は以前から出てきている「寛永通宝」のようですが、前にも示したように寛永通宝は、古寛永(1636~1659年)と新寛永(1668年以降)に分かれます。今回の銭貨は一体何なのか、遺物洗浄後の結果が楽しみです。
 一方、18日に畦の撤去が済んだBトレンチの長形大土坑は、エッジをより明確にするため土坑側を5センチほど掘り下げました。すると、この作業に当たっていたエアポートが、なにやら凝灰岩の平坦な石を発見。表面は平なのですが、やや凹凸があり土坑内から出てきたので、これも昨日チャックさんが発掘した「ひっくり返った礎石」と同じく、廃棄されたものと判断され、周囲を掃除していきました。ところが、作業をすすめていくと、ほぼ同じレベルで土坑いっぱいに凝灰岩の切石がひろがっているじゃありませんか!!

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 というよりも、土坑内に納まってはおらず、廃棄された五輪塔の下やB区上層のタタキ面などの下にくい込んでいるのです。先生は、凝灰岩切石が面的に並んでみつかったことについて、「下層(すなわち古代)の建築の基壇化粧がほぼ完全な形で残っている可能性が高い」と推測されております。先日からC区に凝灰岩の礫がいくつも出てきており、先生は「おかしい、何かおかしい」とおっしゃっていました。さらには、三和土外側の土層からは須恵器と判断される土器片もみつかっており、平安時代以前に遡る遺構であるように思われますが、上層遺構の撮影に向けた清掃作業を中断させた点でスケジュールに狂いを生じさせてしまいました。とはいうものの、「山陰の密教寺院は円仁とは関係ない」という専門家の意見すらあるぐらいでして、摩尼寺の起源が中世なのか古代なのかも科学的には実証されていなかったわけですから、これが古代建築の基壇だとすればたいへんな発見です。再び先生の
ご意見を拝借しますと、「下層の調査で古代の遺物がでてくれば、それで十分だった。少なくとも行場としての奥の院の歴史は古代に遡ることが立証できるのだから・・・まさか、古代の建築がでてくるなんて???」。
 とりあえずは、作業を土坑の掃除に切り替え、精査は来週以降にもちこしです。

 昼食後、タクオさんが現場に合流。本格的な数珠をさげ、摩尼寺の線香を片手に登ってこられました。なんでこんな装いなのかと申しますと、どうやら「身内に良くないことが起こり、ひょっとすると近い将来、あらぬ疑惑の的になりかねない!?」とかなんとか・・・というわけで、全員そろったところで、この日も五輪塔供養をおこないました。その後は午前の続きで、全区域の上層遺構の掃除とタタキの際を明確にしていきました。それにしても、女子学生と男子学生の作業の出来は歴然ですね。女子の掃除は丁寧で、写真撮影に向けて抜群の出来です。男子は、パワーとスピードがあって広範囲の掘り下げには強いのですが、掃除は苦手な印象です。かく言う私もなかなかの荒業で・・・。女子学生のように、遺構を丁寧に掃除しなければ。
 しかし、思った以上に掃除は進みません。女子学生が1日かけて完璧に掃除できたのはD区のみ。あとA・B・C区があります。何がなんでも土曜日までに掃除を済ませなければなりません。他にも礎石の表面を洗ったり、ビニールシートをしまったり、トレンチ用の縄やラベルをはずすなど、やることはいっぱいあるのです。明日が正念場で、どうなることかと心配していたのですが、なんとチャックさんが追加でもう1日参戦されることになりました。心強いかぎりです。(Mr.エアポート)

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  1. 2010/08/21(土) 00:21:14|
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