岩盤に穿たれた二つのピット 9月13日(月)。12日に続き下層遺構の検出をおこないました。昨晩、実測図の縮図を用いて上層の柱配置を検討しましたが、なかなかまとまりません。表土上からみえていた石が動いている可能性ももちろんありますが、実測図のほうにも問題があり、隣り合う実測図のトレンチのラインがずれていたりして、手ばかりの誤差を無視できない状態です。先生とも協議の結果、後日トータルステーションで、礎石等重要遺構の正確な座標を計測しなおすことになりました。
まずは気になる柱配置を確定するため、昨晩検討した結果にもとづき、礎石がありそうなところを掘り下げていきました。この日は、いまのところ礎石列として最も注目しているC区の礎石列に狙いを定め、その延長線上を調べました。この礎石列は、3石が1.9mスパンで東西軸線上(正確には5度ほど北にふれる)に並んでおり、山側斜面にあるタタキ上の礎石とも対応しています。連続する礎石をもとめて、平坦地中央(C区とA区の境)の茶褐土層を少しずつ慎重に下げていきました。しかし、礎石らしいものはまったくみつかりません。この近くに大きな切り株があるので、この切り株によって礎石やその痕跡が撹乱されてしまった可能性が考えられます。タタキそのものはさらに東にのびているので、柱がこのあたりでとまっていたはずはありません。上層の礎石は平坦で軽いものばかりでして、抜き取られてしまったとみるほうが妥当と思われます。
また、C区では昨日みつかった雨落ち溝風の凝灰岩盤を追って掘り下げました。すると、溝の底と段の上から柱穴のようなピットを発見(↑)。両方とも凝灰岩盤をくりぬいたもので、段の上の柱穴と溝の底の柱穴は隣り合うような位置関係(50センチほど離れている)にあります。溝の底の穴は直径15センチ、深さ10センチほどの円形。段の上の柱穴は楕円形で、長手が30センチ、短手が20センチ、深さ15センチほどで、柱穴の中から黒色土器(断面はベージュ色)の破片が出てきました(↓)。ここに下層に係わる柱が立っていたとすれば、この土器は柱を抜き取ったあとの埋土に含まれるものであり、下層の廃絶年代を示唆する遺物として注目されます。いわゆる瓦器ならば、下層の廃絶は中世初期までくだることになるでしょう。下層岩盤に掘り込まれたホゾ穴もしくは柱穴のようなピットの相次ぐ発見は、岩盤を整形した下層建物の存在を強く示すものであり、B区L字トレンチの下層整地土と目される凝灰岩混赤褐色土から出土した厚めの須恵器から考えて、平安時代に建物が建っていた蓋然性が一気に高まってきました。
さて、段上の楕円形ピット周辺を探っていくと、粗く整形された凝灰岩盤をパックする薄いゼリーのような層を確認しました(↑写真左側奥)。この層には細かい凝灰岩粒が大量に混ざっており、一見岩盤そのものにみえます。しかし、ガリでこすると層が剥がれていき、本物の岩盤が顔を出します。おそらく、岩盤そのものの整形が粗っぽいので、それをパックして化粧したものと想像されます。上記のピットはこのパック土層の上から平面をとらえることができました。したがって、建物が存在したとするならば、柱はピット内に納まり、ゼリー状のパック層で四方を固められていたことになります。ですから、基壇化粧に相当するのは岩盤そのものではなく、このパック層だということができます。


前日深掘りを始めたB区L字トレンチ北側は、地山を確認するため、さらに掘り下げることに(↑)。半割したトレンチをさらに段掘りしていきました。大粒の凝灰岩混じりの硬い層(おそらく下層の整地土)を撤去したところ、やはり赤みがかって硬くしまった土層がでてきました。遺物は含んでいませんが、細かい凝灰岩の粒を含むので「地山ではない」と先生は判断されました。これも整地土なのでしょう。思い切ってスコップで下げることにしたのですが、その整地土の硬さたるや尋常ではなく、「まずは半スコ(スコップ半分)」との指示に反して、スコップは1/3程度しか土にくい込んでいきません。担当していた武蔵くんは息切れをおこしてしまいました。ときたまエアポートと交代しますが、作業は難航。一日かけてようやく腰ほどの深さになったのですが、二人とも手の震えが止みません。整地土は凝灰岩混じりの層から60センチ以上下げても、まだまだ続く様子です。このトレンチで、明快に「地山」と判断される土層(もしくは岩盤)は結局確認されず、一旦この深さで深掘りを止めることにしましたが、いつかどこかのポイントで「地山」を確認しなくてはならないでしょう。
作業終盤、半割にして掘り下げていたD区北側トレンチから凝灰岩混じりの黄灰土が出てきました(↓)。明日はこの層が面的にひろがるかどうか確認するため、半割の片側を下げていきます。(Mr.エアポート)
- 2010/09/23(木) 23:07:55|
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