重伝建の外側へ 10月4日(月)。だんだんと秋深まる今日この頃、夏の猛暑に耐えかねて紅葉する前に枯れてしまわないか心配な木々を横目に、今日も倉吉へとやって参りました。これまで重伝建地区内および重伝建に近い区域での風景・昭和レトロ要素の調査を積み重ねてきましたが、今後の計画・設計をみすえ、昭和レトロ街の具体的な設計エリアを構想するため、今回は重伝建区域の外へ飛び出すことにしました。
具体的には、西町エリアより西の、鍛治町・河原町エリアで、これまでの調査でも幾度となく歩いた町並みではありますが、あらためて視察調査を行いました。鍛治町・河原町では、浅川研究室が2002年~2004年の旧陣屋町エリアの町家調査で、建造物悉皆調査が行っており、報告書も刊行しています。

さて、昭和レトロ街の敷地案を考えるにあたって、わたしたちが特に考えるべきことは、
・重伝建地区の外側とするか、内側とするか
重伝建との共立・調和を考えると外側が望ましいかもしれませんが、あえて内側へつくる案も考えられます。
・「遥かな町へ」に描かれる風景との関係が深く、谷口ジローをテーマとして「昭和レトロ」という魅力をあらためて創出できる
・看板建築や近代建築が残る場所で、昭和レトロを復元するにふさわしい場所であること
・看板建築が残されていると同時に、空き地・町家なども混在し、新築設計・町家コンバージョンなど、幅広いデザインに挑戦できる
……などではないかと考えています。
この視点から、今回あらためて町並みを観察すると、現時点では仮に3つの案が考えられました。もちろんこの案は、今後も変化していくことと思いますが、今回浮かび上がった3つの候補を追記で詳しく述べていこうと思います。
敷地エリア候補案(仮) ①瀬崎町エリア
②河原町エリア
③西町エリア
①瀬崎町エリア(写真:松島洋服店)

・重伝建拡張エリアと隣接しており、重伝建と一体となった計画がし易い。
・「遥かな町へ」の主人公の実家のモデルとなった松島洋服店があり、
「谷口ジローの風景」の目玉スポットとしても大きな魅力がある。
・もともとアーケードはかかっていなかった場所であり、看板建築が少ない
≫南側に病院があることなど、生活圏という印象も強く、実際にアーケード
を構想するならば住民の方たちへの配慮が必要不可欠。
②河原町エリア(写真:河原町の町家)

・旧陣屋町の最西端に位置しており、町家のほかに茅葺き民家も幾棟か残るエリア
・昭和レトロを感じさせる看板なども見つけられるとともに、生活に根ざした店も多く、
「生活の匂い」を味わえる
・重伝建エリアから離れているため、重伝建との「つなぎかた」を工夫する必要がある。
・「遥かな町へ」に登場する小鴨川に隣接し、谷口ジローの風景とも関係はあるが、
本町通り周辺と比べると関連性は薄い。
≫ここにアーケードを構想するとなると、①と同じく生活圏であることに注意が必要。
③西町エリア(写真:西町エリアに残された看板建築)

・重伝建拡張エリア内で、アーケードがもともとあった場所である
・看板建築が多く残され、昭和の雰囲気を味わえる
・現在の重伝建拡張予定エリアを、町家への修景をすすめる重伝建エリアと、
昭和の面影を残す「昭和レトロ街」とし、差別化をはかる
・2006年度のM先輩の卒業論文「倉吉本町通りアーケード商店街の町並み分析と
再生計画」においても、西町でのレトロ街構想が示されている(ただし当時は
アーケード撤去前)
≫すでに重伝建地区となることが決定されているが、構想としてあえて昭和レトロ街
の提案を行い、現存する看板建築を保全する。
いずれの案にしても、重伝建へのつなぎかた、あるいは、重伝建との調和のしかたが重要になると思います。
敷地案をまとめるには、さらなる探索が欠かせないとも感じました。後期授業も始まり、時間は刻々とすぎていきますが、急ぎつつもしっかりと倉吉のまちの魅力を探索していきたいと思います。(きっかわ・ドゥンビア・どんべえ)
- 2010/10/07(木) 23:27:00|
- 研究室|
-
トラックバック:0|
-
コメント:0