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鳥取環境大学 環境情報学部 建築・環境デザイン学科 浅川研究室の記録です。

摩尼寺「奥の院」発掘調査日誌(ⅩⅩⅩⅩⅩⅨ)

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下層井戸の掘り下げスタート!

 10月17日(日)。この日の作業は以下の通りです。

 1 推定「下層井戸遺構」の平面検出
 2 D区台形トレンチの遺構再検出
 3 B区集積遺構断面の線引き&作図
 4 Ⅳ区(岩窟)の平面・断面実測
 5 C区突出トレンチ南壁、B区長形大土坑集石遺構直結トレンチ、
   A区L字トレンチ北壁の注記

 13日に発見した推定「下層井戸遺構」は、昨日、畦を残して北側を半割りにし、タタキ(上層基壇土最上層)を剥いだところで終了。この日は、まず井戸埋土の最上層にあたる黒い土とタタキ下地の土の境を平面で検出し、最上層の井戸埋土を取り除いていきました。平面検出した際、埋土の肩は3分の1程度しかあらわれず、埋土の中心は畦かその南の深掘トレンチにある可能性が生まれてきました。そこで、午後からは南側も半円状にトレンチを設け(畦の南北で直径が異なるのは樹根の影響:↑写真参照)、とりあえずタタキ下地の層まで下げてみることに。南側を下げることで、北側よりも広い範囲で井戸の木枠を平面的に検出できるかもしれません。この日、南側のタタキを剥ぐと、さっそく遺物を2点発見。1つは昨日の蝶番と同様に金属物で、平らな面を持ち高台のような突起がみられることから鉄器と思われます。もう一つは分厚い断面を持った灰色の須恵器です。このように井戸遺構の上から遺物が続々と出てくると、井戸枠内の底から出てくるであろう遺物に、今から期待が膨らみます。

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 さて、井戸の掘り下げとは別に、この日はD区台形トレンチの平面を再検出しました。なぜ、いまごろになって一度検出した平面をまた検出するか。そもそもこのD区台形トレンチは、同区内に生きた礎石がまったく見られないことから、夏休みに礎石の抜取穴を求めて掘り下げをおこないました。しかし、真夏の炎天下のなかの平面検出は難しく、カラカラに乾燥した土は、どこも同じ色にみえてしまいました。残念ながら、そのときは礎石抜取穴らしきものは検出されませんでした。ですが、季節は変わりました。この9月中旬以降、間断なく降り続いた雨のおかげで地面は湿り、遺構面の色の識別がしやすくなっているのです。そこで、今回は再度D区に狙いをさだめ、平面検出をおこないました。すると、台形トレンチの西側で3つのピットが連なるようにみつかりました(↑)。これらが礎石の抜取穴や据付穴であると断定するにはまだ早いですが、いずれ断面調査によって答えを導けるでしょう。


 一方、A区L字トレンチ北壁の断面注記に伴い、新たな発見がありました。A区L字トレンチ北壁は、13日から15日にかけて深掘りをおこない、16日にようやく線引き&作図が完了。B区のL字トレンチ南壁と同じように、下層にあたる土層が崖にむかって斜めに落ちているのを確認しました(↑)。しかも、L字トレンチ東端の斜めに下る急勾配の層を境に、左右で土色が変わっていることが判明したのです。この斜めラインを境に、西側では硬い「赤褐土」または「黄灰土」系の粘質土、東側は「茶褐土」系の砂質土に分かれます。これには二つの考え方が可能でしょう。一つは、西側が基壇土・地業土、東側が基壇外の整地土の可能性です。二つは、西側の赤い土が下層の基壇・整地土で、東側の灰褐系の土が上層の整地土という見方です。東側の灰褐系の土からは中世のカワラケ系の土器片がよくでているので、後者の可能性が高いかもしれませんね。(Mr.エアポート)

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  1. 2010/10/21(木) 20:44:53|
  2. 史跡|
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