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鳥取環境大学 環境情報学部 建築・環境デザイン学科 浅川研究室の記録です。

新羅の道-慶州巡礼(Ⅱ)

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南山から見下ろして(下)

 さて、問題は山頂「金鰲峰」登頂後の下りだ。初日(29日)に博物館で購入した資料では、第一目的地とした「仏谷龕室石仏坐像」以外の岩窟仏堂は掲載されておらず、後半の調査ルートのチェックポイントははっきりとしていない。もともと、岩窟仏堂を探すのが今回の調査目的なのだからそれでよいといえばよいのだが、設定したルート上に岩窟がまったくなければ、とんだ空振り調査になってしまう。よって、山頂からの下りルートの中で石仏がもっとも集中する「三陵谷」を選んだ。石仏が集中していれば何かしら岩窟らしきものがあるかもしれないという淡い期待なのだが、これが吉と出るか凶と出るか。一行は「三陵谷」を目指して下山し始めた。

 さて、前回も述べたように、今回の南山調査は、ルートの設定&道案内が私の仕事だ。当然、常に地図をみながら現在地を確認して進んでいくわけだが、困ったことに「三陵谷」の地図は、石仏のだいたいの位置だけが示してあって道が描かれていない。ハングルの地図にも道は描いてあるが、かなりアバウトな図だ。行き先を示した看板だけが頼りなわけだが、山全体を縦横無尽に道が分岐しているため、方向はあっていてもどれが正式なルートなのかわからないのだ。石仏を見落としてしまえばそれまで。午前に引き続き不安がぬぐえない。
 しばらく山中をさまよっていると、遠くの岩肌に磨崖仏があるのが見えた。次の目的地としていた「磨崖釈迦如来坐像」である(↓)。まずはルートが合っていたことに一安心。その後は、磨崖仏をよく観察した。「磨崖釈迦如来坐像」は新羅統一時代(676~935年)後期のもので、頭部のみ浮彫で、身体は線刻された磨崖仏である。祭壇に覆屋はないのだが土足厳禁で、靴を脱いで参拝しなければならない。線刻の磨崖仏をみるのは初めてのこと。線刻の軽やかさと柔らかな岩肌があいまって、仏の姿をより柔和にみせた。
 次に現れたのは「石造如来坐像」(8世紀後半~9世紀前半)だ。沢を下っていると、最近整備されたで真新しい基壇があらわれ、それが鎮座していた。やはり正式なルートから外れていたのだろう、正面からではなく背後からお目見えすることに。正面にまわると、石仏の左奥に岩窟を持った巨岩が現れた(↑)。

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 この岩窟は、巨岩の岩陰を利用しその左右に石積みをして形を成している。中に仏像等は祭られていないが、岩窟内奥にベッド状の祭壇を配する。祭壇には蝋燭が灯っており、岩窟内を照らしていた。本日2つ目の岩窟発見に胸が躍った。さっそく実測に取り取り掛かると、先生があることに気づかれた。私たちは実測に夢中で気づかなかったが、正式なルートから基壇をみると石仏は参道の延長線上にはなく、岩窟へとのびていた(↓)。参道は岩盤を荒削りしたもので古い時代のものと思わる。基壇は新しいものだから石仏の位置は当初位置から多少なりとも動いているかもしれないが、この配置関係からみるに、当初は石仏よりも岩窟を中心にしていた可能性があるだろう。

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 その後は、「線刻如来坐像」(高麗時代/918~1392年)、「線刻六尊仏」(年代不明)、とめぐり、「石造如来坐像」(8世紀中葉)にさしかかろうとしたとき、道を挟んで左側に巨岩が見えた。岩の下にはガラスケースで何か祭られているようで、一行は本日3度目の実測に入った。この巨岩は先ほどの岩窟とは異なり、岩陰の両サイドに石積みをしていない。開放的な岩陰仏堂である(↓)。この仏堂に関する案内板はなく、地図上にも示されていないため名称は不明。ガラスケースの中には大量の蝋燭に火が灯っており、仏像の姿はない。後世のものと推定される祭壇にはセメントがしかれているのだが、セメントには土台の痕跡が残っており、岩陰に窟檐(くつえん)があったことが想像できる。また、岩陰の横の岩壁には瓦が付着しており、ここにも木造建築があったことがわかる。

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 実測後は、「石造如来坐像」「磨崖観音菩薩立像」(年代不明)「拝里石仏立像」(新羅時代)を視察し、無事帰路に着いた。今回の調査だけで3箇所の岩窟仏堂を発見するに至ったが、石仏は山全体に散在しており、岩窟は他にもまだあるかもしれない。それにしても、山陰の岩窟仏堂とも似た仏教遺産にめぐり合えたことはとても大きな収穫である。はたしてこれらは「石窟寺院への憧憬」と証拠となるものであろうか。(Mr.エアポート)

  1. 2010/11/20(土) 13:46:33|
  2. 研究室|
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