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鳥取環境大学 環境情報学部 建築・環境デザイン学科 浅川研究室の記録です。

新羅の道-慶州巡礼(Ⅲ)

香壇と稲穂


秋色の良洞村

 今年2月の特別講義で一度訪れた良洞(ヤンドン)民族村。ですが、じつは見学の時に体調が芳しくなく、さらに見学先も決まっていたので、あまり余裕をもって見て歩くことができませんでした。今回は、日本から持ってきたガイドブックを片手に、のんびりと散策して歩きました。
 良洞民族村は慶州の北東約16km、タクシーで40分ほどのところに位置します。タクシーを降りると、たくさんの観光客。良洞のは秋景色を楽しもうとする人びとの群れです。田んぼには収穫を待つ黄金の稲穂。山や集落のところどころで紅葉が進んでおり、赤く色づいた柿の実が枝もたわわに稔っていました。
 村は、緩やかな山に囲まれ、500年以上も前に建てられた家屋を含め、約160棟が地形に沿って建ち並んでいます。瓦屋根の立派な両班(ヤンバン=貴族)の屋敷と、藁葺き屋根の素朴な家々。それらが古い面影を今に伝えており、1984年には村全体が文化財(重要民俗資料第189号)に指定されています。そして、今年8月1日に「大韓民国の歴史的村落:河回村と良洞村(ハフェマウルとヤンドンマウル)」として世界文化遺産に登録されたそうです。韓国10件目の世界遺産です。家屋と精舎、書院など伝統的な建築物の調和と配置方法、および住居文化が朝鮮時代の社会構造と独特の儒教的両班文化をよく表し、長年にわたって維持されている点が評価されました。また、朝鮮時代の儒学者の学術的・文化的成果物、共同体の遊び、歳時風俗、伝統的な冠婚葬祭など、住民たちの生活や信仰に関係した無形遺産が伝え受け継がれている点も高く評価されたとのことです。良洞民族村では驪江李氏と月城孫氏というふたつの両班氏族が中心となり、厳格な儒教の気風を守りつつ暮らし続けてきました。

暮らす人

 良洞村には今も住民が生活しており、そのため立ち入り禁止になっている場所もあります。住民の方がたの中でも意識が違うのでしょう、自宅につながる道の入口からチェーンで封鎖している方もいれば、敷地内に入って見学しても普通に対応してくれる方もいます。とあるお宅の敷地入口にはお手製のたんきり飴などが並んでおり、一袋購入して食べてみると素朴な味。なんだか心があったかくなりました。
 村の方がたの家を見てみると、多くの家に縁が設けられており、その縁と連続するようにマル(↓写真)と呼ばれる祖先祭祀の場があります。「マル」は北東アジアのツングース狩猟民テントの上座をあらわす言葉でもあり、神や天のことをも意味します。朝鮮半島住宅のマルも祖先祭祀の儀場ではありますが、板の間で高床となっていて、とても開放的です。北方では奥まった印象のマルが、南下することでこのように開放的な空間に変容したということがわかりました。

マル


無添堂

 驪江李氏の宗家でもある無添堂(宝物第411号/↑写真)や、對聖軒、観稼亭(宝物第442号)などのマルはとくに立派です。それらの屋敷の多くが丘の上にあるため、とても見晴らしがよく、眼下に藁葺き屋根の家々が見渡せます。このように、両班氏族など支配階級の家は上にあり、その下に召使いなどが住んでいた藁葺きの家々が並んでいます。現在藁葺き屋根の家に住んでいる人たちは召使いというわけではありませんが、当時の身分階級の面影が今も建物配置にみられます。

ティータイム

 散策途中には、両班住宅を利用したお食事処で、お茶を飲んで休憩しました。甘いナツメ茶をマルでいただくと、疲れも飛んでいきました。しかも、風水の思想が関係するのか、そこからの景色は抜群で、先生とMr.エアポートさんは景色を十分堪能できたようです。私と轟くんときっかわさんは、残念ながら対面に坐って、柱に縁取られた山嶺を望めませんでしたが、最後にちょこっとだけ位置を変わってもらいました。ちょっとだけでしたが、徐々に色づいている樹々や、その向こうに収穫を待つ稲穂、その周囲を取り囲む家々など、村の秋色を味わいました。
 深まる秋の風景に囲まれ、古い面影を持つ良洞村にいると、時間がゆっくり流れるようでした。しかし、他にも見るべき場所があったため、約1時間半の散策を終え、後ろ髪を引かれる思いで、次の見学場所へ向かったのでした。(部長)

秋-良洞

  1. 2010/11/21(日) 00:22:21|
  2. 研究室|
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