吉田孝行は男になった。
フリューゲルス消滅のころを思い出した。もともと決定力のあるフォワードで、1998年12月27日の天皇杯準決勝、アントラーズ戦での活躍が目に焼き付いている。
長居に2万人の観客があつまっていた。フリューゲルスは絶対絶命。天皇杯で敗れた瞬間、チームが解散することになっていたからである。しかも、その相手は、公式戦20連勝中のJリーグ覇者アントラーズ。鹿島はなんどか黄金期を経験しているが、このころがいちばん強かった。その最強のチームを牽引していたのがジョルジーニョだ。わたしは、今でもJリーグ史上最も優れた選手はジョルジーニョだと思っている。しかし、長居の冬空にジョルジーニョの姿はなかった。ジョルジーニョのいないアントラーズは精彩をかいた。すでにJリーグ覇者の力はなく、逆にフリューゲルスはチーム消滅の負の力を大きなエネルギーに変えていた。ジョルジーニョ不在の中盤を、サンパイオと山口素弘が自在にコントロールし、最前線で吉田が躍動した。たしかキックオフ早々、吉田が先取点を奪い、そのまま1-0でフリューゲルスが逃げ切ったように記憶している。
吉田は日本代表に入ってもおかしくない逸材だと思っていたが、マリノス、トリニータでは準レギュラー扱いで、気がつけば、故郷(滝川二高)のヴィッセルに戻っている。いま退団云々でマスコミを騒がしている松田直樹と生年月日が同じというから、33歳か。サッカー選手としての終盤を迎えながらも、ペナルティエリア内での冷静さでは大久保(ケガで欠場)をしのぎ、リーダーシップという点では宮本(ベンチ入りしたが出場せず)をうわまわった。なんというか、吉田という男の「背中」をみているだけで、後方にいる若手たちは奮い立つといくか、うまく表現できないけれども、そんな男気を感じる選手である。
それにしても、レッズの為体や、嘆かわしい。ホームの最終戦で、0-4の完敗。フロントは、いったいなんのためにフィンケという監督を招聘したのか。ドイツ人の監督に「ポゼッション・フットボール」を指導させるという発想自体に疑問を覚える。この2年間たいした成績をあげることなく、トゥーリオをはじめとする有力選手を解雇し、いったい何が残ったというのか。画面をみるかぎり、広島から獲得した柏木以外で日本の将来を担える選手はいない。柏木は、中村俊輔に似たボールの持ち方をするレフティで、攻撃に非凡なセンスをみせるが、中村と同じように、守備力やフィジカルに一抹の不安を残す。しかし、若いうちからボランチを任されていることで「守備」に対する意識が体に埋め込まれていくだろう。そうなれば、いずれ日本の中盤を支える一人になっていくにちがいない。
柏木を中心としたチームの再建、早期の再建を祈念している。
- 2010/12/06(月) 01:09:11|
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