ちあきなおみの『Three Hundreds Club』(1982年録音)が届いた。
引っ越しの際に家中のCDプレーヤーがすべて動かなくなっていることを知った。1台は25年前、もう1台は12年前のオーディオ、さらにもう1台は数年前に仕入れた中国製の激安ラジカセである。忙しすぎて、それらの機械を使う余裕がなかったのだが、気付いたら、みな動かなくなっている。部屋が新しくなって、住み心地がよくなった。家事がたのしい。家にいる時間が自ずとながくなり、当然のことながら、新しいオーディオが必要だと思い始めた。そうだ、地デジを買ったポイントが溜まっている。そこで、カセットとiPodの併用できる製品に狙いを定めたのだが、クレジットカード更新の関係で、一昨日までそれを購入できないでいた。今それは居間に居座っていて、ちあきなおみの呟くような透明色のボーカルでリビングを霞ませている。
ちあきあおみは得たいのしれない奥深さをもった歌手だ。この気怠く、ニュートラルな重みはなんなのだろう。昨夜の「ノルウェイの森」にも通じる不可解さがこの歌手のうた声にまとわりついている。『Three Hundreds Club』に収録された以下の12曲はいずれもアメリカの古い小唄であり、それをちあきは日本語訳で唱っている。訳詞の苦労は並大抵ではなかっただろうが、これだけの歌手にその言葉のかたまりを歌い上げてもらえるのだから、苦労も報われよう。
1.恋に戯れ(恋人よおやすみ) Good Night My Love
2.追憶 Nevertheless
3.横顔 That Old Feeling
4.合鍵 When I Lost You
5.朝な夕な Under a Blanket of Blue
6.恋は罪ね You're My Everything
7.夜に踊れば I've Got a Crush on You
8.日曜日は風 For Sentimental Reasons
9.た・め・い・き I Can't Help It
10.夜更けの天使 The Lonesome Road
11.愛の形見 Golden Earrings
12.悪い夢 These Foolish Things
あまり説明を書きたくない。「喝采」以来、ちあきあおみを支え続けた東元晃氏の短いライナーノーツが要を得ており、ここに引用させていただこう。
ビリー・ホリディの生涯と、最後のステージをひとり芝居
に仕立てた「レディ・レディ」を演じたちあきさんは、
今もわたしの脳裏に鮮明に焼き付いている。
同時に、あの舞台がそれまで特別に取り沙汰されなかった
スウィングするフィーリングや、アフタービートのリズム感
など、彼女の豊かなキャリアを浮き彫りにしたと思える。
このアルバムはジャズと言うより、古いトーチソングや
スタンダードなど、渋めの選曲を軽く歌いあげて、古き良き
アメリカを表現しようと試みている。
それにしても今回の曲目を、事もなげにとりあげる彼女の
懐の深さには驚くばかりだ。曲のタイトルは知らなくても
メロディは自然に聞き覚えてた、そんな少女時代に培われた
財産と言うべきか・・・。
2010/12/13(月) 01:42:14 |
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