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鳥取環境大学 環境情報学部 建築・環境デザイン学科 浅川研究室の記録です。

熊野古道(Ⅱ)

赤木越石畳


湯の峰温泉から熊野本宮へ

 「紀伊山地の霊場と参詣道」は、世界遺産の中でも2例しかない「信仰の道」の遺産です。選んだルートは湯の峰温泉から赤木越を通り、船玉神社から中辺路を通って熊野本宮大社へ、そして大日越を通って湯の峰温泉に戻る、というものでした。
 朝、さっそく赤木越へ。家々の間の階段を上り、鬱蒼とした針葉樹林の中を通り抜けると、すぐに尾根筋に出ました。ところどころに木や石の階段がありますが、一部には小さな石を敷き詰めた石畳(↑)も残っています。全体的に緩やかな尾根道で、眺望が良いところも多数あり、遠くに連なる山々や小さく見える集落などの景色も楽しめます。そして途中には、廃屋が残る柿平茶屋跡や石垣のみが残る献上茶屋跡などがみられました。赤木越は針葉樹ばかりでなく、時には右と左で針葉樹と広葉樹に分かれていたりして、変化のある道でした。

柿平茶屋跡赤木越植生
左:柿平茶屋跡 右:広葉樹も混在する赤木越

 後ほど気づいたのですが、赤木越は世界遺産の登録範囲には入っていないようです。もともと赤木越は奥熊野の入口となる三越峠から分岐して、湯の峰温泉に向かうルートです。この道は、本宮大社に向かう前に湯の峰温泉で湯垢離をするために、近世になると頻繁に通られるようになった道です。しかし、三越峠から献上茶屋跡までの区間で崩落しているところがあるため、現在は三越峠から船玉神社付近まで中辺路を通り、そこから杉林の斜面に作られた階段を一気に登ったところにある献上茶屋跡を経由して赤木越を通るようになっています。
 2時間ほどで赤木峠を抜けると中辺路に合流。未舗装ながらも車の通れる林道でした。すぐ近くには船の神を祀るという船玉神社があります。そこから林道を歩き、林道の下の古道に入ると猪鼻王子。さらに林道を進み、石段が連なる土の古道を登っていくと、発心門王子へ。発心門王子は王子社の中でも地位が高い、五体王子の一つです。この王子の名は、「悟りの心を開く入り口」とされる大鳥居があったことに由来し、信仰に関連して命名されたことがわかります。また、聖域への入り口ともされ、人々は門前で厳粛な祓いや潔斎をしてからくぐったといいます。

発心門鳥居
発心門王子の鳥居


伏拝と果無山脈

 発心門王子から、車道を通って小さな峠を越えると、水呑王子。水呑王子からは再び土の古道になり、山林を抜けていきます。伏拝集落が近づくと車道になり、集落の中を進みます。畑や茶畑がひろがる比較的大きな集落で、お茶や栗などを売る無人販売所も多く見受けられました。集落を通り抜け、小さな峠を越えると伏拝王子に到着。ここに来て初めて、大斎原の地を望むことができ、人々が伏して拝んだことから、「伏拝」という名がつけられました。また、ここには休憩所の他に連続テレビ小説「ほんまもん」の主人公の家のロケ地になった民家(↑写真中央)があります。この民家に住むおじいさんが休憩所にいて、「家の周囲を案内してあげる」とお誘いを受けたので、ご厚意に甘えて案内していただきました。民家は南向きに建てられており、その北側には北風を防ぐための土手のような丘がありました。その丘に登ると、北には奈良県と和歌山県との県境となる果無山脈がひろがり、その手前には地元で三里富士とよばれる百前森山(↑写真右上の一番高い山。その後ろが果無山脈)がそびえています。家の周りの開けた土地には茶畑がひろがり、雲ひとつない快晴だったこともあって、とても開放的に感じられました。

木立と古道展望所から大斎原
左:伏拝から続く古道 右:伏拝の先にある展望所からみた大斎原

 おじいさんと別れて古道を先へ進むと、杉や桧に囲まれたなだらかな下り坂が続き、三軒茶屋跡へ。ここで、高野山からくる小辺路と合流します。その後もなだらかな古道は続き、住宅街へ出ました。住宅街には祓戸王子があり、もう目と鼻の先に本宮大社がみえます。本宮に入る前の最後の王子なので、ここで旅の汚れを祓い清めたといいます。船玉神社から本宮大社まで、休憩を含めて約4時間。ようやく本宮にたどり着くと、裏から境内に入っていきました。

 熊野本宮大社は熊野三山(熊野本宮大社・熊野那智大社・熊野速玉大社)の総本山であり、すべての熊野古道はこの地に集まります。そのため終着の地でもあり、出発の地でもあります。本宮大社の神門をくぐると、三棟の社殿が並んでいます。正面が本殿で、熊野本宮大社の主神である家津御子大神(けつみこのおおかみ)が祀られています。本殿から見て左の社殿は二つに分けられていて、左端が熊野那智大社の主神である熊野夫須美大神(くまのふすみのおおかみ)、その右隣に熊野速玉大社の主神である熊野速玉大神が祀られ、本殿を挟んで右の社殿には天照大神が祀られています。神門も社殿もすべて立派な檜皮葺でしたが、残念なことに今年の10月頃から屋根の葺き替えが始まり、本殿の周りには既に白い覆屋が建てられ、その姿を拝むことはできませんでした。古道を歩く人の数は、やはり紅葉も終わっているからか少ないように思いましたが、さすがに本宮大社につくとたくさんの参拝客がいました。その人たちに混じって、ここまで無事にたどり着いたことを思いながら参拝すると、自然とありがたいという気持ちがわき起こっていきました。
 参拝を終えて、杉木立に覆われ熊野大権現の幟が並ぶ石段を降りると、国道168号に面した鳥居に出ました。ここから南に進むと旧社地であった大斎原があり、大鳥居の奥に森がみえます。熊野川の中州に位置し、以前はこの地に本宮大社がありましたが、明治22年に大洪水で流出したため、明治24年に現在の本宮大社の位置に流出をまぬがれた社殿を移築・復元しました。大斎原には、洪水の際に流されてしまった社殿の神を祀る二つの石祠が鎮座しており、木々に囲まれた大斎原は静かで厳かな空間を形成しているように感じました。(続)

本宮大社神門大斎原と鳥居

  1. 2010/12/24(金) 02:56:16|
  2. 景観|
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