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鳥取環境大学 環境情報学部 建築・環境デザイン学科 浅川研究室の記録です。

熊野古道(Ⅲ)

大日越坂道


大日越の苦行

 大斎原をあとにして、大日越(↑)を歩くのみとなりましたが、最後の最後で思ったより急で長く続く石段に苦しむことになりました。途中には岩が張り出して岩陰を作っているところがあり、階段もあったので登ってみると、何かを祀っていたような台座だけがありました。
 しばらく登ると杉や桧の大木に囲まれた月見ヶ丘神社があり、そこからさらに登っていくと、大日越の峠に大きな岩が見えます。岩には左に座像、右に立像の2体のお地蔵さんが彫られており、右側のお地蔵さんは鼻欠地蔵と呼ばれ、身代わり伝説を持っています。「鼻欠」という名がついていますが、すでに風化が進んでおり、2体とも頭がありませんでした。ここからはひたすら下りで、膝が笑いそうになるのをこらえてゆっくり降りていきました。大日越を踏破し、湯峯王子へたどり着いた頃にはへとへとに。約1時間の道のりでしたが、この日歩いた中ではもっともハードな道でした。

 岩陰 鼻欠地蔵
左:途中の岩陰 右:鼻欠地蔵

 その後、「不動の滝」という看板を見つけ、気になったため再び山道へ逆戻り。滝まではそう遠くはありませんでしたが、おそらくあまり通る人がいない細い道は落ち葉だらけで、足を滑らせないように慎重に登っていきました。たどり着いた不動の滝は、大きな岩の上から水がしたたり落ちるような、落差約3メートルの滝でした。滝のすぐ右下には不動明王と思われる像があり、左には裸形上人修行の滝と書いた小さな石碑がありました。裸形上人はこの不動の滝で苦行をおこない、湯の峰温泉にある東光寺の本尊である、湯の花でできた薬師如来を感得したといわれています。

不動の滝


湯の峰温泉

 湯の峰温泉に帰り着いたのは、辺りが薄暗くなった頃。一日中歩きづめだった体が、休息を求めて悲鳴をあげていました。このままでは確実に筋肉痛に襲われる・・・ので、世界遺産にも登録されている「つぼ湯」に入ることに。1800年前には開湯していたという歴史ある温泉で、つぼ湯は浴場としては唯一世界遺産に登録されています。川のほとりに建てられた小さな小屋の中に、2人が入ればいっぱいになる程の、岩をつぼのようにくり抜いた小さな湯船がありました。このつぼ湯には、小栗判官伝説があります。それは、「小栗判官は美女と誉れ高い照手姫と結婚したが、姫の父に毒殺される。哀れんだ閻魔大王の計らいで餓鬼阿弥の姿でこの世に戻され、照手の引く土車によって湯の峰温泉にたどり着く。そして、つぼ湯で49日間湯治をおこなうと、熊野権現の加護と薬湯の効があってすっかり元の姿に戻った」というものです。そのため、本宮大社に詣でる前の湯垢離場としてだけではなく、病の回復を願う人々の湯治場でもありました。
 つぼ湯の近くには約90℃の源泉が出ている湯筒(↑左の川岸)があり、地元の方や観光客がゆで卵を作ったり、野菜を茹でたりできます。また、つぼ湯も湯筒も湯が川に直接流れて込むため、湯の峰温泉の川から湯気が出るという風景を作り出しています。

つぼ湯湯船
左:つぼ湯の湯船

 一日かけて熊野古道を歩きまわりましたが、やはり中辺路がもっとも整備されていました。多くの人が歩くため道がすり減りくぼんでいる状態ですが、それを直すために新しく土が入っていたり、石段が整備されたりしていました。赤木越や大日越では木の階段などは見られますが、土を足すというところにまでは及んでいないようです。しかし、元々の石段や岩を削って作られた階段はかなりすり減っているところもあり、脆くなっているようでした。植生に関しては、定期的に手が入っているのか間伐された木が木立の間に横たえてあり、赤木越では植林されたばかりの山の斜面も見られました。

 くぼんだ道 整備された道
左:くぼんでしまった道 右:新しく土が入れられた道

 この1日で約20キロの道のりを歩きましたが、歩きやすい車道なども含まれています。しかし、かつて熊野詣をしていた人びとは、当然今よりも整備されていない山道を歩き、熊野三山を巡ったことでしょう。それを成し遂げたのは、やはり強い信仰心があったからなのだろうなと感じました。熊野三山や高野山、吉野などの霊場が参詣道によってつながり、その道を歩くことが修行でもあったのです。そういう信仰の道筋が世界遺産になったことの意義は大きいですが、山陰地方の密教系諸山と差別化できないわけではありません。(部長)

  1. 2010/12/26(日) 00:00:02|
  2. 景観|
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