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鳥取環境大学 環境情報学部 建築・環境デザイン学科 浅川研究室の記録です。

木綿街道のこと(Ⅲ)

新町通り


「木綿街道」悉皆調査(その1)

 1月8日(土)からの3日間、2週間ぶりに平田木綿街道へ赴きました。今回の目的は、新町および片原町の「木綿街道」沿いに立つ全戸を対象とした町並み外観調査。各戸の外観や形態、保全度について記録すると共に、所有者の方がたから改修時期や建築年代等についてヒアリングし、調書に書き込んでいきます。余談ですが、昨年10月に重伝建地区の拡張が決まった倉吉でも、H14~16年度におこなわれた旧陣屋町エリアの町家調査において同様の悉皆調査と主要な建物の詳細調査が浅川研究室によって実施されています。
 この悉皆調査は言わば町並み調査の予備調査に位置づけられ、調査票を作成することでデータを蓄積するとともに、木綿街道に残る町家や民家などの歴史的建造物の現状を理解することを目的としています。そしてとくに価値があると判断した建造物については、今後詳細調査をおこなっていく予定です。

 1.新町エリア

 新町は南北に通る街道筋で、江戸期から明治中期の平田町(その後、2度の合併により現在は出雲市に属する)においては松江杵築往還の松江側の入り口に位置していた。西側には街道に平行して平田船川が流れ、街道と河道をつなぐ小路が3本備わっている。街道沿いには町家や長屋、土蔵等約50棟が連立し、平田の町並みの特徴でもある切妻土蔵造妻入りの町家は10棟確認された。(↑新町通り南端より北を見る)

川並 本石橋家 石橋酒造
<左>船川対岸より新町を望む <中>本石橋家住宅 <右>その分家にあたる旧石橋酒造

そのうち、かつて地主であった本石橋家と、その分家で造り酒屋を営んでいた旧石橋酒造の邸宅については築200年以上といわれる。その2棟を除いては、所有者からの聞き取りによれば明治初期~大正期の建築とのことであるが、何れも口伝によるもので確かなものではない。多くは間口二間半で多少の改変は見られるものの、二間のミセ部分と半間の通り土間で構成されている。正面には下屋がつき、2階は庇付の窓が設けられており、漆喰塗りの大壁構造となっている。海鼠壁は、2階外壁および庇上の妻壁に見られるが、建築年代との関係についてはより詳細な調査が必要となるであろう。また、町内には二つの醤油醸造本(加藤醤油店、岡茂一郎商店)があるが、いずれも海鼠壁をもつ妻入町家をそれぞれ2棟所有しており、街道内の活性化とともに町並み形成に貢献している。

妻入り  妻入り町家と小路  雪の木綿街道
<左>切妻土蔵造妻入りの町家(明治期?)が軒を連ねる 
<中>海鼠壁のある妻入町家(大正期)と船側へつながる小路 
<右>加藤醤油店主屋



平入り

 他の建物に目を向けると、平入形式の町家は岡茂一郎商店主屋や加藤醤油店の分家(↑)、本石橋家所有の長屋であった建物(いずれも明治期か?)などがみられ、とくに先の2棟は海鼠壁や出雲格子など保存状態も良好で、周辺の景観と調和している。また、看板建築もみられる。そのうちの1棟は妻入町家型の前面に部屋を設け、鉄板で覆っているものの大屋根の鬼瓦も確認できることから、倉吉で実践しているような復原的修景が可能かもしれない。
 街道全体としてみるならば、既述の建造物群が町並み景観を形成しており明治期からの佇まいをよく残しているといえよう。また小路や庇合いなど、度重なる水難から逃れるための都市計画的な手法を随所にみることができる。ただ、やはり空家や駐車場も漸増している。かつては多くの商店が立ち並び、市場町として栄えていた街道筋であったものの、現在は住宅として利用されている例も多い(ミセ部分を改修して駐車場にしている例が多くみられた)。また所有者には高齢の方々もおられ、今後の維持管理の面でも不安がないとはいえない。

看板建築  看板  R0024628.jpg
<左・中>妻入り町家型の看板建築 <右>1Fを駐車場としている例。2階の出雲格子が良い雰囲気

現在、まちづくり交付金事業の一環で出雲市による修景事業が展開されており、木綿街道内でも町並みに対する機運が高まってきたという。実際に修景事業を利用して外観を修景している(施工中であった)例がみられた。こういった流れは、地元の活性化には重要なことではあるものの、安易な修景には気をつけなければならないだろう。木綿街道には、平田を代表する妻入町家群の景観と美しい川並みが残されている。その価値を見極めてそれらをどのように保全、そして活用していくのかを検討しなければならない。 (続/タクオ)


  1. 2011/01/16(日) 12:40:42|
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