
正月4日、高の原サティのスタバで新聞記者さんのインタビューをうけた。出雲大社遷宮中の現場に入れてもらえるので大きな記事を書きたい。しかも、「科学技術の視点」から記事を書きたいので、何に焦点を当てたらよいのか、教えて欲しいとの依頼である。
「檜皮葺きしかないでしょうね」
とそのとき助言した。
遷宮と言っても、出雲大社の場合、伊勢神宮のような建て替えではなく、屋根の葺き替えにすぎないわけだから、屋根葺き以外にぬきんでた素材を探すのは難しい。「檜皮葺き」の研究そのものがあまり進んでいないし、檜皮葺き建築の中でも出雲大社本殿のそれはきわめて特殊なものだから、「科学的」ではないかもしれないが、「技術的」な記事は書けるだろうと答えたら、その通りの筋書きになって、2月8日夕刊(大阪)の一面を飾る大きな記事になった。

出雲大社本殿の檜皮葺き屋根は、茅葺きと見まがうばかりに、勾配がきつい。わたしは、出雲大社本殿建築の起源を8世紀以前の高床倉庫(2間×2間)が格式化したものと思っている。ここにいう格式化は「宮殿化」とほぼ同義であり、意匠や平面に宮殿(内裏)の要素を取り込むことによって、倉庫は神殿へと変身する。茅葺き屋根を檜皮葺きに変えたのも、「倉庫の宮殿化」の一要素だという理解であって、その根拠については、『
出雲大社の建築考古学』をお読みいただきたい。
記事本文でのわたしの発言は、「高さを確保するとともに、水の流れが良くなり雨漏り対策にもなっている」という機能論的な解釈に終始している。実際のインタビューでは、もっと踏み込んだ見解を述べていて、電話での再取材でも、以下のことを繰り返し強調した。すなわち、起源論としてとらえるならば、「元は茅葺きだったものが檜皮葺きに変わった」結果として急勾配になり、それは「棟高を確保するばかりか、雨仕舞いにも有効だった」というのが本来のコメントなのだが、肝心要の部分を、たぶんデスクが削ってしまったのだろう。
まぁ、いいさ・・・いつもは全国版の夕刊記事は、翌日の地方の朝刊に転載されることが多いのだけれども、今回、鳥取の朝刊記事には掲載されていないようです。
- 2011/02/12(土) 00:16:38|
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