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鳥取環境大学 環境情報学部 建築・環境デザイン学科 浅川研究室の記録です。

手まり街道

002五條新町03


 昨年、奈良の五條新町が倉吉とともに重伝建に答申されたという報道に接し、てっきり倉吉と同じ「拡張」だとばかり思いこんでいた。五條といえば、町並み保存の世界では「大関」クラスである。わたしが奈文研に入所したころ、すでに『五條 -町並調査の記録』(1977)が学報として刊行されていた。高山、奈良井、五條の3ヶ所が入所以前に世に出た伝建の学報であった。だから、とっくの昔に選定済みだとばかり思い込んでいたのだが、「灯台もと暗し」とはこのことで、身近な文化財の世界の動きを知らないでいた。五條新町は2010年、重伝建になったばかりである。
 五條新町に着いたのは昼下がりで、この日もまたわたしはお腹を空かせていた。絶対に蕎麦を食べてやる。そのあと、またコーヒーも飲むんだ。と、空いたお腹に言い聞かせながら新町通りに入った。いきなり土蔵造の町家の群れに圧倒され、期待に胸は高鳴る。こういうところには必ず蕎麦屋があるはずだ。やった、それらしき店を発見した。「源兵衛」という割烹料亭だ。蕎麦屋ではないが、美味しい和食をいただけるなら空いた腹も許してくれるだろうと、門をくぐったが行く手を竹の結界が遮る。看板をよくみると、昼の営業は1時半までで、夕方は5時からだという。腕時計に目をやる。時刻は午後2時をすぎたところ・・・街に戻って歩を進めるしかない。

002五條新町04


 まもなく左手に「町並み伝承館」があらわれた。改装された町家の中に入って、受付の女性に「この建物のなかにカフェはないのですか」とたずねた。「ありません」と彼女は答える。「新町通りにお蕎麦屋さんとか、源兵衛さん以外のレストランとか、喫茶店とかはあるんでしょう?」とくいさがったのだが、答えはやはり「ありません」。新町通りはかつての紀州街道であり、近くに「本陣」という地名が残っていることからも窺われるが、紀州の殿様の参勤交替路として賑わったのだろう。通りの両側に軒を連ねる町家はなべて「ミセ」をもっていたといい、いまもその名残がないとは言えないけれども、飲食店は国道24号線に吸収され尽くしてしまったようだ。
 ちょっとした絶望感にさいなまれた。お腹が空いているのだ。でも、一つだけ嬉しい発見をした。「町並み伝承館」はもちろん古い町家の再活用で、町並み訪問者への情報提供の場として機能しているのだが、土間側の一画に市の文化財課重伝建推進係が入っている(↓)。所轄の行政部局が町家にオフィスを設けているのを初めてみた。おそらく全国的にこういう動きがあるのだろう。平田で開催されたワークショップの後の懇親会で、自治会長さんが観光課?は「元石橋酒造」に入るべきだと何度も説いていたが、わたしもそれが良いと思っていた。自治体が買い取った町家を町並み情報センターにして、その担当部局のオフィスをおく。ベストの活用である。それにカフェがくっつけば、ベリー・ベストなんだが、五條は残念ながらベストどまり。わたしのお腹は空いたままだ。

002五條新町01伝承館



002五條新町02記念撮影04手鞠


 通りに戻って、街を歩いた。みつけました。Kという表札のあるお宅の軒下に「ラムネあり」の暖簾が吊され、窓には「ちょっと一服しませんか」のチラシが貼り付けてある。さっそくドアを開け、声をかけるのだが、だれもいない。ドアをあけても、カフェらしき設備はどこにもない。「なんだ、これ」と考えあぐねているところに、ご主人が奥のほうからあらわれた。そのご主人、長いすを軒下に出してくれて、「まだ寒いから、ラムネじゃなくて、柚茶でどうですか」と薦められるので、即座に了解。それから長話になりましてね。Kさんは元青年団のリーダーで、市議会議員も務めて、新町の重伝建選定に尽力されたお方であり、おまけに「源兵衛」のオーナーの一人でもあり、町並み保存の苦労話をたんとお聞かせいただきました。
 窓には「紀州手まりを募集!」のチラシも貼ってありました(↑)。五條新町の軒先を飾る紀州手まりを集めて、イベントなどの際に通りの軒先を手まりで飾るというのです。いまは飾っていませんが、試しに一つつり下げてくださいましてね。さらにまた、軒先が手まりだらけになったイベント時の写真もみせていただきました(5月末には「かげろう座」という市が開かれて、毎年大にぎわいする)。それで、北川さんたちは紀州街道を「手まり街道」と命名したんだそうです。平田の「木綿街道」を思いおこさずにはいられませんでしたね。

002五條新町02記念撮影03ゆず茶


 柚茶で小腹をおさえたものの、以前空腹に悩まされていたわたしはKさんに提案したんです。「こういう街には必ず蕎麦屋があるんですがね、それがなくて残念なんです。是非、蕎麦屋を始めてください」と。すると、Kさんの目の色が変わった。今まさに構想中なんだそうです。敷地まで教えていただきました。奈良には、有名なお蕎麦屋さんが少ないので、当たれば大ヒットするかもしれませんね。わたしのような蕎麦通なら、美味しいお蕎麦が食べられるというだけで、遠い地まではせ参じるわけですからね。ひょっとしたら、町並みよりも、蕎麦かもしれないな。

002五條新町02記念撮影02
Kさんはカメラに凝ってるんだそうです。上がわたしの撮影、下がKさんの撮影です。ちょっと差をつけられましたね。
002五條新町02記念撮影01


  1. 2011/03/10(木) 00:17:40|
  2. 建築|
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