はやくも実績報告のシーズンになってしまいました。第1弾をお届けします。
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鳥取県環境学術研究振興事業費補助金研究実績報告課題番号 B1004
課題題目 倉吉重要伝統的建造物群保存地区拡大にむけての実践的研究
―看板建築の復原・活用と「昭和レトロ街」構想-
倉吉の打吹玉川重要伝統的建造物群保存地区(以下「重伝建地区」)の面積は4.7haにすぎなかったが、昨年度の文化庁答申で本町通商店街の一部が追加選定される運びとなった。2007年7月までアーケードがかかっていた本町通り商店街を始め、倉吉の旧陣屋町エリアには、町家の外側に箱物の構造物を被せて鉄筋コンクリートの商店にみせる「看板建築」がひろい範囲に現存している。今後、重伝建エリアを拡大・整備していくにあたって、看板建築の修景が必要不可欠になってきている。看板建築の修景は、さほどやっかいなものではない。2006年度の調査では、看板建築2階の箱物裏側に町家の外観意匠が完全に保存されていることが判明しており、その箱物を取り除き、1階部分の建具の意匠や壁の材料を調整することで、伝統的な町家の外観を獲得できるのである。
以上の状況を鑑み、研究申請の段階では、看板建築の修景をシミュレーションとしてではなく、実際の建物を対象に実施することを想定していた。しかしながら、倉吉市教委のご尽力にも拘わらず、この修景実験に同意される看板建築の所有者がついにあらわれなかった。このため、看板建築の修景については、重伝建地区に現存するM邸の実測調査に基づき、その外観の復原的修景と「喫茶店」へのコンバージョンを図化するにとどまった。ただし、M邸の所有者は、この再生計画に関心を示し、実現の可能性を示唆している。
すでに述べたように、看板建築を町家の外観に復旧する修景事業は必要不可欠なものではあるけれども、修景事業が進んで町並み景観が向上しても、定住者・観光客が減少し、町が活力を失ったのでは何の意味もない。近年、倉吉では、谷口ジローの傑作『遙かな町へ』(1998)に描かれたスポット巡りが観光事業化しているが、復原的な修景事業が進むと、『遙かな町へ』で描かれた昭和の風景が失われてしまう。本研究では、「歴史の重層性」を表現するオーセンティックな町並み保全のあり方として、むしろ「昭和戦後」という時代を積極的に評価し、一部の看板建築はあえて復原的修景ではなく、現状保存の対象とするとともに、重伝建拡張エリアのなかで昭和の要素を集中的に集めた「昭和レトロ街」を構想することにした。「昭和レトロ街」構想には2案ある。A案は本町通り商店街の一部に短いアーケードを再建して、駄菓子屋・鯛焼き屋・貸本屋・旅館・喫茶店・映画館などを集中させ、その外観を昭和のグッズでデコレートするものである。一方、B案は通りに面する町並み景観は重伝建の制度を遵守して整備するが、それと直交する小路と駐車場を利用して生活用品(八百屋・魚屋・雑貨屋など)の店だなを集めた「横丁」を形成するものである。
2010年12月2日には淀屋(旧牧田家住宅)で
中間報告会、2011年3月2日にはくら用心で
成果報告会を催した。中間報告会では20名以上、成果報告会には40名以上の参加者があり、活発な議論が交わされた。「昭和レトロ街」構想については、実現可能性を疑う声もあったが、どちらかといえば、B案を支持する意見が多かった。
今夜はジム・ホールで。ボーカルは奥様のジェイン。世評はあまり高くないようですが、わたしはこの名曲を含むこのアルバムが、ジム・ホールの作品ではいちばん好きです(CDではもっとギターの音が大きくて、シンプルながら素晴らしい歌伴になっているのですが、下の映像では声とギターのバランスが崩れていて残念)。
- 2011/03/29(火) 23:07:22|
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