田子坊 1999年といえば平成11年か・・・画家の黄永玉が泰康路29弄(29番目の路地)の一画を「田子坊」と名づけた。『戦国策』にみえる芸術家「田子方」の音と相通じる地名によって、この場所を芸術家の街として印象づけようとしたのである。わたしは「田子坊」という地名にもう一つの含意を読み取っている。「田子坊」は「田字坊」にも通ずる。坊とは、条坊の語からもあきらかなように、ほんらい「四角い居住ブロック」をさすことばである。したがって、「田字坊」は「田の字の形をした四角い居住ブロック」と解釈できる。問題は「田」の字のくにがまえの中にある「十」の字であり、これこそが「弄」すなわち小路を示すものではないだろうか。
田子坊の再開発コンセプトは、社区(一般居住区)と産業区(工房)を複合化して観光景観地区を形成しようとするものであり、新天地に比べると、「保全」的な傾向が顕著にみとめられる。しかし、そこにはすでに相当の投資がなされており、多くの企業が324戸ものショップやレストランなどを出店している。

ここは上海の新しい産業を創造する拠点であるとともに、国家のAAA級旅遊景観区であり、すでに以下の栄誉や称号を与えられている。
2006年 中国で最も素晴らしい創意産業区
上海の十大流行エリア
2006~08年 上海の優秀な創意産業区
2007年 最も影響力のある上海のブランド
2009年 上海市文化産業区
2010年 上海万博における「都市、さらに美しく快適に!」の主題実践区

↑「里坊」の模型と案内板。クリックすると、拡大表示されます。

泰康路の北側に架けられた「田子坊」の牌門をくぐると、はやくも写真や絵画のギャラリーが軒を連ねる。ただし、そこには、飲食店も数多い。朝食のついていないホテルに泊まっていたので、お腹が空いており、まずはブランチを、ということになって、ギャラリーの対面にあるベトナム料理のレストランに入った。注文したのは「和粉」。「和」の音声は「ホー」に近い。「和粉」がベトナムのフォーであることがおよそ想像されるであろう。ここで日本人なら「和麺」としたいところだが、「和粉」と訳するのは中国語としては当然のことである。漢字の偏に注目していただきたい。「麺」は麦のパスタであるのに対して、「粉」は米のパスタであり、フォーはあくまで「和粉」でなければならないのである。
美味かった。ハノイのフォーと比べて遜色はない。ただ、いい値がついている。たしか、一椀で68元だった。1000円弱だから、そば切り「たかや」の大盛りと変わらない。そんな話をしているところに、オーナーと覚しき初老の男性があらわれ、英語で「いかがですか」と感想を問う。
「とても美味しいんですけど、・・・高いですねぇ」
と正直に答えた。
このオーナーは、わたしたちが中国人ではないことを見抜いている。どうやら、大学の教師であることも看破しているようだ。ならば、この小柄な男は何者なのか。中国人にしては、英語の発音が良すぎる。まさか、ベトナム人の投資家なんてことはないだろうしね。(続)

さきほどBSでビリー・ジョエルのライブをやっていたので、今夜はこれにします。ジョエルの曲は、本人が唱うよりも女性ボーカルに任せたほうが良いですね。繊細な詞とメロディを、あれだけ荒っぽく唱わなくてもよいと思うんですが・・・歳もとったことだし。
- 2011/04/03(日) 20:07:11|
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