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鳥取環境大学 環境情報学部 建築・環境デザイン学科 浅川研究室の記録です。

2010年度研究成果実績報告(Ⅳ)

平成22年度科研成果の概要

 平成22年度科学研究費補助金実績報告書(研究実績報告書)を提出したので、前回の「発掘調査カード」と重複するところも多いですが、その概要を転載しておきます。また、「続き」には今年度の研究計画も掲載します。これでようやく昨年度研究の「実績報告」シリーズが終わりました、やれやれ・・・

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1. 機関番号: 35101  2. 研究機関: 鳥取環境大学            
3. 研究種目: 基盤研究(C)  4. 研究期間: 平成22~24年度
5. 課題番号: 22560650
6. 研究課題: 石窟寺院への憧憬
          -岩窟/絶壁型仏堂の類型と源流に関する比較研究  
7. 研究代表者: 浅川滋男  8. 研究者番号: 90183730
9. 研究実績の概要
 初年度は鳥取市の喜見山摩尼寺「奥の院」遺跡で発掘調査をおこなうとともに、国内外の関係遺跡・建造物を調査した。摩尼寺は帝釈天降臨と円仁再興の縁起をもつ天台宗の寺院で、現在の境内は山麓にあるが、山頂近い標高約290mの地点に「奥の院」の遺跡が残っている。そこには岩窟・岩陰の二層構造の仏堂が現存し、その正面には2段の加工段(平坦面)が形成されている。初年度は「奥の院」の4ヶ所に計200㎡のトレンチをあけ、約4ヶ月をかけて発掘調査した。下層で平安時代の柱穴と井戸跡、上層で室町時代後期以降の大型仏堂跡(8間以上×8間以上)を検出した。遺物は8世紀以前に遡る土器が出土しており、行場としての出発が奈良時代に遡る可能性があるものの、下層における加工段と建築物の出現は10世紀以降に下るであろう。
 2010年9月には、中国甘粛省で麦積山石窟、仙人崖、敦煌莫高窟・楡林窟などを視察した。山西省大同の雲岡石窟寺院では、石窟仏堂の正面に礼拝のための木造礼堂を設け、全体を「内陣礼堂造」としていたが、甘粛の場合、礼堂にあたる木造建築はなく、石窟正面に窟櫓(片流れ屋根の差し掛け庇)を設けるのみであった。11月には韓国慶州を訪問し、石窟庵と南山を視察した。前者は華北の石窟寺院を思慕する人工の石窟寺院であり、後者でみる磨崖仏と複合した岩窟仏堂は山陰方面のそれとよく似ており、一部で木造建築の痕跡を確認できた。国内では、大分県の六郷満山を視察した。六郷満山の密教寺院群は8世紀に宇佐八幡の神宮寺(弥勒寺)の行場として創建されたものであり、いまも「奥の院」が境内の一部として活用されている。しかも、神仏習合が早くから進んでおり、奥の院の正殿は「本殿」と称される。その本殿形式には、素朴な差し掛け庇タイプから、流造、入母屋造など多彩であり、摩尼寺「奥の院」遺跡建物復元の参考となった。

10. キーワード
 (1)石窟寺院  (2)岩窟型仏堂 (3)懸造 (4)岩陰
 (5)密教 (6)奥の院  (7)文化的景観   (8)復元





平成23年度科研の活動予定

 山陰地方の密教系諸山には、三仏寺投入堂に代表される絶壁に形成された懸造の仏堂のほか、岩窟・岩陰に石仏・石塔等の信仰対象を祀る古式の仏堂が少なくない。これらを「岩窟/絶壁型仏堂」と総称して、その立地・縁起・構造・祭祀形態などを詳しく調査し、おもに空間構造の特性から類型化を試みるとともに、中国の初期石窟寺院や懸造寺院との比較を通して、「8世紀以前に成立した初期山岳仏教の岩窟/絶壁型仏堂が南北朝~初唐ころの中国石窟寺院のミニチュア」であった可能性について検証する。昨年は鳥取市の摩尼寺「奥の院」遺跡の発掘調査を4ヶ月かけておこなうとともに、国内では六郷満山(大分)と熊野古道(奈良・和歌山)、国外では中国甘粛省の麦積山石窟・仙人崖・敦煌莫高窟・楡林窟、韓国慶州の南山岩窟仏堂・石窟庵などで、石窟寺院や岩窟型仏堂の類例調査を実施した。
 これらの調査以前、岩窟/絶壁型仏堂を以下の4類型に分類できるという見通しをえていた。

   A型:岩窟(岩陰)単独内陣型。
   B型:岩窟・懸造複合型   B-1型:岩窟(内陣)/懸造(礼堂)型
                    B-2型:岩窟=懸造(内陣)型
   C型:懸造単独内陣型。

 昨年度の調査成果によれば、中国の石窟寺院はB-1型だけではなく、A型に窟檐だけを伴うものがあり、また、日本でも六郷満山の例をみると、岩窟仏堂の前に①差し掛け庇だけのもの、②流造の懸造を設けるもの、③平入入母屋造の懸造を設けるもの、④妻入入母屋造の懸造を設けるもの、などがあり、上の類型を細分・拡張できると考え始めている。この研究の最終目標は、日本に存在した岩窟/絶壁型仏堂と中国南北朝時代~初唐の石窟寺院との関係性をあきらかにすることであり、その解明に向けて、

 1)日本における岩窟型仏堂の成立年代
 2)中国石窟寺院および南アジアの石窟寺院における窟前木造建築の様相

の解明に全力を注ぎたい。
 平成23年度は摩尼寺「奥の院」遺跡の発掘調査の分析および報告書の編集を進めるとともに、国内外での岩窟仏堂・石窟寺院の類例をできるだけ視察してまわりたい。中国では甘粛省以西の新疆ウィグル自治区や四川・雲南の例、さらにはインドのエローラ、アジャンタなどの石窟寺院を調査し、窟前木造建築の有無を確認したい。国内では、昨年に引き続き、岩窟仏堂の多い大分をはじめとする九州地方の類例を調査したい。



そろそろ真打ち登場、ということで・・・
  1. 2011/05/28(土) 00:00:03|
  2. 研究室|
  3. トラックバック:0|
  4. コメント:0
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