
ドーハ決戦の直後だから、2月初めのことになる。県のセンターで簡単な打ち合わせをした。いきなり議題の核心に触れるなど大人げなく、時候の挨拶などから始めるのが常套だが、このときばかりは前振りの話題に事欠かなかった。例年にない大雪を嘆きながらも、アジア杯の優勝にみな歓喜し、場は盛り上がる一方。ただし、韓国戦での同点劇が唯一の心残りであったのか、「センターフォワードをさげてはいけないのですか」とだれかに問われた。
えぇ、駄目です。トップが一人前線に張っていると、敵のバックが2枚残るし、GKも攻めあがれない。トップがいなくなった瞬間、GKを含めて11名全員が攻めてきます。韓国戦はトップを下げてから15分以上あった。そのあいだ、自陣で防戦一方。当然、敵のFKやCKが多くなる。セットプレーから失点しやすいのですよ・・・と答えた。まぁ、サッカーの戦術的常識ではあります。
青谷上寺地遺跡では環境考古学的(自然科学的)調査研究を積み重ねていて、その総合的成果としての地形・植生復元CGを制作している、とそのとき教えられた。まことに結構なことである。わたしたちが調査研究を進めている摩尼寺「奥の院」遺跡でも同じような分析に挑戦したいのだが、現実には、たいしたことはできないかもしれない。正直なところ、研究費が足りないのだ。青谷では長い年月と巨額の費用をかけており、景観復元の成果がおおいに期待される。
ただ、一つだけ障壁が存在した。集落内部の景観が不透明なのである。わたしたちの部材研究によって弥生時代中後期の建築については、かなりな実証性を伴って復元できるようになった。しかし、環濠内部でみつかっている建物遺構はきわめて少ない。建物跡は未掘地に眠っているのか、あるいは山の上にあったのか、よく分からないのだけれども、現状では環濠集落内部の建造物群景観を復元することは不可能である。
ところが、2008年初に
国営放送特別番組制作の関係で、集落内景観の復元CG制作を依頼された。わたしを含めて、だれもが「不可能」な依頼だと認識していた。さんざん悩んだあげく、わたしは敢えてその仕事を引き受けた。研究所時代の自分なら絶対に拒否しただろうが、いまは立場がちがう。どんなかたちでも良いから、大学の存在を広報する義務感にかられていた。未堀地に大型建物が存在すると仮定しての復元に取り組み、その成果CGがETVで全国放映された。
【注意】このページに掲載されているCGの転載については、浅川研究室と鳥取県埋蔵文化財センターの許可が必要です。
今回もまた、集落内景観の仮想復元が必要なのだという。そうしないと、広範囲におよぶ緑地景観の中心部(環濠内部)に穴があいてしまう。事情はよく理解できた。ただ年度末のいちばん忙しい時期だったので、自ら復元の担当者になることはできない。これまでわたしたちが作成した図面を使って構わないから、センターで責任をもって復元してくださればいい、ということで打ち合わせは着地点をえたのであった。

その後のメールを確認してみると、3月末に前頁の復元CGが送信されてきている。全体の景観復元CGのなかの一部を切り取ったものである。こういう場合、必ず「県側が公開するまでCGのブログアップは控えてください」という指示をうける。4月下旬になって、「
空中散歩 青谷の原風景 ~青谷上寺地遺跡景観復原CG~」というCGアニメーションが県のサイトに公開され、たまたま別件で来学されていた技師さんと一緒にコンピュータを開いてみたのだが、大学のパソコンではそのアニメを視聴することができなかった。どうやら、ウィンドウズ・メディア・プレーヤーの更新がうまくいっていないらしい。まぁいい。報告書さえいただければ、添付のDVD(CD?)でアニメーションは視れるだろうから、あせる必要はないんだ。
そして、先日『青谷上寺地遺跡景観復原調査研究報告書』(左上)を頂戴した。ところが、附録のDVDにCGが含まれていない。しばし呆然・・・
「空中散歩 青谷の原風景 ~青谷上寺地遺跡景観復原CG~」は、結局、週末の奈良で視た。奈良のパソコンでは、ウィンドウズ・メディア・プレーヤーは難なく動作したのだ。綺麗なCGアニメーションだった。ただ、「無声」であることに違和感を覚えた。わたしたちは、すでにユーチューブなどの映像に慣れすぎてしまっているんだね。アニメーションにフィットする音楽をBGMとして流していれば、はるかに評判のよい映像になっただろう。
報告書附録のDVDには、CGを納めるべきでしたね。たぶんCGが年度末の〆切日にまにあわなかったんだろうけれども、報告書の発送を6月ぐらいまで遅らせるのは普通のことなんだから、その時間差を利用してCGを完成させ、DVDにダウンロードすれば良かったんじゃないかな。老婆心ながら、そう思う。CG制作協力者の意見として、耳を傾けていただければ幸いである。
こういうふうに音楽と映像をうまく融合させれば、学術的な復原CGが「癒しの媒体」に早変わりするのですけどね・・・著作権の関係で音楽を借用するのが難しいのならば、「
弥生の琴と土笛の復元音楽」を採用するのもおもしろいでしょう。
- 2011/06/01(水) 00:00:15|
- 景観|
-
トラックバック:0|
-
コメント:0