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鳥取環境大学 環境情報学部 建築・環境デザイン学科 浅川研究室の記録です。

鳥取城三ノ丸高等学校プロジェクト(ⅩⅣ)

001西高問題01  十日ばかり前、左の新聞報道があった。国史跡鳥取城跡内にある鳥取西高校のあり方について、委員会の出した結論は、結局、以下の2案の併記だという。

  A.「将来的な移築」を前提とした現校舎の耐震構造補強案
  B.校舎の改修による「現地存続」案


 Aは県教委の提示した案である。県教委(と県議会)は、もともと文化財保護法を無視して、4階建校舎の史跡地内建設を強引に推し進めようとしたが、県の文化財保護審議会委員を務める1名が国の文化審議会専門調査部会の委員でもあり、その人物が文化庁の委員会で新校舎建設の反対意見をぶちあげ、工作の限りを尽くしたのかどうかは知らないけれども、結果として、すべてはリセットされた。リセットして組織された「鳥取西高整備のあり方検討会」は、なにか新しい方向性を示してくれるかと期待していたが・・・結局、両案併記でシャンシャンですか・・・大震災復興に対するどこかの政府の対応とよく似ているねぇ。

 ひるがえって、わたしの意見がよく整理されているのは、2010年2月10日にアップした「鳥取城三ノ丸高等学校プロジェクト(Ⅳ)」であり、そこで示した以下3点の原則は今でも変わらない。

  1)西高は移転する必要はない。
  2)新しい校舎は史跡と共存し、久松山の文化的景観の質を向上させる
    ように計画されるべきである。
  3)籾蔵跡地の深掘りを停止し、史跡の追加指定候補地とする。

 かつて「文化財はペットと同じ」であり、東大寺転害門とそこに群がる野良猫の存在意義がほぼ等価だと書いたことがある。今回の震災をみれば明らかでしょう。文化財被害に対する対応はいちばん最後になるんです。まずは「衣食住」からだ。被災者の生活を安定させ、子どもたちにまともな教育を受けさせることが優先されなきゃいけない。史跡の一つや二つ、震災のために消えたとしても、日本国民にとって、あるいは世界人類にとって、たいしたことではない。今回の震災で壊れた文化遺産がどれくらいあるのか知らないが、それをいま完全復旧したいと声を大にして言える方がいらっしゃるでしょうか。
 衣食足りて、礼節を知る。衣食足りてこその「文化」ですよ。


 いまはできるだけ東北の復興に税金を集中投入すべきであり、一例をあげるならば、鳥取城跡で構想している復元事業や事前発掘調査などの経費はすべて東北復興の資金にまわしたっていいのではないでしょうか。偽物金ピカの呉橋や櫓を建てて、いったい何が嬉しいのか。だれが幸せになるのか。西高も現校舎を鉄骨構造補強して、しばらく辛抱するしかありません。だから、当座の対応としてはA案が妥当ではある。しかし、A案の前提とされる「将来的な移築」の文言は削除すべきでしょう。将来的に移築するか否かは耐震構造補強を終え、震災対応が一段落してから、もういちど考え直せばいい。これ以上、無駄な時間を費やすのは意味がないので、委員会など二度と編成しないで、いきなり県知事と文化庁のトップ会談で決めればよいと私は思う。

 文化庁の言うことがなにもかも正しいなどということは<決して>ありえない。文化財の世界においても、これまで霞ヶ関が権力を一極集中させてきたが、そういう時代も終わらせなければならない。官僚も政治家も失敗を繰り返している。鳥取県知事は、橋本徹をやっつけたときのように、文化庁の過ちを正してやるという気概をもって、地方の意見を主張してほしい。





  1. 2011/06/05(日) 00:24:09|
  2. 史跡|
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