おちらと木綿街道 -前夜祭- 5月28、29日と平田市木綿街道へと足を運びました。年度初めの忙しさにかまけて、じつに2ヶ月ぶりの平田訪問となります。今回の目的は、木綿街道の一大イベント「おちらと木綿街道」と「city switch 2011 Izumo」への参加。ちなみに1年生の匠君も同行です。ここで、それぞれのイベントについて概要を下記しておきます。
おちらと木綿街道 木綿街道の町並み全体を使用したイベントを展開し、おちらと(出雲弁で「ゆっくりと」の意味)町並みを楽しんでいただくことで木綿街道の認知度を高め、雲州平田特有の価値ある町並み景観の保存の必要性をアピールすることを目的とし、2001年から継続して開催している
city switch 複数国と都市をつないで建築家や都市計画家の交流を通じ、都市デザインの知識やアイデアを交換し、都市の再生を考えていくプロジェクト。2008年から始まり、木綿街道をフィールドとするのは3回目。東京と出雲の建築家、全国の大学・大学院の学生による今回の取り組みは旧石橋酒造の再生活用を考えるワークショップの開催と、イベントへの参加である。
平田に到着したのは15時を過ぎたころ。イベントの中心施設となる「旧石橋酒造」はあわただしく準備中。普段は朗らかな笑顔で迎えてくれる事務局のHさんにその余裕はなく、Kさんも、この日の夜に行われる前夜祭での活動報告の準備に追われて仕事場に缶詰状態でした。さっそく、我々もお手伝いすることに。
まずは、夜の木綿街道を彩る「行灯」(↑↓)の設置準備です。この行灯は、出雲建築フォーラムの手によるものです。出雲の設計事務所で働く若手所員さんを中心に制作されました。これらの行灯は、イベント終了後、福島に送られ、震災復興イベントでも「復興の光」として灯されるそうです。今回、東日本が未曾有の大震災にみまわれて、木綿街道のみなさんもイベントの自粛を考えたそうですが、こういった素晴らしい着地点を示されています。
また、今回のイベントでは酒蔵を利用してのチャリティーコンサートも行われています。会場となる酒蔵では、city switchの学生が作業中。コンサート用の舞台背景(↑↑)を制作していました。舞台背景といっても大掛かりなものではなく90cm幅の布を複数枚垂らすだけ。でも、アート系の学生が考案しただけあって、設置方法やライトアップにより、見事な空間が演出されていました。文化財の活用を考えるとき、「リバーシブルな改変」が望まれますが、そういった意味では、このようなやり方は好ましいのではないでしょうか。
そうこうしているうちに、前夜祭の時間に。前夜祭では、昨年木綿街道が受賞された「まちづくり総務大臣賞」授賞の報告、そして東京でサックス奏者をされている持田醤油店のご子息によるチャリティーコンサートが開催されました。会場はおよそ100人ちかい人で溢れ、副知事や出雲市長の姿も。平田のような決して大きくない町に、これだけの人が集う。あらためて、旧石橋酒造のような地域の文化財の存在意義を感じます。
余談ですが、会場となった旧石橋酒造は6月1日より出雲市の所有になりました。市長は「これまで行政は、地元住民にひっぱられる形で支援してきた」と言っていましたが、本来、それが理想的な関係です。ただ、そのような相互関係だけでは前に進む事ができない現状に、木綿街道振興会はじめ地元住民の方がたは直面しているのではないでしょうか。今後、旧石橋酒造を中心として、どのような公開、そして活用のかたちを考えていくのか、地元の方がたがこれまで守り、受け継いできたものを行政側がどのような形で協同していくのか・・・
コンサートの締めくくりは、『ふるさと』。サックスの調べが場内に響き渡るなかで、震災復興の祈りだけではない、交錯するさまざまな思いを感じた前夜祭となりました。(続/タクヲ)
VIDEO
2011/06/06(月) 00:00:16 |
講演・研究会 |
トラックバック:0 |
コメント:0