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鳥取環境大学 環境情報学部 建築・環境デザイン学科 浅川研究室の記録です。

木綿街道のこと(ⅩⅠ)

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町家の調査(2)

Sh邸(中町)
 2日目に調査したSh邸は、木綿街道の範囲外にあたる中町の切妻妻入型町家である。中町は本陣などが置かれて平田の中心であった本町の南側に位置し、湯谷川を境にしている(↓)。寛政四年(1792)の「万差出帳(よろずさしだしちょう)」に「中町」の記載はみられない。また、明治29年の『平田町沿革誌』によれば、中町の東側は嘉永六年(1853)頃、西側は明治4年(1871)頃に新設されたという。
 このように街区は比較的新しい時代の開発だが、貞享四年(1687)の川違い(流路の整備や治水工事)以降、「杵築往還」の一部となっている。それまでの往還ルートは本町から湯谷川沿いを西に向かう道であった。杵築往還の敷設から中町の成立までは200年近い時間差があり、町の成立年代についてはもう少し詳細な調査が必要だろう。ちなみに、Sh邸は中町の西側に位置している。
 Sh邸は、切妻妻入型の町家で外壁は漆喰塗り。また海鼠壁の意匠もみられ、平田における代表的な町家の類型といえるだろう。ここで、漆喰塗り町家の定義についてふれておきたい。漆喰塗りの町家については、川越の「土蔵造」の町並みがよく知られている。それに対して、昭和40年代に実施された京都大学上田篤研究室(都市計画)による平田町並み調査では、『町家・共同研究』(1975)に「塗り家」という呼称を用いて定義している。土蔵造との違いについては不明ながら、強いて言うならば桁や梁・庇は木部を露出させている町家(↑)が「塗り家」であり、木部を土で隠している町家が「土蔵造」ということだろうか。ひとまず当面は上田研究室に倣って「塗り家」造と呼ぶことにしたい。

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 Sh邸(↑)は明治末~大正頃(家伝)の建築で、間口2間半の敷地にオモヤ(奥行10間)、中庭(奥行2間半)、ハナレザシキ(奥行4間)が並ぶ。オモヤとハナレザシキは中庭に併設した廊下でつながっている。オモヤの平面は、南側1間を通り庭とし、北側2間半に前ドマ・六畳間(ミセ)・六畳間・八畳間(イマ)そしてダイドコロが配される。先日の佐々木邸で判明した「L字型のドマ」を確認できる好例で、前面ミセの増築とダイドコロを改修した以外は当初の原型をよくとどめている。(↓)

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 小屋組は棟木を束で支え、軒桁と束柱を斜めに架けた梁(登り梁)でつなぐ「登り梁組」で、軸部は折置組になっている。今後、小屋組による年代判別の資料としたい。
 外観は、高2階の漆喰壁に、腰壁の四半貼と二階庇上部のイモ貼の海鼠壁、そして庇の持ち送りの彫刻と変化に富んだ意匠がみられる。また、来待石の切石で高土台とし、隣棟との間を二尺幅のヒアイ(庇合)とするなど、平田の町家の特徴が随所にみられる。四棟並ぶ「切妻妻入塗り家造」の一棟として往時の平田の町並み景観を形成する重要な建物である。

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 Sh邸を含む隣り合う4棟の妻入町家群(↑)は、都市計画道路に伴う河川の拡張により撤去されることが決まっています。Sh邸の家主さんは、撤去に伴ってオモヤとハナレザシキを別々の敷地に移築する予定でして、ハナレのほうを隠居屋にしたいそうです。こういう事実を知って、教授は「国道から木綿街道に観光客を誘導する媒体として活用したら良いだろうに」と言われました。撤去予定の4棟を国道431号線沿いに移築して、車道から視界に納まる「木綿街道」の入口を強くアピールするのです。平田町内には、同じように拡張工事により撤去が決まっている切妻町家が、上記4棟を含めて15棟近くあるようです。それらを活かしていく施策やアイデアが求められていると思うのですが・・・
 余談ですが、調査から帰鳥後、微熱と頭痛が治まりません。摂氏30度を優に超え、うだるような暑さのなかでの調査で軽い熱中症を起こしたようです。次回は8月末に3日間の町家調査を予定していますが、それまでに調査計画と熱中症対策を万全にしておきたいと思います。
 最後になりますが、今回調査を快諾してくださったSa家・Sh家の皆様に厚く御礼申し上げます。そして調査のサポートをしてくれた首都大学院のT君、ありがとうございました。またよろしくお願いします!(タクヲ)

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↑1年生ながら調査に参加してくれた匠&キム3号もありがとう!!

  1. 2011/08/14(日) 08:16:57|
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