ユーチューブ漁りをしていたら、上の映像にでくわしました。懐かしい。"Her Town Too"は1981年の作品でして、まる30年前に流行った唄なんだ。この曲を初めて聴いたのは、ホームデンティストの診療室だった。ラヂオから流れでてくるハーモニーを耳にした瞬間、JTとJDのコーラスだと分かって仰天した。夢の競演だものね。これだけ対照的なボイスの二人が一緒に唱って、じつに綺麗に仕上がってます。 ここにいう Her=彼女 とは、カーリー・サイモンのこと。熱々だったJT&サイモン夫妻が破局を迎えつつあったころの曲で、「ここはぼくの町だけど、彼女の町でもあるんだ」と消えゆく恋の舞台を懐かしんでます。邦題は「憶い出の町」。「おもいで」に「憶い出」をあてるとはね・・・さすがプロだ。 ジェイムズ・テイラーは、ほんとうに良い曲を書くシンガーソングライターだと思います。ところが、もうひとつ日本人受けしていない。演歌好きの日本人は、こういう淡々とした曲調よりも、情緒的なメロディを好む傾向がある。その点、J.D.サウザーのほうが日本向きかもしれません。「ユア・オンリー・ロンリー」とか「ラスト・イン・ラブ」などの、泣きが入るメロディに日本人は弱いから。 JTのメロディは乾いている。乾いて淡々としているからこそ、切なく聞こえる。現象学みたいなもんかな。 メロディライン以上にコードワークが見事ですね。JDだろうが、ジャクソン・ブラウンだろうが、イーグルスだろうが、絶対真似のできない和声を展開させています。あえてあげるとすれば、スティーリー・ダンとの共通性がないことはなくて、それは即ちジャズの影響なんだけど、JTのギターコードはジャズ・ギタリストが使うような難しいものではありません。開放弦をうまく使って、シンプルな指おさえで複雑な和声を奏でている。おまけに、リフを多用しています。リフといえば、ロックやブルースにつきものですが、フォーク系のバラードでリフを使う人は少ない。 「Her Town Too -憶い出の町」のリフも単純ですが、格好いい。ジミー・ページはめちゃくちゃかっこいいハードロックのリフを大量生産しましたが、かれのリフも低いフレット位置で弾ける単純なものが多いと聞いています。難しいかどうかが問題じゃない、かっこいいかどうか、なんです。その点、JTのアコギ用リフは最高ですね。"Her Town Too"も素人さんのカバーや、リフの練習方法がユーチューブにいくつかアップされています。お暇なら、下も参照ください。