町家の調査(6) 8月末調査からわずか3日後の9月3日(土)、平田を再訪しました。すでに報じたように、4日に松江で神魂神社と真名井神社の調査が決まり、その前日を利用して雲州「木綿街道」の中核となる旧石橋酒造を深く分析しようということになったのです。
旧石橋酒造 旧石橋酒造(↑)については、これまでにも何度かブログに記載されているが、改めて整理しておきたい。本建物は2008年より空き家となっていたものを出雲市土地開発公社が所有し、今年度から出雲市に移管された。現在は、町並み調査の依頼元である木綿街道振興会によって管理され、まちづくりの核としてワークショップなどのイベントが開かれるなど、活用の方法を模索している。建造物自体をみても「切妻妻入塗り家造り」の形式で、オモヤに付属して前背面に庭(↓)を設けたハナレがあり、昨年に国の有形登録文化財となった本石橋家(旧石橋酒造の本家)とともに木綿街道周辺でも有力な家柄であったことがうかがえる。
旧石橋酒造は、新町を通る街道筋の西面に位置している。敷地はおよそ800坪で背面は片原町内の岡屋小路に面しており、建物が密集する町内にあって広大な面積を占めている。敷地内にはオモヤやハナレのほか、蔵や工場(コウバ)など酒蔵の営業当時のままの状態で10棟以上の建物が配される。
調書を作成する際には、所有者の聞き取りなどから建物名や部屋名を確認する必要があるが、今回はそれができなかったため、オモヤの他は「ハナレ」2棟、「蔵」2棟、「工場」4棟、「倉庫」2棟と「付属屋」に類別してそれぞれに番付をおこない類別した。


町並み景観に影響する街道沿いは南側八間をオモヤ、北側六間を門付きの塀としており、塀の内部は庭園1を挟んでハナレ1が建つ。ハナレ1(↑)は街道沿いからも眺めることができ、景観に寄与している。内部はオモヤと繋がり、背面にも庭園2があって前後を庭に囲まれる格式の高い座敷となっている。また、庭園に面して縁が廻され、蔵1および附属屋(雪隠や風呂)と連絡している。オモヤ南側には通り庭を介して倉庫1が建つ。
これらの建物と敷地中央南側に建つハナレ2を含めた部分が、店舗および居住の機能を成していたと考えられる。一方で、醸造場としての空間は、敷地西側半分(↓)に隣立する工場1~4と倉庫2となっている。麹室や貯蔵室、杜氏の宿泊部屋などがそのまま残っており、醸造の行程や杜氏の生活などを知るための重要な遺構といえる。
このように、敷地全体にわたって「平田の醸造元酒蔵」を垣間見ることができ、貴重な産業遺産としての価値を有している。(続・タクヲ)
- 2011/09/23(金) 08:33:32|
- 建築|
-
トラックバック:0|
-
コメント:0