ダイアナ・クラール(Diana Jean Krall, 1964- )はカナダ生まれの女性ジャズ・ピアニスト、歌手。ボストンのバークリー音楽院を卒業。同級生に小曽根真がいた。1990年代以降に最も成功したジャズ・ボーカリストの一人で、2001年に発表したアルバム『Look of Love』が300万枚のセールを記録。大スターの仲間入りを果たした。2003年末にエルヴィス・コステロ(1954-)と結婚。3年後に双子の男児を出産した。【教師註:わたしゃ、悔しい】 『ライブ・イン・パリ』はパリのオランピア劇場でのライヴ盤(2002年)。ギター入りのピアノ・トリオのバックにヨーロッパ交響楽団を配すフル・ストリングス構成で、スタンダードナンバーやヒット曲「ルック・オブ・ラブ」を聞かせてくれる。 クラールは自らピアノを奏でるほか、伴奏楽器としてギターを重視しており、ガット・ギターとフルアコースティック・ギターを併用し、二人のギタリストをバックに配している。とりわけクラールはギタリストのチョイスが良いことで知られている。初代ラッセル・マローンの評価も高かったが、『ライブ・イン・パリ』では2代アンソニー・ウィルソンが素晴らしいバッキングとソロを披露している。 もともとジャズという音楽分野において軽視されてきたギターという楽器は、歌伴において特筆すべき存在に入れ替わる。マローンやウィルソンのような名うてのギタリストでさえも、ボーカルなしのインストルメンタル演奏時には光り輝くことは少ないけれども、いったん(女性ボーカルの)歌の伴奏にまわるや、目の輝きが変わり、音楽の質も俄然高くなる(と思うのは私だけだろうか)。ギターはソロ楽器ではなく、「歌」と複合することで威力をますことをクラールとウィルソンのコンビが見事に証明している。