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鳥取環境大学 環境情報学部 建築・環境デザイン学科 浅川研究室の記録です。

あなうらめしや(Ⅱ)

カレーうどんの栄華

 一通のメールが触媒となって、無性にカレーうどんが食べたくなった。「カレーうどんが食べたくなった」と返信すると、相手もまた「食べたくなった」と言って返々信を打ち返してきた。

 300円でカレーうどんを食べさせてくれる店が弥生町にある。ぼくは学生二人をひきつれて、その店に行くことにした。どんな料理も300円の居酒屋だ。カレーうどんを注文したのは、わたしだけだった。タクヲは肉や野菜をビールのあてにして満足している。ヒノッキーは焼きうどんを注文した。馬鹿だな。ここのカレーうどんが、どんなに美味いか、やつらは知らない。ヤマイチのカレーうどんはカレーのルーをうどんにぶっかけてるだけだが、ここエイガでは出汁でカレーを割っている。これが関西風カレーうどんの定番だ。できれば、白ネギをたっぷりからませて欲しいところだが、値段が値段だけに無理は言えない。
 店は閑散としている。しかし、大将は、午前1時から4時ころまでがいちばん儲かると教えてくれた。「ボーイズバー」の出前が多くなるのだという。この時間に女性たちはホストクラブもどきのバーにたむろしていて、しかも、おやじどもより、ずっと気っ風がよいんだそうである。お金の使いっぷりが派手なんだ。灯りの消えた弥生町にも、活力漲るスポットがあるということを初めて知ったが、もちろん私どもが立ち寄れる場所ではない。

 そういえば、先週の古民家イタリアレストランでは、「鳥取の離婚率が高い」という話題がでた。奈良なんかに比べても、ずっと離婚率が高いのだそうである。その原因は、男どもが働くまともな職場が少ないからだろうという。要するに、男のサラリーが低いのである。甲斐性のある男が少ないから、女たちは男から離れていく、というのが最年長者Oさんの見解であった。Oさんは病院を経営しているので、女性看護師の給料をよく知っている。彼女たちの給料にみあうだけの額を稼げる職場が県内には多くない。だから、家庭における男性の地位は低く、離婚率が高くなるのだとOさんは力説した。

 たしかに、わたしも小遣いは少ない。300円のカレーうどんを食べる所以である。でも、美味いな。この満足感を自慢しない手はない。さっそく触媒メールの送信者にレポートした。

   「カレーうどん、おいちい♂」

 「いいなぁ、羨ましい」との返信がただちにあり、「一碗配達しやしょうか、お代は要りませんぜ」と返々信したのだが、メール交信はそこで途絶えた。うぅぅん、ちょっとさらかいすぎたかな。気分を害しているかもしれん。カレーうどんの恨みは怖いな・・・

 大学に戻ってソファに横たわった瞬間、電話が鳴った。「一碗配達」メールにいま気づいたという。「残念でした、もう大学だよ」というと、ため息が聞こえる。よほどカレーうどんを食べたかったようだ。
 それから長電話になった。カレーうどんをめぐって、二人の関係が「絶交」に至るかどうかまで話は進んだ。どういうわけか、向こうのほうが余裕があって、癪に障る。カレーうどんを食べたのは、わたしのほうだというのに。




  1. 2011/10/26(水) 00:43:23|
  2. 食文化|
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