野良猫から地域猫へ(2) 15日(木)午後3時半から1時間ばかり、Tさんへのインタビューが実現しました。取材担当は教授、上村、福田です。
車に挟まれていた子猫 Tさんは元々猫を飼われていませんでした。2年前、自家用車を停止するたびに猫の鳴き声がして不思議に思い、ガソリンスタンドで点検してもらったところ、1匹の子猫が車の下に挟まっていることがわかりました。挟まっていた猫は死んではいないけれど衰弱しており、外も寒かったため、深く考えずに猫を家に連れて帰ったそうです。生まれて2ヶ月ぐらいの子猫で、ようやく乳離れしてモノを食べれるくらいの大きさだったから、飼うつもりは全然なかったのだけれども、元気になるまで餌をやることにしたのです。猫はしばらくエサをあまり食べませんでしたが、1週間過ぎた頃から食べるようになりました。その後、猫が元気になったため外に出して逃がしたのですが、夕方になると帰ってきてしまい、仕方なくエサをやるとまた戻ってきてしまったそうです。しばらくその繰り返しが続き、結局、家に猫を入れて飼うことになったそうです。この初代の猫が「ピョン吉」です。
ピョン吉は、しばらくして、血のつながりがある(らしい)メス猫を連れて戻るようになりました。そして、そのメスは子猫を生みました。
地区の猫を引き取る Tさんの近所では、2人のおばあさんが猫を飼っていたそうです。一方のおばあさんは複数の猫にエサをあげていたそうですが、1匹の可愛い猫だけを家に入れていて、もう一人のおばあさんは猫を何匹か飼っていたのですが、子猫が生まれると外に逃がしていました。そのため地区に猫が増えていったそうです。ピョン吉とその連れ合いも、おばあさんの可愛がっていた猫と顔が似ているので、どちらかのおばあさんの猫の子供だろうとTさんは推測されています。二人のおばあさん以外にも、どこかのおじいさんがやってきて、猫たちにエサやりをされていたとも聞きました。
その後、おばあさんが2人とも病で倒れられ、飼われていた猫たちが途方にくれていることを不憫に思い、Tさんは多くの猫を引き取る決断をされました。猫のなかには、Tさんに懐かず、逃げていったものもいます。結局、Tさんはいま、オス猫5匹とメス猫5匹の、計10匹を飼われています。
去勢手術 Tさんはメス猫だけ去勢手術をされています。動物病院で去勢手術を受けるには、猫に名前が必要です。野良猫ではなく、飼い猫であることを示す必要があるのです。だから、猫には適当に名前をつけました。病院では、まず予防接種をします。予防接種の注射をしていないと、避妊手術を受けられません。経費は予防接種が5,000円、避妊が30,000円で、すでにメス猫5匹以上去勢したので、200,000円以上かかったそうです。Tさんは「去勢をした猫に対しては飼い猫として責任をとらなければいけない」とおっしゃっいます。環境省のガイドライン(前掲2010)では、「オス猫、メス猫ともに生後6ヶ月までに去勢していると、発情のない穏やかな生活が送れる」と指摘してありますが、いまのところ、去勢をしていないオス猫はおとなしくしているそうです。
猫に関する苦情 Tさんのお母さまが猫嫌いらしく、Tさんは自宅ではなく、会社で10匹の猫を飼っています。猫を屋外には出さず、会社の室内で飼っているのです。前掲ガイドラインには、犬猫は「室内で飼うべし」と明記してあり、Tさんの飼い方は正しいと言えるでしょう。ただ、ピョン吉とだけは、ほとんど毎日散歩にでるそうです。その場合、首輪にロープをつけて決して逃げないようにします。
社員には猫好きも猫嫌いも両方います。猫好き社員は、頼んだらエサや水をやってくれるようですが、猫嫌いの社員や、一部のお客さまは猫の「臭い」を嫌がります。一方、近隣住民からも苦情がが寄せられています。その苦情は、Tさん本人に対するものではありません。保健所に対して苦情を告げ、その苦情が間接的にTさんに伝えられてくるのです。猫の喧嘩の鳴き声がうるさい、猫が植木鉢を倒した、庭に糞尿があるなどの苦情だそうです。Tさんは「これ以上猫を増やしたくない。迷惑がかかっているならより迷惑がかからないような飼いかたをする」とおっしゃっていました。
これまで多くの愛猫家のビデオを視たり、インタビューをしたりしてきました。愛猫家にとって、猫は何にも代え難いほど「愛おしい存在」です。しかし、愛猫家の近隣に住む住民たちは、猫によってしばしば迷惑や被害を受けています。だからこそ、環境省は「住宅密集地における犬猫の適正飼養ガイドライン」を策定したのです。飼い猫の場合、このガイドラインにしたがって適切な飼育をすることは難しいことではありません。躾け、去勢手術、室内飼育の3原則によって、近隣に対する猫の迷惑行為や異臭は大きく減少するでしょう。しかし、問題は野良猫です。野良猫を地域で管理する「地域猫」の制度は、現状では机上の理想論のように思えてなりません。これを現実の施策とするためには、行政がてこ入れして活動力のあるNPO等をたちあげる努力をするしかないのではないでしょうか。(環境政策経営学科1年F.K)
- 2011/12/22(木) 00:02:18|
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