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鳥取環境大学 環境情報学部 建築・環境デザイン学科 浅川研究室の記録です。

独眼龍の城

0127仙台城01


仙台城の石垣崩落

 3.11以来、「優先順位」という言葉をしばしば耳にする。大震災以降における予算配分の優先順位、ということである。当然のことながら、原発事故の収束、除染、被災者の生存・生活に係わる施設等の復旧などが最優先事項であり、「文化財は最後」というのがだれしも共有する認識であった。3次補正予算が成立し、ようやく文化財復旧の事業が動き始めたようだが、文化財の内側でも優先順位がある。わたし個人の意見を述べておくと、やはり被災者の生存・生活に係わる物件に優先権があり、その点、「遺跡」は最後の最後におしやられても仕方ないものではないか。文化財に指定・登録された民家・社寺建築などの建造物には、住まい手や宗教活動に関わる人びとがいる。それらの関係者が安全かつ安心に利活用できる状態に早く復旧しなければならない。一方、たとえば縄文集落遺跡で整備された復元建物や覆屋が倒壊したとしても、人間の生活・生業にはほぼ100%影響を与えない。だから、しばらくのあいだブルーシートを被せて放置しておくことになるだろう。
 仙台城の石垣は大地震によって広い範囲で崩落し、きわめて危険な状況を招いている。生活道路に積石が雪崩落ち、車道に柵がめぐらされて、通行禁止になっているのである。当然ことながら、優先順位は上位にあり、第3次補正予算で石垣修復の事業が始まった。

0127仙台城02


 仙台城は伊達政宗の居城として知られる全国屈指の近世山城だが、国の史跡に指定されたのは平成15年(2003)に下る。つい最近のことだと知って、驚いた。本丸の一部を護国神社、二ノ丸を東北大学のキャンパス、三の丸を仙台市立博物館が占めていることが影響したのだという。しかも、史跡内に車道が走っている。施設相互の連絡のためばかりでなく、市民の通勤路の一部としてしばしば渋滞を引き起こすほどの車量があったと聞く。おまけに、仙台はパンダ騒動で揺れている。城内道路は、パンダを飼う動物園のアプローチになるので、パンダお目見えまでには、どうしても石垣を復旧せよ、とのお達しが届いているそうだ(こんなこと書くと、ジャニーズ批判の火に油を注ぐかな?)。
 石垣修復の難しさは、鳥取城で思い知らされている。あの複雑な石垣の立面を正確に測量し、一つひとつの石に番付し、解体して積み直す。大変な仕事であり、事を急ぐと、誤った復元になりかねない。しかし、だから、「完璧な復元工事」を強く要求すべき時期でもないだろう。石垣の積み方と生活道路の復旧のどちらを優先すべきかと問われれば、パンダの問題を棚上げにしても、「生活優先」であろうとわたしは思う。限られた時間内にできるかぎりの努力をして復旧していただくしかない。

0127仙台城03


0127仙台城04


 仙台城の石垣には仰天した。凝灰岩の切石が整然と積み上げられている。まるで近代の石垣のようだと感想を述べたところ、地元では「いや、あれは寛文(1661-1672)の石積です」と自信をもって反論された。政宗の時代の石垣は寛文の石垣の下に埋まっており、その写真をみると、親しみ深い風貌をしているし、奥のほうに行くと切石積が突然、乱石積の石垣に変わったりする。
 翌日、松島の瑞巌寺を訪問して、凝灰岩切石積を江戸時代前期とみてもおかしくはない、という思いが芽生えてきた。ヤグラをみたからだ。凝灰岩の巨巌を切り込んだ巌(いわや)はみごとな直方体に切り取られている。ああいう石工の技術が中世からあったわけだから、それが近世の石垣築造に活かされなかったとは言えまい。

0127仙台城05


 最後に史跡の問題に戻ろうか。平成15年に国の史跡となった仙台城の敷地には、護国神社、東北大学の施設、仙台市立博物館(↓)が建っている。これらの建物は、近い将来、撤去・移転を求められるのであろうか。そんなことはありえない、とだれもが思っている。地元もそうだし、文化庁もそうであろう。仙台城を所管する仙台市の博物館は三ノ丸に立っており、移転の可能性があるかと言えば、やはり答えはノン。「仙台城研究の拠点ですからね」と案内役のSさんは自信満々に答えた。
 「史跡」とは何か。それは「ある歴史性を共有する一定の場所」である。上にどんな建物が建っていようと、場所に歴史性はある。
 鳥取城三の丸に建つ鳥取西高校は、耐震構造補強による現状維持が決まった。強制移転でなかったことに安堵しているけれども、あの狭苦しい校舎でこれからも高校生たちが学んでいくのかと思うとしのびない。「史跡公園の一部としての高校キャンパス」というわたしたちのアイデア(鳥取城三の丸高等学校プロジェクト)を実現してくれる為政者の出現を待つばかり・・・

0127仙台城06市立博物館

  1. 2012/02/02(木) 00:00:04|
  2. 史跡|
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