ケリー 仙台の夜にジャズ喫茶を所望した。知人の一人がジャズ好きで何軒か行きつけの店があり、国分町の「ケリー」という店にご案内いただいた。16席しかない狭いせまい店で、カウンター席とレコード棚を挟んで大きな四角テーブルがあり、そのテーブルで相席となった。『アンダーカレント』が流れている。ビル・エヴァンスの透明なピアノにジム・ホールの甘いギターが融けこんでいく。学生時代、よく聴いたアルバムで、まだLPが家に残っているはずだ。
バーボンソーダを注文すると、まもなくマイルスの『いつか王子様が』に変わった。わたしは本ブログで何度かマイルス嫌いであることを表明しているが、このアルバムはいいね。なんたって、ピアノがウィントン・ケリーだから。そう、この店の名「
ケリー」はウィントン・ケリーからとったものなんだ。マイルスのミュート・トランペットの枯れたメロディからコルトレーンのソロに変わるとやや無粋に聴こえる。このころのコルトレーンはまだマイルスを超えていない。ポール・チェンバースのベースが効いてるね、とくに出だしには驚くな・・・

知人は、さかんにリクエストを迫る。バーボンソーダを3杯あけたところで、また迫られ、しょうがないから、
「ダイアナ・クラールの
ライブ・イン・パリスか・・・ルック・オブ・ラブでもいいですよ」
とお願いすると、対面にいた線香さんが「かっこいいですね」と呟いた。かっこつけたつもりはまるでなくて、ただダイアナ・クラールが聴きたかっただけなんだけど、ジャズを知らない人にはそう聞こえるのかな。
リクエストして、少々反省。CDの音はクリアすぎる。やはり50~60年代のLPを大スピーカーで聴くべきだった。あの時代の音が味わえる場所なんだから、CDは控えたほうがいい。

酒をシングルモルトに変えた。アイラのボウモア12年があるという。もちろん、ストレートさ。小さなグラスのボウモアを舐めるように、3杯おかわりした。知人のリクエストはバイブだった。ヴィブラフォンを聴くと、頭がびんびんに痺れてくると彼はいう。聴いたことのないアルバムだった。ミルト・ジャクソンほど黒くはないし、ゲイリー・バートンほど白くもない。ボビー・ハッチャーソンでもない。マスターがやってきて、名前を教えてくれたが、覚えにくい名前で、酔っぱらった耳には馴染んでくれなかった。

深夜まで痛飲し、外にでた。鳥取の寒さとは違う。鳥取の場合は湿っぽい根雪が氷になっているが、仙台は雪がほとんどない乾いたアイスバーンだ。これほど寒いのに、盛り場の客足はいっこうに衰えていない。活気と景気が戻ってきていることを実感しつつ、居酒屋の暖簾をくぐると、昭和レトロの店だった。壁の一部はブリキにしており、板壁には昭和のポスターを貼りつけ、天井から提灯を吊している。音楽はキャンディーズ、由紀さおり、にしきのあきらなどの歌謡曲オンパレード。
しかし、わたしたちを例外にして、昭和生まれはみあたらない。客は若者だらけだ。そういえば、最近気づいたのだが、白帯くんは車中でこの種の歌謡曲ばかり聴いている。
- 2012/02/04(土) 00:00:57|
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コメント:2
ヴァイブは、デイヴ・パイクの「パイクスピーク」だと思います。
ピアノはビル・エヴァンスです。
ヴァイブならこれとマスターに薦められたものです。
たぶんそれでしょう。
- 2012/02/09(木) 22:03:22 |
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- 知人 #90N4AH2A
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ご教示、ありがとうございます。パイク&エヴァンスのほかにも、バグス&トレーン、バグス&ウェスなどのコラボがあることを知り、バイブのアルバムを数枚取り寄せました。が、家のスピーカーではとてもジャズ喫茶の迫力はでません・・・あの空間が別格ですね。
- 2012/02/11(土) 01:29:18 |
- URL |
- ルパン #90N4AH2A
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