「居住」という二文字を「いじゅう」と読んだのは黒帯である。6期生のなかでも成績上位の学生であった黒帯にしてこうだから、あとは推して知るべし。「住居」を「じゅうきょ」と読むにも拘わらず、「居住」を「いじゅう」と読むのはなぜか。「いじゅう」は「移住」ではないか。
以上はたんなる前ふりである。
仙台出張の経由地、上野のコンビニで『自遊人』という雑誌を発見。特集は
「移住」という選択肢。となっている。145頁オールカラーの雑誌は税込み680円という安価であり、躊躇することなく購入した。
雑誌『自遊人』は2000年に創刊された。その4年後に「半農半X」のライフスタイルを模索し始め、2006年に編集オフィスを東京から新潟県南魚沼市に完全移転した。豪雪地帯の里山に移住してすでに6年が経過している。その、自らの体験を中心に特集を組んだものである。詳細は、雑誌を読んでいただくに限るので、冗長な解説は控えるが、わたしがとくに「田舎暮らし」で重要だと感じたところを抜粋引用させていただく。
まずは、「ほたるの里」という自然公園に建つ元宿泊施設のリノベーションについて(p.42)。宿泊施設が編集オフィスに生まれ変わったのである。
よく「設計は誰が?」と聞かれるのですが、すべて工務店との現場合わせです。
壁を壊して、柱を抜きながら「この部分の仕上げはこんな感じで」とスケッチを
描いて渡していったので、予算も激安。東京ではあり得ない広さとコストを実現
しています。
劇的ビフォーアフターの「匠」、すなわち建築家は要らないという指摘である。改装ならば確認申請も不要であろう。つぎに自宅について(p.45)。
移住と同時に温泉大浴場付きのマンション(93㎡)を650万円で購入。古民家
暮らしもいいのですが、雪国で古民家に住むのは大変です。仕事場の雪掻きも
ありますし、春から秋は農作業もあるので、「できるだけ生活のベースはラク
にしたほうがいい」とマンションを購入しました。(略)ちなみに東京から
移住したほとんどの社員がマンションを購入・・・(後略)

移住の鍵を握る重要な発言である。苦節9年半、わたしは鳥取で木造住宅に住み続けた。2軒の木造住宅は、いずれも昭和40年代に建設された「文化住宅」であったが、なにより冬の寒さが尋常ではない。深夜に帰宅し、ファンヒーターのスイッチを押すと気温は2~3℃と表示され、それはいつまで待っても10℃を超えることがなかった。家内の右半身が麻痺してからは木造住宅との不適合はさらに深刻になった。土間と畳間との段差、和式トイレ、深いバスタブなどが大きな障害となったのである。「文化住宅」にしてこうなのだから、古民家となれば、さらに大きな負荷を強いられる。民家を調査し、修復してきた我々だからこそ、「古民家に住む」ことの労苦が身に沁みている。【続】
- 2012/02/09(木) 00:00:21|
- 未分類|
-
トラックバック:0|
-
コメント:0