fc2ブログ

Lablog

鳥取環境大学 環境情報学部 建築・環境デザイン学科 浅川研究室の記録です。

雇いのステンレスピン -池田家墓所玉垣の修復

20060123174608.jpg


 池田家墓所の修理現場を訪問した。清源寺跡の前にプレハブが建っていて、これから接合する玉垣の柱や笠石を並べており、参道沿いの露天の現場では光仲墓玉垣の石材を整理中であった。また、墓域にあがると、金三郎墓をビニールハウスが覆っていた。ビニールハウスは平面が5.5×5.0m。金三郎墓修復のための素屋根で、経費は13万円と極安値である。光仲墓のほうは、玉垣をとりのぞかれたまま、墓碑を風雪にさらしているが、白銀にくるまれたその姿は、いつもよりも神々しい。

20060123174543.jpg

20060123174553.jpg


 今日、プレハブを訪問すると、ちょうど金三郎墓玉垣の石柱接合のための「穿孔」を始めるところであった。設計では、接合部に雇いのステンレスピンを用いて、断裂した上下の材の密着を強化することになっており、ピンを挿入するための孔を穿つ工程が必要なのである。しかし、金三郎墓は昨年修復した澄古墓よりもわずかに小さい規模の墓で、初代光仲墓に比べればはるかに小振りである。澄古墓の場合、石材が凝灰岩系の南田石(のうだいし)ではなく、花崗岩であるため、雇いピンはいっさい用いなかった。対馬宗主墓も規模の小さな墓が多いらしいが、接合には雇いピンを使っている。ただし、玉垣石柱の1辺は約15㎝と太く、ピンは径9㎜、長さ10㎝という小さなものである。光仲墓玉垣の石柱も一辺約15㎝だが、設計図で予定されているピンは径12㎜、長さ20㎝とやや大きい。以上のような先行事例を参考とするならば、金三郎墓程度の規模の玉垣では、石柱の破損状況がよほどひどくないかぎり、雇いピンは不要か、もしくは小振りのものでよいように思われる。
 ただし、空中に浮いて水平に並ぶ笠石には繋ぎのピンは必要であろう。とはいえ、金三郎墓笠石の場合、光仲墓のそれに比べればはるかに小さいから、ピンを2本も使う必要はない。小さめのピンが1本で十分ではないだろうか(光仲墓の笠石でも1本でよいという意見すらある)。
 雇いのステンレスピンが材の接合性を高めるのならば、ピンを入れておくにこしたことはない、とのご批判を頂戴しそうだが、ピンを挿入することによって、当初の石材に亀裂が発生する可能性があり、文化財価値を保護するためには、ケース・バイ・ケースで慎重に対応しなければならない。現場で石材を観察しながら、以上のような感想をもったので、保存会の事務局に報告したところ、基本的に合意いただいたので、おそらく以上の方針で修復が進むことになりそうだ。

20060123174614.jpg

20060123174620.jpg


 建具を新材にかえて改修された休憩所。いまキムが新しいガイダンス施設の設計案を考えているのに・・・

20060123175333.jpg

  1. 2006/01/23(月) 16:33:57|
  2. 史跡|
  3. トラックバック:0|
  4. コメント:0
<<下之郷遺跡58次調査に関するコメント | ホーム | 青谷の豆腐>>

コメント

コメントの投稿

管理者にだけ表示を許可する

トラックバック

トラックバックURLはこちら
http://asalab.blog11.fc2.com/tb.php/288-6dde1845

本家魯班13世

08 | 2023/09 | 10
Sun Mon Tue Wed Thu Fri Sat
- - - - - 1 2
3 4 5 6 7 8 9
10 11 12 13 14 15 16
17 18 19 20 21 22 23
24 25 26 27 28 29 30

Recent Entries

Recent Comments

Recent Trackbacks

Archives

Category

Links

Search