
池田家墓所の修理現場を訪問した。清源寺跡の前にプレハブが建っていて、これから接合する玉垣の柱や笠石を並べており、参道沿いの露天の現場では光仲墓玉垣の石材を整理中であった。また、墓域にあがると、金三郎墓をビニールハウスが覆っていた。ビニールハウスは平面が5.5×5.0m。金三郎墓修復のための素屋根で、経費は13万円と極安値である。光仲墓のほうは、玉垣をとりのぞかれたまま、墓碑を風雪にさらしているが、白銀にくるまれたその姿は、いつもよりも神々しい。


今日、プレハブを訪問すると、ちょうど金三郎墓玉垣の石柱接合のための「穿孔」を始めるところであった。設計では、接合部に雇いのステンレスピンを用いて、断裂した上下の材の密着を強化することになっており、ピンを挿入するための孔を穿つ工程が必要なのである。しかし、金三郎墓は昨年修復した澄古墓よりもわずかに小さい規模の墓で、初代光仲墓に比べればはるかに小振りである。澄古墓の場合、石材が凝灰岩系の南田石(のうだいし)ではなく、花崗岩であるため、雇いピンはいっさい用いなかった。対馬宗主墓も規模の小さな墓が多いらしいが、接合には雇いピンを使っている。ただし、玉垣石柱の1辺は約15㎝と太く、ピンは径9㎜、長さ10㎝という小さなものである。光仲墓玉垣の石柱も一辺約15㎝だが、設計図で予定されているピンは径12㎜、長さ20㎝とやや大きい。以上のような先行事例を参考とするならば、金三郎墓程度の規模の玉垣では、石柱の破損状況がよほどひどくないかぎり、雇いピンは不要か、もしくは小振りのものでよいように思われる。
ただし、空中に浮いて水平に並ぶ笠石には繋ぎのピンは必要であろう。とはいえ、金三郎墓笠石の場合、光仲墓のそれに比べればはるかに小さいから、ピンを2本も使う必要はない。小さめのピンが1本で十分ではないだろうか(光仲墓の笠石でも1本でよいという意見すらある)。
雇いのステンレスピンが材の接合性を高めるのならば、ピンを入れておくにこしたことはない、とのご批判を頂戴しそうだが、ピンを挿入することによって、当初の石材に亀裂が発生する可能性があり、文化財価値を保護するためには、ケース・バイ・ケースで慎重に対応しなければならない。現場で石材を観察しながら、以上のような感想をもったので、保存会の事務局に報告したところ、基本的に合意いただいたので、おそらく以上の方針で修復が進むことになりそうだ。


建具を新材にかえて改修された休憩所。いまキムが新しいガイダンス施設の設計案を考えているのに・・・
- 2006/01/23(月) 16:33:57|
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