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鳥取環境大学 環境情報学部 建築・環境デザイン学科 浅川研究室の記録です。

中国と私(Ⅴ)

 遠く離れて

――先生は2001年に鳥取環境大に移られて現在に至るわけですが、今は中国とのおつきあいはありますか。
 ないに等しい状況です。奈文研時代は中国出張ばかりで、他の国々に行かせてもらえなかった。中国はぼくにとって「海外」ではなくなっていました。その反動で、環境大学移籍後しばらくは東南アジアとヨーロッパに通い続けましてね。心地良かったですよ(笑)。中国で日常的に感じてきたストレスが全然ないんだから。中国には8年間行かなかったんですが、ここ2~3年、科研費の関係で、石窟寺院の調査に出かけています。日本の岩窟型仏堂と中国の石窟寺院を木造建築との関係に着目して比較研究しているんです。2週間後には、新疆ウィグル自治区クチャのキジル千仏洞などを視察する予定です。中国最古の石窟寺院ですが、あそこは中国というより、中央アジアですよね。

――これから日本の建築界はどのように中国を認識していくべきだと思われますか。
 環境大学にいるからというわけでもないんですが、むしろ環境汚染について懸念しています。3年前、天安門広場に久しぶりに行ったんですが、広場から天安門が霞んでみえない。凄まじい大気汚染で、まともな写真が撮れない状態です。留学時代は空気が澄んで綺麗でしたよ。こんなところでオリンピックを開催して、マラソンを走らせたのかと思うと情けなくてね。国の「歴史文化名城」でありながら、開発優先で歴史的環境を破壊し続けてもいる。地方都市に行っても同じです。スモッグが町を覆い、煤煙の匂いが消えない。こういう公害大国の開発側に日本の建築界が巻き込まれているとしたら、とても残念です。
 反日運動も激化していますね。サッカー観戦時のマナーなんて最悪ですよ。92年のダイナスティ・カップで日本が中国に2対0で勝った試合の現場(北京工人体育場)にいたんですが、観衆は日本に拍手を送っていた。あの頃はなんだかんだ言っても「日中友好」が前提としてあった。江沢民以降の教育が問題なのでしょう。今年の8月にBSプレミアムで四夜連続放映された「家族と側近が語る周恩来」という番組を視て、とても感動しました。周恩来が今の中国を見たら嘆き悲しむのではないか・・・

――先生にとって中国とはどういう存在でしょうか。
 離婚しちゃった感じですね(笑)。もともと見合い結婚だったんだけれど、奈文研を離れるのと同時に別れてしまった。この夏休みに、ラオスとミャンンマーを訪問したんですが、中国よりずっとおもしろい。とくに軍事政権支配の長かったミャンマーは民主化し始めたばかりで、伝統的な文化が非常によく残っている。世界遺産がこれから一気に増えるでしょう。余生の貴重な時間を捧げるとすれば、ミャンマー、ラオス、ブータンなどの国々に貢献したいですね。
 東南アジアの大陸部は「インドシナ」と呼ばれているでしょう。文字どおり、土着的な民族文化をインド文明と中国文明が被覆している。ぼくはインド色の強い方がウキウキするんです。古代サンスクリット哲学の匂いがすると嬉しくなる。たとえばミャンマーには135の民族がいて、民族紛争が多発しても不思議ではないんですが、仏教が争いを抑え、多民族を束ねている。仏教が人々を温厚にしているのです。一方、中国とは何かと問われれば、ぼくは「世俗」と「権力」をキーワードの双璧としてあげたい。たとえば、ハノイに行くと広東と代わらない中国的な生活世界がある。げんなりするんです。ここまで来て中国に会いたくないよってね。古代インドの形而上学的世界とは遠すぎる。


 西川先生が「ぼくはインドを研究するから、君が中国に行きなさい」とお話しされていた意味が、この歳になってようやくわかってきたような気がしています。ただ、インドにはまだ行っていない。インドそのものには、たぶんそんなに反応しないだろうと予感しています。民族社会が息づいていて、その上に仏教やヒンドゥ教が被さっている社会と景観に魅せられているんだろうっていうのが自己分析です。(2011年11月6日 於鳥取環境大学4409演習室) 【完】






MJQにロリンズかパーカーか、ちょっと悩んだんですが、こちらにしました。

  1. 2012/03/01(木) 00:06:57|
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